アルビオン大火(15) Killzone:London

 年明けから数日。ロンドン市内にはごく短い間雪が降り注いだが、市電やバスをはじめとする交通機関に多少の遅延が見られた以外は大した影響もなく、街路のそこここに名残の雪を残すのみにとどまった。

 市内の数百箇所、いや数千箇所にも達する〈ロンドン・エリジウム〉関連施設──兵器格納コンテナ、レドーム、発電施設、ドローン発着場その他──の建築工事に関係する者たちはこの数日が正念場である。

「どうにか間に合いそうだな。最初聞いた時は何て無茶なスケジュールだと思ったが、モジュール構造を多用しているから本当にどうにかなっちまった。もっとも上手く行ったのはそれくらいだが」

「上手く行ってくれなきゃ困る。もう一週間も家に帰れてもなきゃ、カミさんとガキの顔も見てないんだぞ」

「いい加減テイクアウト以外の食い物を食いたいな……マクドナルドのバリューセットも、チャイナタウンの餃子セットも、どれももう食い飽きたよ」

 そんな建設関係者たちの愚痴はともかく、〈ロンドン・エリジウム〉の起動には何の支障もない……かに思われた。


 だが肝心のアテナテクニカ本社ビル内、〈ロンドン・エリジウム〉統括制御センターは大混乱に陥っていた。

「エイブラムCEOだけでなく、ギルバート次期CEOとも連絡が取れないだと!?」

「お二人とも自宅を出たことは確認しているのですが、それ以降は……」

 ロンドン全域で試験的に導入されている犯罪予測システム〈ロンドン・アイ〉により市内の犯罪は大幅に減少した──が、これにはいくつかの「抜け道」があることは関係者にとっては公然の秘密であった。どれほど地位の高い者であっても、いや地位の高い者であるからこそ、誰にもその行いを見られたくない瞬間はいくらでもある。

 それがまさかこんな時に、こんな形で裏目に出るとは誰も予想していなかったのだ。

「どうします? もう〈ロンドン・エリジウム〉の起動予定時間まで数時間を切っていますよ。ロンドン市長や首相からの祝電まで届いているのに……」

「もう一度、心当たりのありそうなところにコンタクトを取れ。CEO不在の式典なんて前代未聞だぞ!」

 その数時間後には彼ら彼女らの懸念はどうでもよいものとなってしまうのだが……無論、この時点では知りようもない。


【同時刻──南ロンドン、先の公営団地から焼け出された人々の避難キャンプ】

「母さん、ロブ爺さんに持っていく古着はまとめたよ」

「ありがとうよ。ハイディさんの分はもうすぐまとまるからね……あそこは小さい子が三人もいるから、その分も考えないとね。それにしてもいいのかい、レーナ。ジュニアスクールの授業にはついていけてるのかい?」

「……先生に事情を話したら、考慮はしてくれるってさ。それに」

「それに?」

「ううん……何でもない」今の母さんを一人にはしておけないでしょ、と喉まで迫り上がった言葉を、レーナは無理に飲み下す。

 実際、ここ数日のポーリーンは人が変わったようだった。NPO団体とやり取りし、焼け出されて打ちひしがれた人々の相談に乗ってやり、場合によっては市当局との交渉に応ずる。一体今までその活力をどこに隠していたのか、と目を見張るような行動力だ。元はと言えばあの家族のせいで、と陰口を叩いていたキャンプの人々が彼女を見る目まで、幾分か変わってきたのは否定できない。

 だが、レーナは知っている。母は元々こういう人だったことを。今までは「ライアン」に一心に注いでいた愛情を、周囲の人々に向けるようになっただけに過ぎないことを。

 ──あの日、最後に龍一やブリギッテと会ってから悄然とキャンプに帰ってきたレーナが見たのは、身を起こすこともできなかった母親が、何かに気づいたようにベッドから半身を起こして虚空を見つめている姿だった。

 夢を見たんだよ、と彼女は言った。ライアンが行ってしまう夢を──あたしにちっちゃな手を振って、両側からディロンと、父親に手を繋がれて、光の向こうに行ってしまう夢を。

 人によっては好ましい変化、と捉えるのかも知れない。

 だが、レーナにはわかっている。母親はライアンの死を悟ってしまったことを。

 ライアンも、ディロンも、そして二人の父親も、もうこの世にはいないと認めてしまったことを。

 レーナの手が止まっているのに気づき、ポーリーンは何か言おうとして眉をひそめる。

「どうしたんだい、レーナ?」

「何が?」

「だってお前、泣いてるじゃないか」

 そんなはずがない、言おうとして喉が詰まり、レーナはしゃくり上げた。薄汚れた床に涙が数滴、滴り落ちた。

「大丈夫だよ、レーナ」畳んでいた古着を置いてポーリーンは歩み寄り、レーナの頭を抱いた。「お前には母ちゃんが、母ちゃんにはお前がいるじゃないか。だから泣くのはおやめ。なあんにも心配することはないんだよ。なあんにもね」

