地獄のように黒い氷(3)泥濘と死闘

「ダランという国のことは、ニュースで見た以上のことは知らないのだけど」アスミタに肩を貸しながら夏姫は歩く。どちらかというとアスミタの体重より、小柄でまだ足元のおぼつかない彼女の歩幅に合わせる方が苦労した。「そんなにひどいの?」

「ひどいなんてもんじゃないね。できるだけお上品に言ってもだよ」アスミタは一人納得したように頷く。麻酔が切れてきたのか、口調や足取りもしっかりしてきたようだ。「欧米諸国と歩調を合わせようとする国王派と中国に歩み寄ろうとする反国王派、どっちも『自分の方があいつらより遥かに国を真剣に憂えている』って信じてるから譲らないし、譲るつもりもないし、相手をぶっ殺せば譲る必要もないって思ってるからどうしたって血は流れるね。まともな人間は真っ先に殺されるか、真っ先に逃げ出しちゃってるし」

 日本の戦国時代みたいな話ね、と夏姫は溜め息を吐く。もっとも、今よりましな時代を知っているわけでもないが。

「それじゃ、捕まったらただじゃ済まない……どころじゃないわね」

「よくて人質、悪くすればその場で処刑されるんじゃない? 身も蓋もない言い方するとね、あの国には若く美しい処女を国王に祭り上げて上手くいくと思っている人間もいなければ、そんな余裕もないんだよ。私が死ねば幾つもの頭痛の種がまとめて消えてなくなる、そう思っている人も、まあいるだろうね」

 さらりとした口調の向こうに、彼女が押し殺していた鬱屈が見て取れる。

「だからっていつまでもここに留まるわけにもいかないのが頭の痛いところね。この施設だっていつまでバレないでいることやら」

 何しろ白昼堂々、女子校に銃を構えて乱入してくる連中である。アスミタがいつまでも隠れていたら次に取る行動はわかっている。「彼女が投降してくるまで、他の女生徒を一人一人殺していく」だろう。

 施設内には研究員どころか警備員の姿さえなく、二人は何の妨害も受けず非常用ハッチまでたどり着いた。だが、ハッチは電子ロックで閉ざされている。

 とんとんと数度足踏みしていたアスミタが、夏姫に預けていた肩を外す。「ありがと、もう大丈夫だよ。でも……どうやって出るの? 私と夏姫、二人合わせても人力じゃどうにもならなそうだし」

ね。見てて」

 夏姫が電子パッドに手をかざすと、微かな共鳴音とともに黒い結晶体が見る見るうちに内部から生じた。表示部分が意味不明の文字列を吐き出し、続いて音もなく封鎖されていたドアが開いた。

 さすがのアスミタも目を丸くしている。「夏姫、今の何? 手品にしちゃ凄すぎるんだけど?」

「……もっともな疑問だけど、私に聞かれても困るのよね。できるようになったの、ほんの数分前だもの」

 そこで待ってて、と言い残して夏姫は地上へ昇る梯子を上がった。ハッチを少しだけ開け、様子を伺う。

 先日の豪雨ほどではない──が、日本の雨に比べても明らかに多い──雨のヴェールの向こうに、AKをこれ見よがしにぶら下げた覆面男二人が歩いているのが見えた。銃口はあらぬ方向を向いているし、歩き方もひどい。見張りというより、格好の獲物を求めてぶらついていると表現した方がふさわしい。

 何か話しているらしいが、雨音が大きすぎてここからでは聞こえない。

(集中……)

 夏姫は掌をハッチの壁面に当てた。生じた結晶体が壁面を覆い、ハッチの隙間から濡れた地表を突っ走る。先端が男たちの足元まで到達した途端、音声が信じられないほどクリアになった。

「全くついてねえな……こんな雨の中をお前とパトロールかよ」

 彼らの会話はかなりブロークンではあるが英語だったので、夏姫はこっそり安堵した。これがダランの公用語、ダラン語だったらかなり面倒になったはずだ。まさかアスミタにいちいち訳してもらうわけにもいかないし。

「校舎の中の奴らはうまいことやりやがったな。帰りに二、三人くらい見繕って持ち帰りてえもんだぜ」

「お前は馬鹿なのかそれとも阿呆なのか? 軍や政治家の娘ばかりなんだぞ。後で死ぬほど面倒になるに決まってるじゃねえか」

「こんな雨ばっかり降って蒸し暑い国へ、端金で送られたんだぞ? それくらいの役得がなきゃやりきれねえよ」

 さもしい奴らね、夏姫は呆れた。彼らの口ぶりからすると本国でもあまり楽しい人生を送っているようには聞こえなかった。校舎の中ではなくここの見回りを押し付けられたのも、素行不良による一種の懲罰なのかも知れない。

