エピローグその2 嫌でも知ってしまう、正反対の未来 俯瞰視点

「どうしてぇ……っ。どうしてあの女だけが、あんなことになってますの……!!」


 済まないが、もうプレゼントはできないんだ――。でも、君への気持ちは変わらないよ――。これからも一緒に前へと進んでゆき、俺達ならではの幸せを見つけようじゃないか――。

 突然日常が変化し、1週間が経った頃。出席していた第3王子の生誕式典から戻ってきたナディーヌは、自室にあるベッドにピローを叩きつけていました。



 ジュスタンによってエスコートされていて、幸せそうに微笑み合っていたこと。

 結婚によって互いの愛は更に増え、領地では誰もが知る仲睦まじい夫婦となっていたこと。

 ジュスタンによってどんな時でも心身を護られ、眩しく輝く毎日を過ごしていたこと。

 いつのまにか王妃殿下のお気に入りとなっていて、王妃が主催するお茶会のメンバーとなっていたこと。

 学院時代以上に慕われ、より大きな輪の中心となっていたこと。



 同じく出席していた、久しぶりに会ったエリザベット。実際にその姿を見て、その場で噂を聞いて、自分とは正反対の人生を送っていると知りました。

 そのため怒りがこみ上げてきて、爆発していたのです。


「わたくしがこんなにも、苦労しているのに……! あっちは、あんなにもニコニコしていて……! 元凶のくせに、許せませんわ……!!」


 学院でエリザベットに出会わなければ、あんな感情は芽生えなかった。あの時目の前に居たエリザベットのせいだ! こうなっているのはあの女のせい!!

 ナディーヌはそう考えるようになっており、ギリギリと歯ぎしりを行います。そして強く強く胸の前で手を組み、天を見上げます。


「わたくしは自分勝手に動いただけなのに、こんなになってしまっているのだから……っ。その原因を作ったっ、人生を滅茶苦茶にした人にはもっと不幸が訪れるべきですものっ! 神様っ、どうかっ、どうか……っ。あの女に、苦しみを与えてくださいまし……!!」


 そうして呪詛を振り撒き、その時が訪れるのを待ちます。

 ですが――。それは理不尽な願い、逆恨みのため、いつまで経ってもそんな未来はやって来ません。


 エリザベットには、最愛の人と過ごす幸せな毎日が。

 ナディーヌには、興味のない人と過ごすつらい毎日が。


 いつまでも続いて、



 ライズネルト公爵家邸には、夫婦の幸せな声が。

 フィレーダ侯爵家邸には、夫婦の苦悶の声が。



 いつまでも、響くのでした――。




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