「……うん」

 それでもレーナは泣き続けた。泣けばどうにかなる。そんな気がした。


【同時刻──ヴィクトリア駅構内、立入禁止区域近辺】

「……よし、今だぜ」

 タンの声に応じ、非常灯すら灯らない暗がりの中でいくつもの影が一斉に身を起こした。

 夜目の効くタンを先頭に、アレクセイ、ブリギッテ、オーウェン、そしてアイリーナとフィリパ──タンを除く全員が、戦闘装具一式に身を固めている。

 ほぼ全員が銃器その他で武装していた。フィリパはM16A4の分隊上級射手マークスマンライフルバージョンであるSAM-Rを装備し、リューポルド社製の狙撃用スコープを取り付けている。アイリーナも手に近接戦闘C Q B仕様のM16M4カービンライフルを構えてはいるが(ただし直前に、死にたくなかったら君の接近戦嗜好はこの際眠らせておけ、とフィリパからどすの効いた声でたっぷりと脅されてはいた)それでも全身にナイフ用ホルスターを装着し、腰には戦斧までぶら下げている。

 ブリギッテは銃器こそ装備していなかったが、手にはあの狩猟用の複合弓を携えており、予備の矢以外にも閃光弾をグレネードポーチに入れて持ち歩いている。オーウェンはリボルバーの他にもレミントン社製の散弾銃を装備していたが、これは警官だけにこれらの扱いに慣れているからだ。

 タンと並んで最も軽装なのがアレクセイだった。戦闘服に身を包んでこそいるものの、腰のホルスターを除いては得物らしきものを一切、身に帯びていない。

「さすがだねー、坊や。君の道案内がなかったらとっくに迷子になってたよー」

「監視システムがあっても、叩き壊すまでの話だけどな」歯を見せるアイリーナに応えながらも、タンは満更でもなさそうだ。「〈日没〉以降、ロンドンの地下は照明があるエリアよりないエリアの方がよっぽど多いんだぜ。それを行き来してりゃ、監視の目をくぐり抜けるのは訳ないってこった」

「ベルガーたちを見つけるまで、無用な戦闘は極力避けたいからな……とは言え、油断は禁物だぞ。ここからが本番だ」

「オーウェン刑事の言う通りだ。いい気になるのはまだ早い」

 オーウェンだけでなくフィリパにまでたしなめられ、「へいへい」とアイリーナが下唇を突き出す。

「あー、揚げ足を取るようだが、今の私が刑事どころか私人だからな。オーウェン、でいい」

「了解だ」

「スイートガールちゃんは大丈夫ー?」

「私は別に……」言いかけたブリギッテの声がすぐ沈む。「龍一は……大丈夫かしら」

「彼自身が大丈夫だと言ったんだ。信じるしかない」

「スイートガールちゃんも知っての通り、カレ只者じゃないからねー」

「只者ではないのは知っているけど……無敵かどうかはわからないわ」

 オーウェンだけでなく、フィリパまで──いや、その場の全員が難しい顔になる。

「自分一人で〈将軍〉配下のクーデター部隊と、〈ロンドン・エリジウム〉の無人兵器群を引きつける、か……聞いた時は僕らも『どうかしている』と思ったよ」

「確かにどうかしている。が、他に方法がないのも確かだ」アレクセイの言葉にフィリパが頷く。「それに、私たちだってそうお気楽でもないぞ。頭数の多いマギー・ギャングはそれだけで脅威だ。それに彼らには、ベルガーがいる」

「逆に言えば、ベルガーの近くには確実に〈階梯〉がある……急ごう。私たちのやるべきことをやろう」

 一同はお互いの顔を見合わせ、頷き合う。


【同時刻──ロンドン市内某所、『もう一つの』〈ロンドン・エリジウム〉統括制御センター】

 巨体を揺らしながらエイブラムがセンターに足を踏み入れると、席に座っていたオペレーターたちが一様に黙礼した。作業を止める必要はない、と予め言い含めてある。

「ご苦労」エイブラムは満足げに頷く。今日は「決戦」の日だけに、彼もいつものスーツではなく戦闘服である。もっともこれもまたスーツ同様、キングサイズの特注品になってしまったが──しかもイギリス軍の制服をそのまま使うのは彼自身気が引けたので、デザイナーにあれこれ注文した結果、どこかナチスドイツ親衛隊を彷彿とさせる出立ちになってしまったのが痛し痒しだ。おまけにこの自分の肥満体では、どう見てもヘルマン・ゲーリングではないか。

