番外編IF~もしもナディーヌが、セヴランと上手く別れられていたら~ 俯瞰視点(9)

「ぁぁぁぁぁぁぁ……。ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!」

「くそぉぉぉぉぉぉ……。くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……!!」


 門を挟んだ叩き合いが始まってから、およそ6分後。ナディーヌとセヴランは同じく門を挟んで倒れ、顔を腫らして頭を抱えていました。


 突如発生した、戦い。その醜い争いは、共に体力が尽きて引き分けとなりました。


 そうして2人はある程度の冷静さを取り戻し、ようやく、『こんなことをしても意味がない』と気付いたのでした。


「この男に何を言っても、無駄……。失ったものは、戻ってきませんわ……」

「この女に何を言っても、意味がない……。あの日々は、時間は、もう戻ってこないんだ……」


 ナディーヌとセヴランは夜空に向かって呟き、


「「ぁぁぁぁぁ……。ぁぁぁぁぁ……!!」」


 同じタイミングで嗚咽を漏らし、


「誰か、わたくしを助けてぇぇぇ……!! 一度だけ、やり直すチャンスを与えてくださいぃぃぃぃ……!!」

「誰か、俺を助けてくれぇぇぇ!! このままは嫌だぁっ、こんな人生をやり直すチャンスをくれぇぇぇぇ……!!」


 共に、『何か』に対して助けを求めます。

 ですがこの場には、両家の人間しかいないため変化はありません。そして――



「どうか、わたくしにお力を……っ。わたくしが社交界に復帰できるように、お働きかけを……!!」


「どうか、俺にお力を……っ。俺が再び堂々と人前に立てるように、お力添えを……!!」



 その後2人はそれぞれ懇意にしていた人を訪ねますが、そこでも救いの手を得ることはできませんでした。

 そのためナディーヌとセヴランは、ずっとそのまま。2人は今後も自らの行動による悪評を背負い続け、そうしたくはないのに、ひっそりと生きていくこととなってしまったのでした――。

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