第3話 SNSで、わかってほしかったから…。知らない男性に、制服を脱がされて。それ以上のことは、言えなかった。

 進路指導室の空気が、重すぎた。

 「…ちょっと、良いか?」

 「何ですか、先生?」

 「…良いか?」

 「はい」

 気楽についていってしまったのが、いけなかった?

 それとも…。

 「これは、何だ?」

 数人の先生たちから、パソコンの画面を見せられたそうだ。

 「あの、これ…」

 「カグナ?」

 「はい…」

 「これは、お前なのか?」

 「…」

 「違うのか?」

 「…」

 どうやらそれは、去年に撮られた画像、らしかった。

 画像に、日付が入っていた。

 「これ…」

 「この画像は、何だ?」

 「…」

 「説明、してみなさい」

 頭が、真っ白に、なってきた。

 「たぶん、あれだわ。思い出せた…」

 去年、SNSで、こんな気持ちを飛ばしていた。

 「つまらないなあ。誰か、遊ばない?コロナで、学校は、分散。時短。今日の授業、終わっちゃったから」

 飛ばすと…?

 「え、早!」

 秒で、10を超える返信がきたという。

 「君、今、どこ?」

 「どこって、駅前の…」

 40代の男が、近付いてきたという。

 「君、だよね?」

 「え?え?」

 気晴らし、時間つぶしだけのつもり、だった。甘かった…。

 「何か、飲む?」

 「え?」

 「良いカフェ、見つけたんだぜ」

 古びたアパートに、連れていかれた。

 制服を、強制的に脱がされた。

 それ以上のことは…。

 言えなかった。

 「先生、すみません」

 「謝れって言っているんじゃ、ない」

 「はい…」

 「カグナ、君だな?思い当たることが、あるだろう?」

 「…」

 SNSに投稿された画像は、消えない。

 半永久的に、残される。

 投稿した者が誰なのかわかれば、専門家や警察によって、削除要請はかけられる。

 けれど、投稿した者が誰なのかを知る手続きに、時間がかかりすぎる。

 パソコン上の住所を示すIPアドレスの持ち主が判明し、追跡したとする。

 「でも、遅い」

 そのころには、もう、動画を投稿した犯人は逃げてしまって、別のアドレスでいけないことをしていることが、多いから。

 「…君なんだろう?」

 「…」

 「言いなさい」

 「言え!」

 「…お前だよな?」

 「親を、呼ぶぞ?」

 「ほら、言え!」

 ああ…。

 この、映像っていうのは…。




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