番外編IF~もしもナディーヌが、セヴランと上手く別れられていたら~ ナディーヌ視点(1)

「ふふふっ。うふふふふふ……っ!」


 どうでしたの? 上手くいきましたの? フィレーダ侯爵邸から戻ったお父様にそう尋ねたわたくしは、エントランスで満面の笑みを浮かべていました。

 なぜなら、


「そんなメッセージを贈られてしまったら、断れないな。……分かった、ミレネア卿。ナディーヌのためにこの縁を切り、俺は新たな道を進むことにしよう」


 作戦は、無事成功。セヴラン様と縁を切れるようになったから、こうなっていますの……っ。

 急遽のため今日は書類の用意ができなかったらしくって、明後日。お父様が改めてフィレーダ侯爵邸を訪れてサインをすれば、この婚約はなかったことになる。

 解消、結婚の回避は確定となったため、わたくしの両頬は緩みきってますの……!


「さすがナディーヌ、お前の立てた作戦は完璧だった! これで、状況が整えば自由に動けるようになるなっ!」

「ええ、お父様。セヴラン様には、早く新しいお相手を見つけてもらいたいですわ」


 わたくしが快復した時、あの方に婚約者がいなければ復縁を迫られてしまいますものね。そんなを防ぐために、治った宣言をするのは婚約発表があったあと。

 それまでお屋敷から出られないのは、不満があるけれど――。そこを耐えれば、本当の愛、幸せを探せるようになるんですものね。我慢しましょう。


「あのような御方は、心変わりが非常速い。もしかしたら年内に、新たな婚約者が誕生するやもしれんな」

「流れは今、明らかにわたくしに来ていますもの。そんな要素も作用して、きっと早い段階でそうなると思いますわ」


 そんな予想は――大正解っ。なんとセヴラン様は8か月後年末に婚約を行って、わたくしは自由に動けるようなりましたの。

 とはいえ婚約直後に完治は不自然だし、診断書がありますものね。そこでそれから3か月後に完治を発表して、一週間後にある学院の同窓の会で公の場に復帰することにしましたの。


「学院の会には、高い身分の方が複数人参加される。……わたくしの美貌と巧みな話術を用いて、絶対に……っ。良いご縁を作りますわ……!」


 今度こそ、再始動。今度こそ多くの幸せを得て、エリザベットに勝ちますわ……!!

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