 もっとも、夏姫にとっては好都合ではあった。あの白ずくめの青年──モーリッツの言葉を思い出す。

 面白いわね、と思った。さっそく試させてもらいましょう。

 地表に薄く広く展開した結晶体の一部が突出、前方を歩く覆面男のブーツを突き破る。

「ぐ!」

「どうした?」

「いや、どうも釘か何かを踏んじまったらしい。ったく、何でこんなところに……」悪態を吐いてしゃがみ込んだ覆面男は、いつの間にか自分の二の腕近くまでをびっしりと覆い尽くしている結晶体を見て呻き声を上げた。「な、何だこりゃ!? 気色悪い……! おい、何か変だぞ……!」

 相棒の方を振り向いた覆面男は今度こそ悲鳴を上げた。相棒は助けに応じるどころか、両手両足を戒められ、首から上の口周りまでも黒い結晶体に覆われて鼻で息をするのがやっとという有様だったからだ。

 ──それをやってのけた張本人である夏姫からして呆然としていた。幾ら不意打ちの上、ごろつきに毛が生えた程度の民兵とはいえ武装した男たち相手である。それをほぼ一瞬で制圧し得たのだから、意のままに動く、どころではない。

 夏姫自身が慣れていないだけで、いずれはこれ以上のことを意識すらせずに行えるのではないか。ちょうど人が意識もせず手足を動かせるように。

 頃合いは良さそうね、と素足で濡れた草の上を踏んで近づいた夏姫の姿に、覆面男の目がこぼれ落ちそうなほど見開かれた。この人にとってはちょっとしたホラーね、と夏姫は想像する。目の前には雨の中、全身ずぶ濡れで立つ手術着姿の少女。相棒はとっくに無力化され、自分も両手両足を戒められたまま身動き一つできない。

「な、何だてめえは!? どこから湧いて出た!?」

「そっちこそ何よ、人を森のキノコか何かみたいに。私はここの生徒よ。答えたからこっちからも質問していいでしょ? あなたたちの仲間は何人?」

「ふざけるな! ぶち殺されてえのか、このアマ!」

 夏姫は掌から針のように鋭い結晶体を生やし、覆面男の目に近づけた。男の目が極端な寄り目になった。

「どうもよくわからないわね……私、暴力沙汰って好きでも得意でもないんだけど、脅しって自分が有利な立場でこそ効果的なんじゃない? 生かすも殺すも思いのままにできる相手の機嫌を損ねるのは、あまり利口とは言えないと思うんだけど?」

 男の目が覆面の奥で、びくともしない自分の両手両足と、息も絶え絶えの相棒を見比べる。「わ……わかった。三十人だ」

「本当? 幾ら女子校でも、その人数で何百人を見張るのは無理なんじゃない?」

「ほとんどの人数は体育館に集めて監視している。クラスごとに二人一組で見張りは立てているが、もともと俺たちの目的はここに籠城することじゃねえ……目標はたった一人だからな」

「やっぱりあなたたち、アスミタを狙ってきたのね」

「お、お前は王女の知り合いか?」

「質問しているのはこちら」

 結晶の針で男の額をとやると、それだけで殺されると言わんばかりにかすれた悲鳴が漏れ出た。「や、やめてくれ!」

「質問に答えれば殺しはしないわ」実際、悪人相手だろうとそれだけで殺すほど夏姫も切羽詰まってはいない。「アスミタを殺せたとして、その後どうするつもり? いずれ外部もここの占拠に気づくはずよ。あなたたちに警察の特殊部隊を真正面から迎え撃つ気概があるとは思えないけど。この国の軍も警察も、身内の犯罪には甘いけどテロリストには甘くないわよ」

「トラックの荷台に爆弾を積んである……そいつを破裂させると言えば、時間は稼げるだろう。お偉いさんの娘が吹っ飛ぶのを覚悟で特殊部隊を突入させる度胸は警察にはないさ。その隙を突いて、俺たちは逃げおおせるつもりだった……」

「それなりに計算はしているわけね……ありがとう。約束通り殺しはしないわ。ただ、当分眠ってはもらうけど」

 首のあたりをとやると、男は相棒もろともあっさりと気絶した。それにしても──夏姫は自分の掌をしげしげと見た。こうも上手くいくとは思わなかった……。

「夏姫! ……本当にこの人たち、どうにかしちゃったの!? すごいね!」

 いつの間にかハッチからアスミタが出てきて、目を丸くしていた。

「もう、出てきちゃ駄目だって言ったのに……今の聞いた?」

「聞いたよ。爆弾だってさ。でもまずいよね……たとえハッタリでも、そんなものがあるんじゃ外からも助けが来ないよ」

「そうね」髪の毛から雨粒を滴らせながら夏姫は頷く。「そうなると、全員同時に制圧する必要があるわね。アスミタ、頼みたいことがあるんだけど」

「任せて!」

 躊躇どころか目一杯食い気味のアスミタに、かえって夏姫の方が心配になった。「そんなに安請け合いしていいの? 危険かも知れないのに」

「危険な目ならもう遭ってるよ」けろりとしてアスミタが言う。「それに、あの人たちが私に会いにきたんだったら、王女としてお出迎えしないとね。たとえ招かれざる客でも」


(体育館に、隊長格含めて五人。各学年A〜Eクラスごとに見張りが二人一組。全員がAKと手榴弾を所持。階段踊り場、正面玄関、そして放送室……)

