◆◆ 1-6 女官長ミズキ ◆◆

 皇帝とタイシンが立ち去ってまもなく。


【 女 】

「――立ちなさい」


【 ホノカナ 】

「はっ、はいっ!!」


 凛とした声で命じられ、飛び跳ねるようにして起き上がると、眼前に長身の女が立っていた。


【 女官 】

「なるほど、返事はよろしい」


 女官というには、ずいぶんと威厳のある人だ、とホノカナは思った。


【 ミズキ 】

「私は女官長の〈ミズキ〉。あなたの名と本籍は?」


【 ホノカナ 】

「はいっ、姓はリン、名はホノカナです! 本籍は〈峰東ほうとう〉です!」


【 ミズキ 】

「峰東……それでは、この前のいくさで……」


【 ホノカナ 】

「……はい、いろいろありました! ですが今は! 女官としてがんばりたいです!」


【 ミズキ 】

「そうですか」


 ミズキは首肯した。


【 ミズキ 】

「これよりあなたを見習い女官として認めましょう。ですが、あるていど経っても見込みがないようなら、出ていってもらいます。そのつもりで」


【 ホノカナ 】

「はっ、はいっ! ……ちなみに、あるていどっていうのは、どのていどで……?」


【 ミズキ 】

「あなたに質問は許可していません」


【 ホノカナ 】

「は、はいい……!」


 ホノカナは早くも、えらいところに来てしまった――と思いはじめていた。


【 ホノカナ 】

(で、でもっ……わたしには……こうするしか!)


【 ミズキ 】

「それから、ホノカナ」


【 ホノカナ 】

「――はいっ!」


【 ミズキ 】

「これからは、もう少し声を抑えるように」


【 ホノカナ 】

「……はいぃっ……」


 ともあれこうして……

 ホノカナの女官生活がはじまったのである。

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