 まあいい、気を取り直して彼は声を張り上げる。「〈ロンドン・エリジウム〉の稼働状況はどうか?」

「問題ありません。閣下のご命令一つで、〈ロンドン・エリジウム〉の全無人兵器が起動いたします」

 結構、と彼は頷く。「あのはまだ発見できないのか」

「は……」歯切れのよかったオペレーターの返答が滞る。「市内のあらゆる監視システムを総動員しておりますが、一向に……」

「まさか空気になってかき消えたわけでもあるまいに」

 言いながらも、彼はさほど腹を立てていなかった。見つからないなら燻り出すまでだ。

 椅子に腰を下ろした(これもまた〈将軍〉の巨躯に合わせて注文された特別サイズだ)彼の傍らに人影が立った。「閣下、ご報告いたします」

「君は……ああ、憲兵隊の」

「ネイサン・ボイド憲兵大尉であります、閣下」彼は胡乱な目を向けただけだったが、まだ若い大尉は頭を撫でられた仔犬のように目を輝かせ敬礼した。「アテナテクニカ社内に紛れ込んでいたMI5のは全員始末……失礼、処理いたしました。閣下の偉業を妨げる不貞の輩は、もはや存在しません」

「そうか」

 彼の答えは素っ気なかった。確かに、大事の前には必要な作業ではあるのだろう──だが、個人的に関心を持てる作業ではない。

 ロンドンを灰にすることに比べたら。あるいは、〈竜〉に比べたら。

 あの〈犯罪者たちの王〉の遣いと名乗る女から渡された〈竜〉に関する報告書を読んだ時は、自分は誤ってSF映画の企画書を読んでしまったのか、と疑ったほどだった。

 だが、すぐに魅せられた。何の装備も外部手段もなしの大気圏突入どころか、大気圏突破、恒星間航行が可能、おまけに無限に等しい自己再生・自己進化・自己改良能力を持つ生物とは。! 退

 そうだ、自分は倦んでいたのだ、と彼は独りごちる。

 いつからだろう。自分の人生は既に他者によって舗装され尽くしていて、多少の逸脱なり反抗なりをしたところで人生のゴールが人々に惜しまれながら立派に死ぬ、以外にないと悟ったハイスクール時代だろうか。

 あるいは周囲の期待通り軍の士官として各紛争地域にPKO部隊の一員として赴き、どの国のどの人間がどのような思想を持とうとやることは変わらない、と悟った時だろうか。

 あるいは海外派兵の最中に妻と子が事故死したとの報告を受けても、自分の心には波風一つ立たず、むしろ波風一つ立たない自分に戸惑ったあの時だろうか。

 人生の最後が既に決まり切っているのに、多少の逸脱や反抗に何の意味があるだろう?

 それに比べれば無限の火力と無限の機動力、そして無限の再生能力と自己進化能力を持つ〈竜〉との戦いの方が、よほど血を沸き立たせるイベントだ。──

「……あの、閣下? いかがなさいましたか?」

 急にエイブラムが黙ったので不安になったのだろう、おずおずと尋ねるボイド憲兵大尉の顔をエイブラムはまじまじと見つめる。当の憲兵大尉が決まり悪くなるほど。

 ここで自分がおもむろにこの若造を撃ち殺し、実質的なロンドンの支配者と謳われた〈将軍〉がただの反社会性パーソナリティ障害者ソシオパスだった、と発覚したら、どれほど愉快だろう?

 しかし彼はその気まぐれを実行に移す機会を、おそらくは永遠に失い、結果として憲兵大尉は命拾いすることになった。オペレーターの一人がおずおずと発言したのだ。「〈将軍〉、よろしいでしょうか?」

「何だ?」

「は、その、それが……何と報告したらいいのか……」

 煮え切らないオペレーターにエイブラムは眉をひそめる。「簡潔かつ明確に報告したまえ。ここは軍隊ではないが、あまり曖昧な説明をされても困る」

「相良龍一が現れました。場所は……アテナテクニカ本社ビル近辺、先日のレセプションホールです」

「……何だと?」

 確かに時間さえかければ、龍一とその一味を燻り出すなど容易だとは思っていた。だが本人がたった一人で、しかも馬鹿正直に公衆の面前へのこのこ現れるとは予想外だった。。それとも相良龍一とは、そんな見え透いた囮に引っかかるような愚か者だったのか?