 夏姫の脳内に直接情報が流れ込んでくる──校内に展開した〈黒い氷〉からの情報が。

 通風口に隠れて。水道の蛇口からわずかに先端を覗かせて。そして空気中に漂う、埃よりも微細な断片から──全くもって驚きっぱなしだわ、と当の夏姫が舌を巻いていた。一体今日だけで何回この〈黒い氷〉に驚かされたのだろう。こんなものがあれば、指一本動かすことなく敵陣営を丸裸にできる。しかも今のところ、その性能に限界や弱点らしきものも見当たらないときたものだ。

 いや、何より驚くのはそれら全てをパニックに陥ることなく淡々と処理できている夏姫自身だ。目と耳と皮膚感覚、それに手と足が一千倍、一万倍に増えたらほとんどの人間はパニックに陥るだろう。最悪、発狂してしまってもおかしくない。もしかするとこの〈黒い氷〉の展開に比例して、私自身の脳の処理能力も拡張されているんじゃない……?

 何のことはないわね、夏姫はふと気づいて苦笑する。手と足が十本ずつあるの怪物って、私だったんだ。

『夏姫、放送室に着いたよ』〈黒い氷〉を通してアスミタの声。『すごいね、本当に見張りの人たちが伸びてる』

「気絶させただけよ。目を覚ます前にベルトか何かで手足を縛って、邪魔にならない場所に転がしておいて」

『オッケー。それにしても便利だね、この黒いって。こうして触っているだけで夏姫とお話しできるなんて。スマホより便利じゃない?』

「あいつらの無線を奪うことも考えたんだけどね……傍受されたら元も子もないし」思いつきだったが、本当にできて助かった。本当にこの〈黒い氷〉に、限界というものはないのだろうか?「準備はいい?」

『もちろん。いつでも始められるよー』


「隊長、爆弾の画像をSNSにアップしました」

「よし。しかしフェイクだと思われたら癪だな……わかりやすいインパクトのために死体を添えるってのも手じゃないか?」

 教師と女生徒たちが捕らえられている体育館、隊長格の男の言葉に応じて覆面の部下たちがこれ見よがしに銃口を巡らせると、女生徒たちの間から悲鳴と泣き声が幾つも湧き上がった。

「小娘の死体を転がすと、警察の態度が硬化しませんかね?」

「なあに、全く死体を転がさず舐められるよりはましだろう。ある程度の被害は大目に見るとも言われてるしな。……めそめそ泣くんじゃねえ! 一番泣き声のでかい奴からぶち殺すぞ!」

「やめてください。生徒たちには手を出さないで!」

 たまりかねたように立ち上がったのはあのラウラ先生だった。

「うるせえぞ婆あ! てめえから血祭りに上げられてえのか!?」

『……あーあー、マイクテスト、マイクテスト』

 突然、校内放送用のスピーカーから流れ出した呑気な声に、その場の全員がぎょっとなった。

『現在、校舎を占拠中のテロリストの皆さん。私はダラン王国の第一王位継承者アスミタ。あなたたちの狙いが私一人にあるのはもうとっくにわかっています』

「アスミタって、あのぼーっとした子よね……」「第一王位って何のこと?」たちまちざわめきが周囲に広がる。無理もない、ほとんどの生徒は彼女の素性を初めて知ったのである。

「おい! 放送室には見張りを立てていたろう、どうなってる!」

「呼びかけていますが、応答しません。とっくにやられたか、無線機自体を奪われたか……」

「やられたって……そんなことがあるか? あいつらが幾ら木偶の棒だからって、武装した大の男だぞ? 警察の対応にしても早すぎる……」

『これ以上の無用な流血は、ダラン王女の名において許しません。私は逃げも隠れもしません。放送室で待っています。時間稼ぎなどしようと考えないように。早く来ないと、私は寝てしまいますよ』

 それなりに威厳がないと言えなくもない、しかしやはり呑気な声は一方的にそれだけ話して放送を打ち切った。後には顔中を疑問符まみれにした教師と、女生徒と、覆面男たちだけが残された。

