少年と言う己を
柊 十界
第1話 父との別れ
私はある、大家族の家に生まれた。
3つ上の兄、母、父、そして父方の家族。そんな普通な家に生まれ、愛情を貰った。
私は、幼いころハッキリ言って、周りより何倍も馬鹿だった。良くいる考える前に体が動くタイプの単純な子供、純粋で人の悪い所を知らない甘い子であった。ただそのおかげで人に好かれていたのもあると今なら思う。
ただ父は、屑と言われても仕方ない人だった。育児を蔑ろにし、母を攻める。そんな父が嫌いであった。だが、今だから嫌いだと思っているが、昔の私はそれでも大好きな家族というひとつの事実があったから。
しかし、事件は起きた。現代ではよくある「離婚」の話が父と母の間であった。私も二人の話し合いの場にいた。ハッキリと覚えてはいないが、昔の私が理解してないことだけは覚えている。理解していない中で、気づいたら選択を迫られていた。父から告げられた言葉は、
「俺とこいつ、どっちに着いていく?」
何を言っているのか理解できなかった。体が固まる。とても重い塊を体に背負わされているような感覚だった。この時、私は無意識に泣いていた。信じられなかった。信じたくなかった。そんな思いが、頭を駆け回った。ただ決断を出さないと行けなかった。別れを悲しむ暇も、終わらない己の中の沈んでいき続ける心を引き上げる時間さえほんの2秒もなかった。結局、私は決断を出せず、母が引き取ることが決まった。父は泣くどころか自分は悪くないと言いたげな顔で、母と私を見た。悲しかった。今は、吐き気がするほど酷いと思うが、幼い私には、悲しいでこと足りた。
話し合いが終わった後、一日荷物をまとめる時間が設けられた。兄は父方の家に、私は離れの母と兄の三人で基本暮らしていた家にそれぞれ一日を過ごした。母は離れの家に着いてから私に
「ごめんね。こんな事になっちゃって…ごめんね本当に」
私を抱きしめ、泣きながら、謝っていた。
父は悪びれもせず、一方的に母を攻めていたのに、母は謝っていた。訳が分からなかった。なんで母が泣かなきゃいけないんだ?不思議とそんな疑問が浮かんだ。そして、私は、人生で初めて、怨みを持った。
少年と言う己を 柊 十界 @ganseena50
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