第17話 予想外と、選択~策士、策に溺れる~ナディーヌ視点
「……………………」
どうでしたの? 上手くいきましたの? フィレーダ侯爵邸から戻ったお父様にそう尋ねたわたくしは、エントランスで呆然と立ち尽くしていた……。
あの方、は……。ずっと……。一生涯、待つつもり…………?
「最低でも、1年。それが効いて、かなり揺れ動いてはいたのだよ……。だが……。お前が用意した、あのメッセージ……。それらが、セヴラン様に火をつけてしまったようだ……」
『わたくしは貴方様の幸せが、何よりの幸せでございます。ですのでどうか、わたくしのためにも、新たな道をお進みください』
そん、な……。
後押しをするために、用意したものが……。維持する原動力になってしまうだなんて……。
「あの目…………セヴラン様は今まで以上に、お前は強く愛するようになってしまわれている……。したがって、持久戦に持ち込んでも変わらないだろう……。例え5年、10年会えずとも、待ち続けるだろう……」
「………………」
「すまない、ナディーヌ。あのようにお伝えし、診断書も偽造し、お前の容態を世間に言い広めてしまった以上、今更仮病とは明かせないのだよ」
「………………。そ、それは……。つまり……」
「……ああ。『ずっと屋敷内で暮らす』、『1年後以降にセヴラン様と結婚する』。この2択を、選ばざるを得ないのだよ……」
わたくしは信憑性を持たせるために、書類の偽装を頼んであちこちにこの件を広めてしまった。そのせいで、嘘とは言えない状況になってしまった……。
「い、いや……。いや、ですわ……っ。どっちも嫌ですわ……!! お父様っ! なんとかしてくださいましっっ!!」
「……お父さんも、出来ることなら防ぎたい。だが嘘だと明かせば書類偽造偽装の罪に問われ、関係者全員が社会的な信用を失ってしまう。そちら以上に過酷な未来となってしまう故に、それは不可能なんだよ……」
お父様は脱力して天を仰ぎ、それを見たわたくしは崩れ落ちてしまう。
無理、確定。こんなことに……。なってしまうなんて……。
「……ナディーヌ……。必ず、どちらかを選ばなければならないのだよ……。どう、する……」
「わ、わたくしは……。わたくしは……」
わたくし、は………………
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