 隊長はラウラ先生を睨みつける。「今の声、お前たちの知っているアスミタで間違いないだろうな?」

「は、はい、本人です……」

「隊長。名簿と照合しましたが、Cクラスの『李明花』『アスミタ・マナンダル』だけが見当たりません。他のクラスにまぎれて隠れているわけでもなさそうです」

「そ、その二人だけは問題を起こしていて、ちょうどカウンセリングルームで待機中で……」

「嘘をつくんじゃねえ! カウンセリングルームにも人はやったが、もぬけの空だったぞ!」

 隊長は怒りに任せてラウラ先生を容赦なく銃床で殴り倒した。女生徒たちの間からまたも悲鳴が上がる。

「何にせよ、向こうから間抜けにも居場所をばらした上、逃げも隠れもしないと言うんなら好都合です。早いところ始末しましょう。脱出しないことには、報酬もふいですし」

「……何かおかしいな」一しきり激昂して、隊長はかえって冷静になったらしい。「踊り場の部隊も合流させて、放送室に向かわせろ。どうせ逃げられやしねえ……それと『荷』の用意もしておけ」

「あれを……ですか? 用心しすぎでは?」

「俺もそう思うが、念のためだ。できれば警察が突入した時の保険にとっておきたかったが、どうも嫌な予感がする」


「夏姫、来たよ」

『了解』アスミタに言われるまでもなかった。〈黒い氷〉は男たちの動きを寸分の狂いもなく捉えている。こちらから見れば丸裸同然、付け入る隙が服を着ているようなものだ。

 蹴破るような勢いで放送室の扉が開け放たれ、AKを構えた男たちが突入してくる。「アスミタ王女だな? 動くな!」

「動いたって動かなくったって撃つつもりでしょうに……まあいいや。夏姫、私は囮役を果たせたかな?」

 アスミタの傍ら、操作盤の上に突き出た拳大の結晶体が振動して夏姫の声を発する。『上出来よ。その場を動かないで。

 覆面男たちはぎょっとして銃を構え直した。「今のは何だ? 誰が喋った?」

『まあ、そんなにびっくりするような代物でもないわ。聞けばあなたたちだって「なあんだ」って言いそうな、種も仕掛けもある手品よ』

 龍一だったらこんな時何と言うだろう? ──そうだ、たぶんあれで間違いない。

『──戦闘開始オープンコンバット

 いつの間にか男たちの足元に生えていた結晶体の群れが、細かく震えて耳障りな唸りを発し始めた。

「何だこれは!?」

「畜生、耳が……!」

 もう銃を構えているどころではなかった。振動は耳から侵入して脳を直接揺さぶると同時に、内臓を掻き回して不快感と吐き気まで誘発した。たちまち男たちは銃を取り落とし、その場に崩れ落ちて嘔吐し始める。

『はい、お疲れ様』

 天井と床から数本の結晶柱が突出した。男たちはまとめてアッパーを喰らい、さらに腹を突かれて嫌というほど壁に叩きつけられた。ものの数秒で彼らは完全に無力化される。

『……まさかこうも上手くいくとは思わなかったわ。自信はあったけど』

「でも、体育館にはまだ大勢捕まっているんでしょ?」

『そのへんは大丈夫。抜かりはないわ』

 夏姫の言葉を裏付けるように、校内のそこかしこから男たちの悲鳴が聞こえてきた。夏姫の「攻撃」が開始されたのだ。


 ──視聴覚教室を占拠していた覆面二人組のうち、一人はいつの間にか天井の通風口をびっしりと覆い尽くしていた何かに引きずり込まれた。慌てたもう一人が銃口を向けた途端、今度は覆面男を飲み込んだ通風口がとばかりにそいつを吐き出した。二人はもんどり打って倒れ、そのまま昏倒してしまう。


 ──非常階段を巡回していた二人組は、自分たちの足元がふっと消失したことに気づいた。周囲に展開していた〈黒い氷〉が偽物の映像を映し出していたのだ。たちまち二人は階段を踏み外し、仲良く悲鳴を上げながら十数段を一息に転がり落ちた。当然、一番下まで来た時には気絶していた。


 ──各所から聞こえてくる悲鳴じみた応援要請に応えて校舎間の渡り廊下を走っていた一群は、廊下の前方で何かが光を反射するのを見て訝しんだ。見る間にそれは一抱えほどもある長大な柱となり……自動車に匹敵する速度で突進してきた。逃げる間もなく結晶の柱はボーリングのピンのように男たちを弾き飛ばし、全員気絶させた。


 連携どころかろくに反撃すらできないまま覆面男たちが次々と無力化されていく様を、アスミタは放送室の窓から「はー」と目を真ん丸くして見ていた。「すっこーい……夏姫、これ君が全部やってるの?」

