第8話 「君だな?」「…あの」「こっちだ」「ちょっ…、やだ」SNSを、甘く考えないで!本当に、こういうことがあるんだからね!

 「…何を、やっているのかね?」

 「あ、先生」

 「タブレット端末の授業をなめては、いかんよ?」

 「わかってまーす」

 「まったく…」

 「それで、今、何をやっていたの?」

 「困っている人と、会話をしていただけです」

 「…会話?」

 「コロナで苦しめられた弱い立場の人がいたとして、どうやったら救えるのか、会話の勉強中なんです」

 「…そうか。がんばりなさい」

 「はい!」

 先生も、軽すぎ。

 そういうの、危険だから。

 実は…。

 その子は、タブレット端末で、チャット中だった。

 「俺、コロナで、困っているんです」

 「私に、できることって、ありませんか?」

 知らない人とでも、タブレットでなら、話しやすかった?

 「…じゃあ」

 「はい?」

 「また、連絡する」

 「良いですけど…」

 何となく、スマホのメアドを教えていた。

 コロナ禍の恐怖、緊急事態宣言がうろうろの、ちょっと忘れかけていたタイミングで、連絡がきた。

 「俺です」

 「ああ、あのときの…」

 「待ってて、くれたんだ」

 「だって…、つらそうだったから」

 「やさしいんだね」

 「そんなことは、ありません」

 「…ここに、きてくれないか?」

 「でも」

 「学校、休みなんだろ?」

 「うん…」

 「コロナで、きついんだ。助けて、ほしいんだよ」

 「…」

 「助けてくれるんじゃ、なかったのか?」

 「…わかった」

 待ち合わせ場所が、指定された。

 「…え?何?アパート?」

 早朝。

 何もない一室に、始発電車が出る音が、響いていた。

 「…こんなに早くから、何?」

 男性が、立っていた。

 30歳代後半?

 背広姿。

 「君だな?」

 「…あの」

 「こっちだ」

 いきなり、手をひっぱられた。

 「ちょっ…、やだ」

 男は、午前7時をすぎたころに、背広姿で出かけていった。

 「さあ、登校の時間だ。学校の先生が、学校に遅刻するわけにはいかん。もう、いくぜ。…ありがとな。ひひひ」

 背広を整えて、どこかに去っていった。

 「ほらよ」

 男は、300 00円入りの封筒を、投げてよこした。

 「…ちょっ」

 意外なものに、気付いた。

 「あれ、これ?」

 

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