番外編IF~もしもナディーヌが、セヴランと上手く別れられていたら~ ナディーヌ視点(4)

((どっ、どうなってますの!? 大歓声は!? 大歓迎は!? どこにいきましたの!?))


 胸を張って会場に足を踏み入れたわたくしは、目を見開き心の中で頭を抱えていた。

 わたくしの姿を見れば、全員飛んでくると思っていたのに。どうして、全員から白い目で見られていますの……!?


「あ、あの。皆様? わたくし、ですわよ?」

『………………』

『………………』

「ミレネア子爵家の、ナディーヌですわよ? 十一か月ぶりに公の場に現れた、皆様の同級生ですのよ?」

『………………』

『………………』


 もしかして、わたくしだと気付かれていない? わたくしの顔を忘れてしまっている?

 そう思って名乗ってみたけれど、反応は変わらない。ここにいるのはナディーヌ・ミレネアと、理解しているのに……っ。なぜ、リアクションがないんですの……!?


「え、えっと…………あっ、病み上がりで遠慮されていますのねっ? ご安心くださいましっ。心身ともに万全でして、ダンスだって当たり前に踊れてしまう――」

「あら、フィナ様。ごきげんよう」

「お会いするのは1年ぶりですわね。お元気でしたか?」


 な!? 今度は無視をされて、あとからやって来た女性――サエズ伯爵家のフィナ様と楽しそうにお喋りを始めた!

 白眼視された後は、居ないような扱いになるだなんて……!? まっ、ますます意味が分かりませんわ……!! なんなんですの……!?


「ちょっ、あのっ。誰か――」

「ここでは、落ち着いてお話ができませんね。あちらへ参りましょう」

「そうですわね。参りましょう」


 駄目っ、誰もわたくしの相手をしてくれない……っ。

 ど、どうしましょう……。どうやって、この状況を理解すれば――


「あっ! ニコル様っ!」


 わたくしは少しでも早く注目されたいから、かなり早めに会場入りをしていた。そのため一番親しくしていた人がやって来て、大急ぎでニコル様へと駆け寄った。

 お屋敷に籠るまでは良き友人だったし、彼女は男爵家で格下なんですものっ。他の人のような態度は取らないはずで…………よかった! かなり余所余所しくなっているものの、ちゃんと挨拶が返ってきましたわっ。


「ニコル様っ、ねえニコル様っ。皆さんの様子が、おかしいんですのっ。何かご存じありませんかっ?」

「ぁ、ぇ……。えっと……」

「そのご様子なら、ご存じなんですわよねっ!? お願いしますわっ!! 教えてくださいましっ!!」

「…………わ、分かりました。お伝え、します」


 はぁ、やっと理由を知れますわ。

 白眼視に、無視。なにが起きていますの……?


「ナディーヌ様はエリザベット様を一方的にライバル視していて、勝ちたいという理由でセヴラン・フィレーダ様と浮気をして婚約者となっていた。更には十一か月前の夜会で、それをわざわざご本人に自慢していた。そんなお話が、同級生わたし達の間で広まっているのですよ」

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