 だが、当の夏姫は満足しきってはいない様子だった。『あれ……まずいわね』

「何が?」

 もう一度階下を見下ろしたアスミタは、自分の目が信じられず思わず二度見してしまった。中庭を覆面男が罵声を飛ばしながら、誰かをこづいたり蹴飛ばしたりしている。見る影もなくぼろぼろになっているのは、あのジャスティン理事長だった。パギオが占拠され、逃げる間もなく隠れていたところを引きずり出されたのか。服が返り血で血まみれなのを見ると、他のスタッフは殺されたらしい。

『……、私が助けないとダメかな?』

「うーん、私から夏姫にそうしろと頼む権利はないけど。でも君の性格から考えて、見殺しにしたらしたで罪悪感に苛まれるんじゃない?」

『それも……そうね』ぐうの音も出ないように夏姫がぼやく。


 覆面男たちにこづかれたり蹴飛ばされたりしながら血まみれの理事長が体育館に引きずってこられると、女生徒たちの間から悲鳴が上がった。が、中でも一番狼狽していたのがラウラ先生だった。「……理事長!」

「ふん……生徒を放り出して自分一人で逃げるつもりだったのか。教育者の風上にも置けねえな」

「黙れ蛮人どもが! お前らもヨハネスの使い走りなんだろう! 私の崇高な理念を、土足で踏みにじりに来たんだな!」

 隊長の顔が不快げに歪む。「何を言っているのかはよくわからねえが、俺たちを馬鹿にしたいって気持ちはよぅく伝わってきたぜ……」

 隊長が顎をしゃくると、左右の部下たちが思い切り理事長を銃の台尻で殴りつけた。ラウラ先生が金切り声で止めに入ろうとし、周囲の女生徒たちに必死で止められている。

「最初は人質に生かしておこうかと思ったんだが……ぶち殺したところで小娘の死体を転がすよりは罪がない気がしてきたな」

「殺すよりもっといい方法がありますよ。こいつをパンツ一枚にして、爆弾に括り付けるってのはどうです?」

 部下の妙案に隊長は顔を綻ばせる。「そりゃあいい。こういうむかつくエリート面には、死に勝る屈辱を与えてやるのがかえって礼儀ってもんだ。おい、こいつを裸に剥いちまえ!」

「よ、よせ、やめてくれ……!」

 這いずって逃げようとする理事長を、舌舐めずりせんばかりに覆面男たちが取り囲む。ラウラ先生が女生徒たちを振り切ってその中に躍り込もうとした時──

 救いの『手』は誰にとっても予想外の形でもたらされた。

 ぶおん、と巨大な塊が通過する空気が理事長の髪を巻き上げ、覆面男たちをまとめて吹き飛ばした。

「え……?」

 隊長も周囲の部下たちも、助けられた理事長も、そしてラウラ先生も女生徒たちも、呆気に取られてそれを見た。

 黒光りする結晶体で構成された、小型トラックほどもある巨大な拳が出現していた。全員が注目する中、拳は形を変えて人で言えば親指に当たる部分を立ててみせた。サムズアップだ。

「遅くなってごめんなさい。さっきまで一風変わったカウンセリングを受けていましたから。今からでも間に合います?」

 ぺたぺたとやや間が抜けて聞こえる裸足の足音を響かせて体育館に入ってきたのは、全身ずぶ濡れで泥まみれの手術着を着た夏姫だった。

 理事長の目が張り裂けんばかりに見開かれる。「瀬川夏姫、お前、どうして……」

「あら理事長、『どうして』という疑問がどうして出てくるんですか? 私のような悪童にまで、見捨てることなくカウンセリングの場を用意してくださってありがとうございます。今は私、お礼の言葉で胸が張り裂けそうなんです。ですから何も言わず、直接、この思いを伝えようと思って」

 訳がわからないなりに隊長が合点した顔になる。「そうか、お前か、さっきから俺の部下たちを可愛がってくれたのは……!」

「可愛がってはいないわよ。

「ふざけるな! もういい、殺せ!」

 殺気に満ちた銃口が夏姫に向けられる。だが彼女は鼻で笑っただけだった。「血の巡りの悪い人たちね」

 銃口が火を吹くほんの一瞬前──彼女の周囲で、ガラスの割れるような音が立て続けに響く。

 覆面男たちの視界を、等身大の結晶体で構成された壁が幾つも遮った。夏姫の姿どころか、傍らの仲間からも隔てられた形である。

 震えながらお互いに抱き合っているラウラ先生と女生徒たちは、黒光りする半球型のドームにすっぽりと包まれている。〈黒い氷〉は、体育館内の誰にも気づかれないうちに薄く広く床を覆い尽くしていたのだ。

