第14話 学童保育所の、子どもたちの会話は、あんなにも、楽しかったのにな。そんな中で、ナエが出会ったのは?

 会話ができたころは、良かった。

 「学校のしゅくだい、出た?」

 「うちのクラスは、出た、出た」

 「あ。私のクラスも、出た」

 「これ食べて、はをみがいたら、いっしょにやる?」

 「うん」

 「そっちのクラスたんにん、どう?」

 「へんたい」

 「だいがくいんっていうところ、出てないんでしょ?」

 「らしい」

 「うっそ」

 「あいつ、あたまわるすぎ」

 「でも…。私たち、おおきくなったら、ああいうレベルの人を、かいごしなくちゃ、ならなくなるらしいよ?」

 「うわ。さいあく」

 そんな会話も、なくなった。

 「…ホント、大変。子どもたちが1カ所に集まらないようにしてって、役所は言っていたけれど…。密にさせないようにするのは、難しい。そもそも、子どもは、はしゃぎ回るものなのに。私たち大人は、その姿を、安全に見守るのが、仕事なはずなのに。学童保育所って、何なんだろう?」

 ナエの悩みは、続いた。

 学童保育所の職員には、自治体の教育課から派遣された人も多かった。要するに、あの、公務員連中だ。

 これも、問題。

 公務員でも、常勤はまだ良いかもしれないけれど、非常勤職員が、多くなった。待遇などの差で、有期雇用の身分だと、人が集まりにくくなった。

 役所からの通知の続きは、こう。

 「指導員のみならず、子どもたちに、マスクを着用させてください」

 そして、ナエ。

 「…それは、わかっているわよ。でも、学童保育所っていうのは、学校のように、クラスで分かれているわけじゃない。そういうところも、中にはあるかもしれないけれど、少なくも、うちの学童保育所は、違う。小学1年生から6年生までが、1つのフロアーに集まって、生活している。どうすれば、良いわけ?」

 コロナ禍は、続く…。

 そんな中…。

 ナエは、駅のとなり、町の中心部に買い物に出かけたときに、同じく、困窮するような女性と出会った。

 ほぼほぼ、同年代。

 具体的な年齢は、聞かなかった。

 「来年、酒が飲めます。法的には、ね」

 それだけを聞けていたので、充分だったから。

 





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る