エピローグ

クロムはどさりとその場にへたり込んだ。

「クロム!!大丈夫!?」

ルーシアが腰をかがめて、クロムの顔を覗き込む。

「すみません、ルーシア様...本当に助かりました...」

クロムは緊張の糸が切れ、声に力が入らなかった。

「ルーシア...ルーシアでいいわよ。クロム」

ルーシアの言葉にクロムは目を丸くしている。

「私たちはもう友達だよ。だから、ルーシアでいいよ。私もあなたのことをクロムと呼ぶ」

ルーシアのその言葉で、クロムの心が満たされた。ずっと空っぽだったものが今ようやく満たされたのだ。

「ありがとう、ルーシア」

クロムは微笑みながら、静かにそう言った。

クルルルッー

いつの間にか、ルディが袋から抜け出し、二人の周りをパタパタと飛び回っていた。

「クロム、一つ教えて」

ルーシアは急に真剣な顔になった。

「あなたは、〈光の七芒星〉を倒して、世界を滅ぼすつもりなの?」

それが魔王に生まれたクロムの宿命だった。〈光の七芒星〉と〈闇の七芒星〉はこの世界の存続をかけて殺し合う。そういうふうに運命付けられているのだ。

「違う。俺は世界を滅ぼしたりなんかしない。俺は...」

クロムはそこで言葉を止める。ルーシアは無言でクロムの言葉を待った。

「ラグナロクの謎を解く」

クロムは力強くそう言った。

「〈光の七芒星〉と〈闇の七芒星〉がなぜ生まれてくるのか。なぜ戦わなければならないのか。ラグナロクのことはこの世界の者ならばみんな知っている。でもなぜそうなっているのか誰も知らない。だから、俺はその謎を解く」

そう言ってクロムは立ち上がった。

「そっか、それを聞いて安心した」

ルーシアは心から安堵している表情だった。

「もう行くよ。勇者の一人にここにいることがバレたんだ。他の勇者やその配下が俺を殺しにくるかもしれない」

クロムはそう言って、短剣をしまい、身の回りを整えた。

「さようなら、クロム」

「さようなら、ルーシア、いつかまた会いにくるよ」

そして、クロムは歩き始めた。

この世界の真実を知るために。




最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。

至らぬところが多かったかと思いますが、少しでも楽しんで頂けておりましたら、大変幸いです。

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何卒宜しくお願い致します。

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俺も勇者に転生したかった。でも、現実は・・・ 阿々 亜 @self-actualization

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