 男たちの驚愕の呻きは、すぐに魂消る悲鳴へと変わった。慌てふためいて発砲した銃弾が、跳ね返って自分たちの手や足を貫いたのだ。もう少し冷静な者は銃床で〈黒い氷〉の壁を殴りつけたが、壁は砕けるどころか大きくたわみ、衝撃を殴った者の腹や顔面にお返しした。

「……終わったかしら?」

 夏姫が手を一振りすると、そこには半死半生で呻いている男たちと、目を丸くしている女生徒たちが現れた。隊長は金魚のように口をぱくぱくさせていたが──やがて、物も言わずに逃げ出した。

「なかなか見事な撤退ぶりね。まあ、逃がしはしないけど……理事長、立てますか?」

 夏姫は這いつくばったままの理事長に手を差し伸べる。反射的にその手を取った彼の頬に、彼女は渾身の力で拳を叩き込んだ。悲鳴すら上げられずに理事長が床に突っ伏す。

「人の耳に気味の悪いを流し込んでおいて、まさかそのままで済むと思ってなかったでしょ? 私が龍一じゃなかったのを感謝してほしいくらいだわ」

 夏姫は息を呑んでいたラウラ先生に向き直る。「先生、なんで裏切ったんですか?」

 彼女は自分が殴られたような顔をしていた。「……いつか、この人も目を覚ましてくれると思ったのよ」

「では、答えは出ましたね? せめて警察には全部、正直に話してください」

 憔悴しきった顔ながらもラウラ先生が頷いた時、外で爆発音が響いた。


「『荷』は起動した! 急いで離れるぞ、今なら警察の包囲も未完成だ!」

 隊長はわずか数名になってしまった覆面男たちとともにトラックに乗り込んだ。濡れた路面でスリップしかねない勢いでトラックが走り出す。

「隊長、しかしアスミタ王女は結局殺し損ねたんですぜ! クライアントにバレたら、どんなきついペナルティを押し付けられるか……」

「それだって命あっての話だろうが! あんな化け物がいるなんて聞いてなかった……逆に、こっちが契約違反でクライアントを責め立ててやる!」

 血走った目でアクセルを踏み込む隊長は、ふと気づいた──バックミラーに映る黒い点を。それは見る見るうちに大きくなり、こちらに飛んでくる迫撃砲弾となり、

「え……?」

 次の瞬間、見事にトラックへ命中した。


「あいつら……あんな隠し玉を持ってたのね」

 夏姫は再び、雨の中へ一歩踏み出した。泥水を踏む彼女の素足の周囲には、ガラスのひび割れるような音とともに〈黒い氷〉が展開している。

 彼女の視界の先には、雨粒を焦がす勢いで炎を上げて燃えるトラックがある。その炎の中で何かが蠢いていた。人に似た、だが常人より数回りは大きなシルエットが。

 背には自動装填式の迫撃砲。人間を模した両腕には、それぞれ機銃と自動擲弾銃。

 センサー系の強化及び全身への走行を追加。従来型の火力と生存性を増し、拠点防衛、あるいは拠点攻撃に特化した──HW。タイプ〈擲弾兵グレナディア〉。

(厄介ね……生身じゃハッキングも効かない)

 そう、厄介な相手だ。この局面ではなおさら。

 しかも厄介なのはそれだけではなかった。〈擲弾兵〉の胸元で、何やら赤い光が不気味に明滅している。こいつ、型だ。

「ひどいものね……初めから帰還する必要もない特攻兵器ってわけ?」原料さえあれば幾らでも量産できるHWならではだが、ひどさには変わらない。

『夏姫、捕まっていた子から避難する前に聞いたんだけど』アスミタの通話。『あのごろつきたち、、って笑ってたんだって。って!』

「……ありがとう。とても元気の出る話だわ」逆に考えましょう。五分以内に決着をつければいいのよ。「そのまま遠くへ逃げるのよ。間違っても私を助けようなんて考えないでね」

『夏姫は? 夏姫はどうするの?』

「どうするもこうするもないわ。やるべきことをやる」ヨハネスのためではない。龍一のために──そして私のために。

 何か言いかけたアスミタとの通話を強引に打ち切る。後のことは、生き延びてから考えればいい。

 まるで夏姫の決意を待っていたように〈擲弾兵〉が動き出した。


 最初の動きは機銃掃射から始まった。

「く……!」夏姫はとっさに〈黒い氷〉で構成した壁を前方に展開、機銃弾を受け止める。貫通を防げはするが、思ったより容易ではない。半流体の〈黒い氷〉では、対人用の小銃弾ならまだしも対車両用の機銃弾を受け止めるのはかなり危ういのだ。角度が悪ければ、防ぎきれないかも知れない。

(人間ならともかく、兵器相手に出し惜しみはしないからね……!)

〈擲弾兵〉の死角から忍び寄った〈黒い氷〉が盛り上がり、周囲十数箇所から同時に鋭い先端を突き出す。まさに串刺し、人間なら全身槍衾だ。が、

(!)