【同時刻──アテナテクニカ社、レセプションホールを見下ろすビル屋上】

「……まあ、訳がわからなくなるだろうな。なまじ頭が回るだけに」

 龍一は苦笑する。高さ数百メートル、ビル風が轟々と吹く数十階建てのビルの屋上だ。用がなければ、いや用がなくとも訪れたくなるような場所ではない。

 眼下には先日の大騒ぎの舞台となったレセプションホールが見える。モダンなデザインの建築物だが、出入り口を現場保存のためのテープで封鎖されているのがやや興醒めな眺めだ。

 ちなみに、場所をあのホールに決めたのに大した理由はない。適度に目立ち、しかも人があまりいない場所が好ましかったからだ。これから龍一がやろうとしていることを考えれば余計に。

「俺だって、あんたが本社ビルにでえんと構えているなんて思ってないよ。そこまで馬鹿じゃない……自分でもそこがちょっと残念なくらいだ」

 おそらく〈将軍〉の手元には、〈犯罪者たちの王〉から送られてきた、〈竜〉に関する詳細なレポートがあるのだろう。当然〈竜〉の何たるかも彼は知っているに違いない。でなければクーデター部隊や〈階梯〉や〈ロンドン・エリジウム〉、さらに〈ペルセウス〉まで揃え、最終的には龍一ただ一人をロンドンごと月まで吹き飛ばそうなどと馬鹿げたスケールの計画を練るはずがない。

「もちろん、あんただって俺が考えるよりもう少しは賢いはずだ。だからとっくにわかってる──本社ビルの地下にシェルターを築いて籠ったところで、〈竜〉にシェルターごとほじくり返されれば全部終わりだってな」

 そう、シェルターごとほじくり返されるのを防ぐためには、シェルター自体の位置を隠匿するのが一番だ。となると、本社ビルは真っ先に候補から脱落する。

「クーデター部隊と〈ロンドン・エリジウム〉の総攻撃を引きつけながら、〈将軍〉の位置を探る……全部いっぺんにやらないといけないのが辛いところだね」

 辛いどころか、肝が冷える。何しろ一国の軍隊と無人兵器がまとめて襲いかかってくるのだ。だがまあ、仕方ないだろう。こればかりはアレクセイやブリギッテに代わってもらうわけにはいかない。

(……嘆かわしい)

 不意に頭の中で響いた声に龍一はぎょっとして周囲を見回し、そして──数メートルと離れていない位置に浮かぶ、巨大な目玉に気づいて腰を抜かすところだった。

 何の比喩表現でもなく、それは目玉だった。真円に近い、瞼も睫毛も視神経もない、龍一とほぼ変わらない大きさの目玉が音もなく浮いてこちらを見ていた。何となく、龍一に呆れているようにすら見える。目玉なのだから、表情などわかるはずもないのだが。

 あわてて周囲を見回したが、ビルの屋上に浮かぶ巨大な目玉に誰かが気づいた様子はない。

(案ずるな。我は汝にしか見えん)

 そしてもう一つ気づいたことがある。その目玉の瞳孔は爬虫類のように、縦に裂けていたのだ。夜のように黒い瞳孔の周辺を取り巻くのは、眩いほどの金色。

「もしかしてお前……〈竜〉か?」

(ようやく気づいたか)頭の中に響く声の調子が変わった。もう少しでやれやれ、と言い出しかねない調子だ。(だからといって褒めてやるほどでもない。我がどれだけ歯痒く思っていたか、少しは想像してほしいものだ)

 目玉なのに歯痒い、と思わず口走りそうになってやめた。まるでそれを読んだように、実際読んだのかも知れない、目玉にじろりと睨まれた。

(下らないことを考えおって。他に案ずることはいくらでもあるだろうに)

 自分と大きさの変わらないでっかい目玉に説教されるなんて、一体どこまでが正気なのだろう、と龍一は疑わずにはいられなかった。巨大な目玉など薄気味悪くて仕方ないはずだが、見かけがシュールすぎて恐怖や嫌悪は浮かばなかった。どことなくユーモラスでさえある。

「ええと……俺が嘆かわしいって、どのへんが?」ともかく、問いながら龍一はフェンスをよじ登り始めた。何らかの警報装置があればもう少し工夫する必要が生ずるところだが、幸いそんな凝った仕組みのない、ただの落下防止用フェンスのようだった。龍一の身体と体力なら乗り越えるのは容易だ。

(そのような問いをするところだ、と言いたいが)口があったら深い溜め息を吐いていたに違いない、と思わせる調子。(具体的には汝の心構えだな。自分が生命の危機に陥らねば姿を変えられぬ、と思い込んでいるその偏屈さだ)

 なるほど確かに龍一が〈竜〉に変じたのは、今にも死にそうになった時のみだ。だからその経験則から導き出した結論に基づきここへ来たのだが。

「違うのか?」

(汝が〈竜〉に変わるのではない。。それを踏まえれば、変化自体は容易い)

 さらりと重要なことを言われた気がする。が、それを追求している時間がない。ただこの件にケリがついたら、そろそろ自分の母親について考えるべき頃合いかもな、とはちらりと思った。ずっと考えないようにしていた、あの母親についてを。

