番外編IF~もしもナディーヌが、セヴランと上手く別れられていたら~ ナディーヌ視点(2)
「ふふっ。ふふふふふっ。これからわたくしを待っているのは、大歓声と大歓迎。今夜の主役はわたくしですわね……っ」
学院に――同窓の会の会場へと向かう、馬車の中。そこでわたくしは、お屋敷を発ってから17回目となる満面の笑みを浮かべていました。
だってかつての同級生が、11か月ぶりに公の場に姿を現すんですもの。誰もがわたくしとの再会を喜び、わたくしを中心として黒山が形成されるのは約束された未来ですわ。
「まずは苦労話をたっぷりとして、同情されて。『これから失った時間を一生懸命取り戻していく』と前向きな姿勢を見せて、敬意を表されて。そんな美女を見ていたら?」
ますます、わたくしという人間に興味を持つ人が出てくる。
『ほぼ間違いなく長年の疲労とストレスが原因で、それらは解消されたため再発の心配は100%ない』――。
今のわたくしは、これまで以上に抜かりのない人間。また診断書を偽装していて、仮病によって忌避されない対策もバッチリなんですものね。
問題点がなにもないのだから、美しい蝶が気になるのは至当。わたくしの予想では、最低でも10人の男性に声をかけられるはずですわ。
「そして――。その中に1人は、上級貴族がいる」
リンドワーグ侯爵家のリッグ様か、ハイネッズ侯爵家のニールス様。お二人は顔が良くて地位もお金もあって、なのに相手がいない。
それは理想が高すぎるかららしくて、あら? あらあら?
「そういえば、同じ会場には――。容姿も中身も完璧で、話題の中心になっている、ナディーヌという理想的な女性がいましたわね?」
だ・か・ら。わたくしと会話をしたことによってわたくしを詳しく知って、詳しく知ったことによって惹かれるようになる。
惹かれるようになったら? そう。交際をしたくなって、婚約、結婚も、したくなるんですわぁ。
「ふふ。ふふふふふっ。ふふふふふふふふっ。今夜の主役になれる上に、こんな出逢いまであるだなんて。11か月も我慢したかいがありましたわぁ」
今日は、美しい存在がサナギから蝶へと変わる日!
21回目の満面の笑みを浮かべたタイミングで学院に到着し、わたくしは意気揚々と馬車を降りて会場に入る。そうして、
ナディーヌ・ミレネアの為に用意された場所。
と言っても過言ではない空間に舞い降り、そしてわたくしは――
『………………』
『………………』
『………………』
――場内に居た同性異性の両方から、白い目を向けられたのだった。
……え? え……!?
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