〈擲弾兵〉は避けなかった。避ける必要もないのはすぐわかった──〈黒い氷〉の槍は刺さったが、貫けなかったのだ。どころか、腕の一振りで粉々に粉砕されてしまう。

(人間戦車相手じゃ、荷が重かったか……!)

 つい歯噛みしてしまう。だがぶっ刺すだけが取り柄じゃないのよ──次なる戦法を考える夏姫を嘲笑うように、

「まずっ……!」

 背の自動迫撃砲が、ぽんとユーモラスでさえある音を立てた。

 数メートルと離れていない地面が炸裂した。泥と爆風が夏姫の全身に降りかかる。彼女の身体はゴム毬のように吹き飛んだが、すかさず展開した〈黒い氷〉がクッションとなって受け止める。

「ありがと……」ついお礼を言ってしまう。しかし思った以上に厄介だ。何しろ相手は人間戦車、小手先は通用しそうにない。

 ぽん、ぽん、とさらに間抜けな音が鳴る。

「!」

 前方の地面が続けざまに炸裂した。泥土が口に入り、思わずむせる。〈擲弾兵〉が機銃と擲弾銃を構え、迫撃砲を撃ちながらじりじりと前進してくる。歩みは遅いが、止まらない。

 あることに気づき、夏姫は愕然となった。あいつ、……つまり私の弱点を知っている。私が〈黒い氷〉を展開できないようにしてるんだ。

 唇が笑いに歪んだ。頭いいじゃない。少なくとも、あなたを見捨てて逃げた雇い主よりは。

 思考を止めたら殺される。夏姫は耕されていない地面に〈黒い氷〉を展開、周囲の情景をスクリーン投影して〈擲弾兵〉の視界を遮る。時間稼ぎに過ぎないのはわかっている。距離を取らなければ……。

 四方八方への機銃掃射と擲弾の乱射がその答えだった。

 防壁に集中したのならまだしも、撹乱用のスクリーンなど紙同然だった。瞬時に〈黒い氷〉が弾片と機銃弾の直撃からは夏姫をカバーしたものの、爆風と衝撃波までは防げない。夏姫は今度こそ空中高く吹き飛ばされ、泥水の中へ石のように落下した。息ができない。泥水から顔を上げても、今度はひっきりなしに降り続く雨が叩きつけてくる。

「……ぶはぁっ!」

 泥水と雨水を吐き出した拍子に、笑いの発作が止まらなくなった。私何してるんだろ? なんでこんな雨の中で死にかけてるの? 助けに来てもくれない男の子のために? 私の人生を狂わせた、犯罪者の元締め爺様のために?

 笑うな! 考えろ! 笑いを止めるために自分の頬を殴りつける。

 銃口と砲口がこちらを向く。間に合わない──!

「でかぶつ、これでもくらえー!」

〈擲弾兵〉の頭部に何かがぶつかり、中身を撒き散らした。体育館の壁を塗るための塗装用ペンキだ。

 雨の中アスミタが、夏姫も初めて見る怒りの形相で〈擲弾兵〉を睨みつけていた。

「…………何やってるのよ!」

 自問自答している場合ではなかった。〈擲弾兵〉がアスミタを新たな目標として設定し直そうとしている。胸元のランプは点滅が早くなっている。何とかしないと、何もかも何とかしないと……。

 彼女に向かって手を伸ばし──た瞬間。

 夏姫とアスミタは、校舎の屋上へ転移していた。

「え」

「え?」

 しばし二人は手を取り合ったまま、互いに見つめ合ってしまう。

 夏姫の平手打ちを、アスミタは意外に素早く首をのけぞらせて避けた。

「何で避けるのよ!」

「理不尽! 夏姫こそ、命の恩人を殴らないでよ!」

「逃げろって言ったのにのこのこ戻ってくるからよ、この天然! 大人しく一発喰らいなさいよ!」

「夏姫こそ、私が戻ってこなけりゃ危なかったくせに!」

「……そうね。ごめんなさい」

「急に冷静にならないでよ……」

 二人は脱力して雨の屋上に座り込んでしまうが、安堵している場合ではないのはわかっていた。

 それにしても、あそこからこの屋上までは直線でさえ数百メートルはあるはずだけど、何がどうなっているんだろう? 雨の寒さとは違う悪寒に夏姫は全身を震わせる。まさか、? それって一度死んだってことじゃないの? 便利にも程があるし、怖すぎるわ。