「俺がこれからやること自体は間違っていないってこったな。それがわかればいい」

 改めてフェンス越しに下界を見下ろし、後悔する。この高さから飛び降りたら考えるまでもない、地面に衝突した途端に文字通りの四分五裂、七花八裂になってしまうだろう。遺体など原型を留めないに違いない。

 下にいる誰かを巻き込んだら取り返しがつかない、だからこそここを選んだのだが……それでもしばらく龍一は深呼吸を繰り返し、爆発しそうな鼓動を少しでも鎮めようとした。

 目玉はやや興味深そうに問う。(止めるつもりもないが、本当にやるのか)

「俺も絶対の自信があるわけじゃない。他にいい方法があったら、今のうちに言ってくれ」

(その必要はないな)子供の幼稚な質問に応えるような調子だった。(汝ができると思ったことは、全てできる)

 考える前に、屋上の縁から龍一は飛んだ。


【数秒後──アテナテクニカ社レセプションホール、正面玄関付近】

「くそっ、こんな寒い日に立番なんてついてないな……それこそアテナテクニカのドローンにやらせりゃいいものをよ」

「ドローンをこき使うより俺たちをこき使った方が安上がりなんだろうよ」

 まだほうぼうに現場保存用のテープが張り巡らされたホールの玄関で、震えながら愚痴っていた見張りの警官たちは、突如として背後から轟いた大音響に肝を潰した。

「……人だ! 若い男が、そこのビルの屋上から飛び降りたぞ!」

「勘弁してくれよ……あの高さから落ちたら、人の身体なんて粉微塵だぜ……」

 気は進まなかったが確かめないわけにもいかない、渋々とホールに足を踏み入れた警官たちだったが──少なくとも、そのような光景は予想していなかった。

「おい……さっき見回った時は、あんな彫像なかったよな? それもホールのど真ん中によ……」

「確かに、こんな目立つもんがあったら見過ごすはずもないんだが……」

 それは人とも、獣とも、爬虫類ともつかない異形の彫像だった。全長は3メートル近くか。黒く光沢のある金属で構成されており、人間で言えば片膝を立てたようなポーズでうずくまっている。

「しかし、あの飛び降りた若い男はどうしたんだ? 目に見えないほど細かく吹き飛んじまったのか?」

 見ろよ、と警官の一人がホールの天井を指差す。「あそこの天窓が粉々になっているから、あれを突き抜けて落ちたのは間違いないみたいだ」

 その場の全員が、妙に白っぽい表情でお互いの顔を見合わせる。

「ビルから飛び降りた若い男が、あの彫像になっちまった……ってことか?」

「おいおい、しょっちゅう追試を食らってるうちの鼻たれの方が今のお前よりよっぽど賢いぞ。人間は高いところから飛び降りたって、彫像になんかならないんだよ」

「そんなことはわかってる。じゃ、あれはどう説明するんだ?」

 荒廃したホールの中央──殺人サイボーグが暴れ回って死傷者が出た上に、龍一がバイクで乱暴狼藉の限りを働いたのだから無理もない──に、静かに異形の彫像がたたずんでいる。しかしその足元は、まるで隕石でも落下したかのようにクレーター状に大きく抉れていた。


【同時刻──ヴィクトリア駅構内、立入禁止区域のさらに地下深く】

 矩形に切り取られた分厚い壁が倒れて重々しい音を立てると、ベルガーとその部下たちは長い間誰も足を立ち入ることのなかったその空間に足を踏み入れた。

「着いたぞ。ロンドンの恥部にな」

 そこは駅のホームだった──比喩でなく、本当に地上の駅のプラットホームをえぐり取って来て、そのまま据えつけたような光景だった。踏切や遮断機、改札口や自動販売機まである。ただ、人の姿だけがない。

 荒くれ揃いの部下たちもさすがに度肝を抜かれたのか、物珍しげに周囲を見回している。

「イギリス人は妙なところで凝り性だな。自販機なぞ持ち込んでも、メンテナンスの手間が増えるだけだろうに」

「ベルガーさん、ここが、本当に……?」

「駅があるんだ、電車だって当然来るだろう。……そら、来たぞ」

 汽笛が鳴り、一瞬遅れて重々しい轟音を響かせながら機械仕掛けの長虫のごとき〈レテ〉がトンネルの奥から姿を見せた。その威容に、一同は声もない。

 皆が呆気に取られているのをよそに、〈レテ〉は徐々に速度を緩め、見事に定められた停止位置へぴたりと停まった。

「情報通りだ。〈レテ〉は一日一回、このホームへ着実に停車する」絶句している部下たちとは対照的に、ベルガーは満足気に頷いていた。「急げ。停車時間は十分足らずだぞ」

 その指示に、弾かれたように部下たちは大型の台車に据えつけたシリンダー状の〈階梯〉を押し始めた。いくら小型化されていると言っても、大の大人が数人がかりでなければ動かせない大きさと重量はある。

