番外編IF~もしもナディーヌが、セヴランと上手く別れられていたら~ ナディーヌ視点(7)

「……………………」

「……………………」


 玄関を潜る力は、なかった……。

 予定より何時間も早くお屋敷に戻ったわたくしは、驚き出迎えてくれたお父様に即事情を伝えて……。急速に青ざめて崩れ落ちたお父様を見ていたら、改めて状況を痛感して……。だからわたくしも更に絶望して、崩れ落ちて……。わたくし達は揃って、呆然と夜空を見上げていた……。


「…………こんなことに、なってしまうだなんて……。ナディーヌの策は、完璧だと、思っていたのに……」

「わたくしも、ですわ……。こんなはずでは、なかったのに……」


 今頃話題の中心にいて、そろそろリッグ様かニールス様に『二人きりになりたい』と言われていたはずなのに……。声をかけられなかったどころか、もう二度と社交界に出られなくなってしまった……。

 最悪、ですわ…………。


「…………誰だって、ライバル視をしたり……。そんな人の上に立ちたいと、思っているはずなのに……。ちょっと、間違っただけなのに……。理不尽ですわ…………!」

「ああ、ああ……っ。まったくだ……っ! 行動を起こしていないだけで、誰しもが心の中には抱いているというのに…………。理不尽だ……っっ!」

「こんな理由で、終わりたくない……。けれど、挽回は無理で……。終わってしまった……」

「……わたしがどうやっても…………無理だ……。くそ……くそぉ……っ。時間よ、もどってくれぇぇ……!!」


 お父様が――わたくしもそう願うけれど、巻き戻るはずなんてない……。だからわたくし達は、涙を流しながら夜空を仰ぎ続けて――


「ナディーヌ!! ナディーヌぅっ!! よくも騙してくれたなぁぁっ!! よくも俺の人生までっ、2つもっっ、滅茶苦茶にしてくれたなぁぁぁぁぁ!!」


 ――そうしていると門の前に1台の馬車が停まり、降りてきた男性が――セヴラン様が、門の前で叫び始めた。

 ……ふたつも、滅茶苦茶……? なにが、あったんですの……?

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