「夏姫。あいつがこっちに気づいたよ」

「気づくでしょうね……」

 地上の〈擲弾兵〉がこちらへ向き直る。胸元のランプはさらに点滅を早めている。敷地全体が吹き飛ぶ威力とやらが本当なら──ここも安全ではない。

「さすが人間戦車。今の私じゃびくともしないわ……」

「人間戦車って、要するに戦車なんでしょ? 戦車と同じ撃退法が通じるんじゃないかな? 穴に落っことすとか」

「人間形態だから、なまじの穴じゃ這い上がってきそうね」

「なまじじゃダメなら、深い穴なら?」

 夏姫は一瞬呼吸を止め、そして吐き出した。「ありがとう、アスミタ。勝算が見えてきた。

「えっちょっ……」

 言いかけたアスミタの姿が一瞬でかき消える。

 これでいい、自分の呼吸が正常に戻りつつあるのに夏姫は安堵する。しくじっても、私が死ぬだけよ。

 こちらを見上げる〈擲弾兵〉に、夏姫は今度こそ向き合う。まるでガンマン同士の決闘ね。いいわ、ちょうどベストボジションだもの。

〈擲弾兵〉が迫撃砲に砲弾を装填する音が、そんなはずはもちろんないのに、聞こえたように思えた。胸元のランプもさらに点滅を早める。あと数十秒、いやあと数秒か──

 勝負ショウダウン

 砲弾を撃ち放──とうと両足を固定した〈擲弾兵〉が大きく揺らぐ。まるで流砂のように、足元の泥が煮立っていた。

 熱く、熱く、熱く、熱く、もっと熱く!

 夏姫の念に応じ、〈擲弾兵〉の周囲に展開した〈黒い氷〉が赤熱する。悲鳴のように、咆哮のように、甲高く震えながら周囲の泥土を沸騰させる。

 だが〈擲弾兵〉に人間の兵士のような戦意喪失はありえない。泥に腰近くまで埋もれながらも迫撃砲を強引に夏姫へ向けようとする。が、

 動きは止まったでしょう? 私の勝ちよ。

「……汝、塵より生まれ、」

〈擲弾兵〉の頭上に、全長数百メートルにも及ぶ〈黒い氷〉が直立していた。

「塵に還れ」

 まるで杭のように〈黒い氷〉が落下する。そのままの勢いで〈擲弾兵〉を貫き、止まらず地表へめり込み、そのまま学園の地下施設まで突入した。

 そして夏姫の足元に、地の底深くから腹の底まで響く、鈍い轟音が伝わってきた。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 崩壊し、至るところで漏電と漏水が発生している地下施設へ降りていくのは困難を極めたが、夏姫は躊躇わなかった。なぜかはわからないが、そうする必要があると思ったのだ。

 砕け散った〈ヒュプノス〉原株を付着させた隕石の破片が、夏姫の足元に散らばっていた。呼吸するように淡い光を放っていたそれは、

「ぁ……」

 夏姫が見守る中、ふっと光を消した。その時になってようやく夏姫の中に、ここで自分がやるべきことは、全て終わったのだ、との思いが込み上げてきた。

 喉が破れんばかりの叫び声が聞こえた。驚いて振り向くと、理事長が上等なスーツが泥まみれになるのも構わず突っ伏していた。実親が死んでもここまでは、と思わせるような嘆きぶりだった。

「こんな……こんな馬鹿なことが……私の夢が、人類への福音が……どうして、どうしてこんなことに……」

「『どうして』って疑問が出てくるのがどうしてなのかしらね。馬鹿げた夢から覚める時間が来ただけじゃない」

 夏姫の声に、理事長は汗と涙と泥水でまだらになった顔を上げる。「馬鹿げた夢……だと?」

「ええ。難しいことじゃないでしょう? 起き上がって、散らかした玩具をきちんと押入れにしまって、それから警察に出頭するのよ。そして生徒たちの家族に全部説明するの。『私はあなたがたからお預かりした大切な娘さんたちを身勝手な妄想でいじくり回して壊し、始末に困って殺しました』ってね」

 理事長の目に光が戻った。獣のような吠え声を上げながら懐から取り出した小型拳銃を喉元に当てる。

 だが次の瞬間、焼けた鉄板の上で焼かれた猫のような悲鳴を上げて拳銃を取り落とした。彼の掌には、釘のように黒い結晶が深々と突き立っていた。

「あの世へ逃げようったってそうはいかないわよ、卑怯者」冷たい怒りを込めて夏姫は囁く。「一生かけて償いなさい」


 ──その日以来、アセンプション・パギオ内で転入生『李明花』の姿を見た生徒はいない。救出された女生徒や校内に突入した警官の中には、中庭に降り立った「大鴉のように」黒い大型ヘリへ、ぼろぼろの手術着に素足のまま乗り込む彼女を見た、と証言する者も何人かいた。

 だが奇妙なことに、その黒いヘリがどの方角へ飛び去ったかについては、誰もが頭に霞がかかったような顔になって、誰も答えられないのだった。

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