「しかし、ベルガーさん。こいつの遠隔起爆装置には手をつけなくて本当に大丈夫なんですか? いつあのが気まぐれを起こして、起爆スイッチを入れやしないかと思うと気が気じゃありませんぜ」

「起爆装置を取り外せないことはないが、手間がかかりすぎる。外そうと試みただけでじゃあな。リスクに見合う結果が得られるかどうかは微妙なところだ」ベルガーは薄く笑った。「それも含め、俺に考えがある。まあ、今のところは〈将軍〉の思惑に乗ってやるとしよう。今はな」


【同時刻──『もう一つの』〈ロンドン・エリジウム〉統括制御センター】

「……現場からの映像、来ました」

 上空を飛行中の〈ハーピー〉から転送されたレセプションホールの映像が、正面のメインスクリーンに映し出される。次の瞬間、〈将軍〉を除く室内の全員から声にならない呻きが漏れた。

 大穴の空いたホール中央にうずくまる、異形の彫像らしきもの──いや、違う、エイブラムは直感した。全く動いていないからそう見えるだけだ。

「〈竜〉だ……」

「閣下?」

 特別仕様のはずの椅子が悲鳴を上げるほどの勢いで、エイブラムは立ち上がった。「〈ロンドン・エリジウム〉を稼働させろ。ただちに、今すぐにだ!」

 ベルガーからのGOサインはまだ出ていないが──構うものか。いや、かえって好都合だ。どうせ、いずれは全てが灰になるのだ。


 レセプションホールでは突如として出現した彫像の現場検証が始まっており、荒れ果てたホールは見る間に警官や鑑識課員で溢れ返った。

 だが調べれば調べるほど訳がわからなくなる、が現時点での全員の見解ではあった。

「こんなもの、どう報告書に書けばいいんだか……」忙しく動き回る鑑識課員たちの傍らで、警官たちも首を傾げている。「事件性があるかどうかで考えたら、ないだろう」

「いつの間にか立入禁止のはずのホールに彫像が置かれていた、ってだけだからなあ。傍迷惑ではあるが、それだけだ」

「爆発物が仕込まれていたら話は別だが、なら何で落下してくる途中で爆発しなかったんだ?」

「だいたいこんなでかいもの、どうやって持ち込んだんだよ。クレーンで吊り下げて落としでもしたのか?」

 ベテランの鑑識課員が、彫像に向けて熱心にカメラのシャッターを切っている女性写真係を見て咎めた。「おい新入り! 一箇所だけ写真に撮ったって俺たちの仕事にはならないぞ。それにあわてなくったって、彫像は逃げやしない!」

 まだ若い写真係はすくみ上がった。「す、すみません! ただこの彫像の……様式というかモチーフが、とても興味深かったので……」

 鑑識課員はいくらか口調を和らげた。「何がそんなに気になったんだ?」

 写真係は恥ずかしそうにカメラを弄っている。「既存のどんな作品にも似ていないんですよ。これだけの作品を形にできる芸術家がいたら、とても無名ではないはずなんですが。でもネットを検索しても、どこにも似たような作品が見当たらないんです」

 言われて初めて気づいたように鑑識課員はしげしげと彫像を見上げる。「俺にゃ芸術なんてさっぱりだが、言われてみればよくできてやがるな。妙に生々しいというか……なあお前さん、こいつは何に見える?」

「強いて言えば……ドラゴン、ですかね?」

「ドラゴン? あのトカゲみたいな、空飛んで火を噴く空想上のあれか?」

 写真係は人が変わったようにぱっと顔を輝かせた。「ええ、私、昔からファンタジーが好きで、休暇中もLARPとかに参加しているんですよ」

「LARP?」

「ライブアクションRPGのことです。実際に鎧や剣や杖やローブを作ってくれる人もいて、すごく出来がいいんです。最初はちょっと恥ずかしいんですけど、身体を動かしているうちにどうでもよくなりますよ。あ、よかったら先輩も参加しますか?」

