エピローグその1 嫉妬した者の未来、金に物を言わせてきた者の未来 俯瞰視点(1)
「うふふふふ。セヴラン様のお話は、いつも面白くてタメになりますわ」
「はははっ、そうかっ? 他のヤツにした時は、ウケが悪かったんだが――やはりナディーヌは違うな。よき理解者だ!」
フィレーダ侯爵家邸の2階にある、セヴランの私室。そこでは今日も、男女の笑い声が響いていました。
「こんな方のお傍に、生涯居られるだなんて。わたくし、幸せ者ですわっ」
自ら招いてしまった、究極の二択。ナディーヌが選択したのは、後者。『1年後にセヴランと結婚する』というものでした。
――お屋敷から堂々と出られない、社交界に出られないのは嫌だから――。
――興味がない人だけどあちらは深く愛しているし、地位とお金はあるから――。
――公爵夫人には劣るものの侯爵夫人は魅力的で、良い暮らしができるから――。
そういった理由で1年後に快復したと伝え、その日から4か月後に――半年前に2人は結婚。こうしてナディーヌとセヴランは、新たな人生を歩み始めていたのでした。
「そうかそうかっ。うんうんっ。俺と居られて、そんなにも幸せなのかっ」
「ええ。想像を軽々と超えてしまうほどに、幸せな毎日を過ごせていますわ」((だって、欲しいものはなんでも手に入るんですもの))
セヴランにとってナディーヌは、初めて自分を高く評価した人。そのため彼女を溺愛をしており、ナディーヌが望むものはなんでも買ってあげていたのです。
((興味のない人を持ち上げ続けて、一緒に暮らさないといけない。そんな重いデメリットはあるけれど――))
指輪が輝く指。高価なイヤリングが煌めく耳。それらに触れ、密かにクスリと微笑みます。
((以前よりも更に希少価値のある宝石を纏えるようになったし、伯爵家の人間を上から見下ろせるようになった。損得を考えると、そう悪くはない毎日ですわね))
こんなことなら、嘘を吐かずにすぐ結婚しておけばよかった。一年間も籠って、損をしてしまいましたわ――。
((うふふふ。これからも引き続き、損をしてしまった分を、取り返していきましょう))
彼女は今一度こっそりとほくそ笑み、引き続きセヴランに対して心にもない言葉を贈り続けます。
このようにナディーヌは、充実した日々を過ごしていますが――。彼女の見えないところでは、とある問題がじわじわと膨らんでいっており――
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