「……いや、いい。やっぱり若い奴の趣味は俺にはわからん……」

 一人の警官が半ば息を切らせてホールに走り込んできた。「おい、アテナテクニカ社から警告が来ているぞ! 全ての検証を中止して退去しろだとよ!」

「ああ? 『目障りだから消え失せろ』ってか? お前らこそ、何の権利があって公式な捜査の邪魔をするんだって言い返してやれ!」

「来ているのは社の人間じゃない、アテナテクニカ謹製の戦闘機械だ!」

「何だと!?」


【同時刻──『もう一つの』〈ロンドン・エリジウム〉統括制御センター】

 オペレーターがおずおずと報告する。「展開完了。非殺傷ノンリーサル火器による無力化は可能ですが……」

 いや、とエイブラムは顎の肉を震わせる。「殺傷リーサル火器、モードは掃討戦エクスターミネート。全火器管制システムロック解除」

 オペレーターたちは全員、一瞬だけ身を震わせたが、すぐコンソールに向き直った。少なくとも異を唱える者はいない。

 結構、と〈将軍〉は満足を覚える。どうせいずれは、全て灰になるのだ。


【同時刻──レセプションホール、彫像のある中央ホール】

「何の権限があって一民間企業が捜査の邪魔をする! 何なら〈将軍〉自らが重たく構えてないでこちらに出向いたらどうだ! 涙の一筋も流してくれないドローン任せにせずによ!」

「先輩、お、落ち着いてください、相手はドローンですよ……」

 血の道を上げているのは例の鑑識課員一人だったが、周囲の警官たちの表情も険悪そのものだった。自分たちの仕事に対して目障りだから消え失せろ、と言われて笑顔でいられる警官はいない。アテナテクニカがロンドン市警にどれほどの装備を提供していようが、それとこれとは話が別だ。

 だが、まさか自分たちに銃口を向けやしないだろう、との驕りがあったのも否めない。

『非戦闘員は10セカンド以内に退去を行なってください。警告に従わない場合、無条件での発砲を開始します』蜘蛛足の生えた戦車、と形容するのがふさわしい〈アラクネ〉が柔らかな合成音声で警告を発する。年明けの弱々しい陽光を、突き出した鼻面のような30ミリ機関砲が跳ね返してぎらりと輝く。

 上空には〈ハーピー〉に先導され、早くも無人戦闘ヘリ〈ステュムパロス〉が猛禽に似たシルエットを見せつけるようにして旋回を始めている。

『10……9……』

「構うな! どうせはったりだ!」

 誰かが怒鳴るが、本人も含めて全員が青ざめている。無理もない、本物の軍用兵器の銃口砲口に身をさらして平気な者などそうはいないだろう。ロンドンの街中ともなればなおさらだ。

『8……7……』

「おい、やべえんじゃないのか!?」

 誰かの上ずった声に、半信半疑だった者まで浮き足立ち始めた。これが人間の兵士であればまだ踏みとどまれたかも知れない。だが相手は、「涙の一筋も流してくれない」無人兵器なのだ。

『6……5……』

「逃げろ!」

 警官も、鑑識課員たちも、堰を切ったようにどっと逃げ始めた。あの女性写真係も必死で逃げているが、肩から下げたカメラケースが重すぎるのか思うように走れていない。

「新入り、うっちゃっとけ! 命あっての物種だろうが!」

「だ、だってとても捨てられませんよ……私が鑑識入りした時からの相棒なのに……」


射撃開始ファイア


 十体近い〈アラクネ〉の機関砲が火を吹き、同期により〈ステュムパロス〉の対戦車ミサイルがほぼ同時に射出された。主力戦車を除くほぼ全ての非装甲車両を破壊できるテレスコープ機関砲弾、主力戦車の装甲を正面から貫通する対戦車ミサイル。民間の建築物を破壊するには過剰すぎる火力が、一斉にホールへ殺到する。

 その場の全員が、死を覚悟した。


「……あいたあ!」

 走ろうとして足がもつれ、床の段差に爪先を引っかけて写真係は思い切り前のめりに転倒してしまった。傾く視界の中で先を走っていた警官や鑑識課員たちがこちらを振り返り、表情を凍りつかせるのがちらりと見えた。

 あー、これは次のプレイには参加できそうにないかな……せっかくかっこいいローブとブレスレットを作ってもらったのに……。

 彼女は堅く目を閉じたが、いつまで経っても最後の瞬間は訪れない。第一、生身の人間が機関砲弾とミサイルをまともに浴びたら派手に打ちつけた膝がずきずき痛むこともないはずだ。

「あれ……?」

 恐る恐る目を開けた彼女は、こちらに向けて放たれた銃砲弾と同量の小さな金属片が、全ての銃砲弾を完全に受け止めて宙で静止している様に、自分の目どころか正気を疑いそうになった。何しろ、ミサイルまで空中で金属片に包まれたまま静止しているのだ。

スケイル〉の発現。あらゆる投射物の運動エネルギーを完璧に吸収する生きた爆発反応装甲リアクティブアーマー

 口を開けて見入っていた写真係は、背後で何かが動く気配に振り向き──そして今度こそ気絶しそうになった。

 。機械臭さのまるでない、本物の生物のように滑らかな動きで一歩一歩、着実に歩き始めている。何より彼女の目を見張らせたのは、そのだった。あれだけの巨躯で積み重なる瓦礫やガラス片の上を歩いているのに、影のようにとも音一つしない。

 畏怖とも戦慄ともつかないものが彼女の全身を貫いていた──

 気を失いそうになりながらも、彼女は自分の職務を忘れてはいなかった。震える手でカメラを構え、自分の目の前を今、通り過ぎようとしているそれに向けて夢中でシャッターを切った。

 周囲の警官たちや鑑識課員たちも目を剥いている──中には拳銃を向けている者もいたが、発砲されることはなかった。機関砲弾やミサイルを無効化する相手に、ちっぽけな弾丸しか射出できない拳銃が何の役に立つだろう?

 彫像は右手を上げ、一振りした。それだけで〈鱗〉に包まれた全ての銃砲弾とミサイルが消失した。音も光もなしに、文字通り消え失せたのだ。奇術師がハンカチの一振りで兎を消し去るように。

 全員の視線を引きずりながら、彫像は玄関から表に出た。

 半円状に自らを取り囲む〈アラクネ〉の砲列と、上空を旋回する〈ステュムパロス〉のミサイル照準を前に、〈竜〉は動じた様子も見せず、ただ静かに右手を上げた。

 

 何千発、何万発分の、文字通りの金属の雨である。小型軽量の〈ハーピー〉などひとたまりもなかった。地上に落下する前に、文字通りの粉微塵である。

 それよりは遥かに頑丈であるはずの〈ステュムパロス〉でさえただでは済まなかった。機体は地上からの銃砲火に耐えるためそれなりの装甲を施してはあるものの、回転翼やセンサーはそうはいかない。一瞬でローターは穴だらけとなってねじ切れ、テイルローターは砕かれ、エンジンは撃ち抜かれて停止する。まるで殺虫剤を浴びせられた羽虫たちのように、一機につき何百万ポンドもの戦闘ヘリが次々と地上へ落下する。落ちるついでに停めてあった警察車輌を押し潰し、レセプションホール前の広場は見る間に無惨なスクラップの山と化した。

〈アラクネ〉はもう少し持ち堪えたが、結果はほぼ同じだった。自分たちが射出した銃砲弾を真上から浴びせられ、艶やかな装甲はへこみアンテナはへし折れ、内部機構まで撃ち抜かれて火花を撒き散らす。そこへミサイルまでが殺到した。いちおうは装甲車輌ではあっても、本物の主力戦車並みの装甲があるわけでもない。しかも構造上は最も脆弱な真上からの攻撃である。内側から火を噴くどころか勢い余って砲塔が丸ごと吹き飛び、路面を踏み締める脚部が焼け死ぬ虫のような痙攣を見せた。〈アラクネ〉群が壊滅するまで、わずか数秒だった。

 誰もがそれを見た──無人兵器のカメラアイを通して、街頭の監視カメラからの映像越しに、遠巻きに見守る報道陣のカメラの映像から、あるいは個人のスマートフォンのカメラを通して。〈ロンドン・エリジウム〉の無人兵器群を一掃した異形の怪物の姿を。

 ロンドン市民の前に〈竜〉が顕現した瞬間だった。


【同時刻──『もう一つの』〈ロンドン・エリジウム〉統括制御センター】

 モニターの中で〈竜〉の外観に変化が生じた。両腕が倍ほどに膨れ上がり、長さも脚よりも長く、地に引きずるほどに伸びていく。肥大した両腕に何かの目玉かレンズのような半透明の器官が無数に生じた。その内部では青白い燐光が揺らめき、まるで新たな目玉が生じたかのようだった。同じような変化は胸や腹、背にも及んだ。全身の皮膚が目玉に覆い尽くされたような、異形をさらに異様に見せる姿だ。

 映像を見るオペレーターたちの間から呻き声が漏れる。

「何だあれは……〈王国〉から渡された情報にあんな姿はないぞ」

 エイブラムの声は驚愕にかすれていた。「形態を変化させたのか。こちらの兵器戦術に合わせて」

 だが、驚いてはいたが、彼は怯んではいなかった。彼はまだ〈将軍〉だった。少なくとも、今はまだ。

「……面白い」


「ロンドン中心部に〈竜〉反応! 竜種タイプ──〈バジリスク〉!」

「なるほどねえ。ネットと無人兵器に覆われ尽くした近代都市での戦闘には最適の形態だ」報告を聞きながら、赤毛の中年女──白木透子は薄く笑う。「可哀想にねえ、気づいちゃったんだねえ……自分の力の可能性にさ、息子さん」


 ──後に。

 英国史上最大の内乱……いや、内乱と呼ぶのすら生ぬるい混沌。

アルビオン大火ザ・グレートファイア・オブ・アルビオン〉と呼ばれる大規模災厄の、これが始まりである。

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