第16話 そんな…… ~嘘をついていた者がつかれる嘘~ セヴラン視点
「幸いにも命に別状はないようですが、専属医より『絶対安静』という指示が出ておりまして。セヴラン様と再びお会いできる時期は、まったく目途が立っていないのでございます」
「………………」
ナディーヌの代わりに降りてきた、ミレネア卿。屋敷内の応接室にてその詳細を聞き、俺は言葉を失っていた。
昨夜までは元気にしていたのに、こんなことになってしまうだなんて……。嘘のような話だ……。到底信じられない話だ……。
だが、ナディーヌもまた、俺を深く愛してくれている。嘘を吐く理由などないのだから、真実なのだ……。
「卿……。間違いなく、命に別状はないのだな……?」
「はい。そちらは、断言できるそうです。ですが……どんなに早くても、1年以上はかかるだろうと…………」
「い、いちねん、いじょう……」
「……ですので……。娘は……。『自分のことは忘れて、新たな道を進んでいただきたい』と申しておりまして――」
「冗談じゃない!! 忘れられるものか!!」
ナディーヌは、俺の最高の理解者なんだっ。彼女以外は考えられない!
だが……。反射的に、叫んでしまったが……。
((早くて、1年以上。もしかすると、2年3年も会えない可能性がある……))
もしも、そうなった場合は……。いや……っ。それなら、まだいい。いつまでも会えないとなったら、俺の人生が大変なことになってしまう……!
「セヴラン様、娘へのお気持ち痛み入ります。……あの子はそういった内容を仰っていただけると、確信しておりまして……。もう一つ、メッセージを預かっております」
ついぞないレベルで……。心が激しく揺れ動いていたら、無視できないものがやって来た。
メッセージっ!? 何なんだっ!?
「教えてくれっ! 彼女はなんと言っていたんだ!?」
「『わたくしは貴方様の幸せが、何よりの幸せでございます。ですのでどうか、わたくしのためにも、新たな道をお進みください』。あの子はそう、祈るようにして、口にしておりました」
ナディーヌ……っ。君という人は……!
「言わずもがな、そちらは娘の本心でして……。あの子は貴方様の人生が狂ってしまわれることを、何より恐れております。どうか……ご決断を、お願い致します」
「…………ナディーヌ……っ。ナディーヌ……っ! 君の気持ち、しかと受け止めたよ……!!」
「セヴラン様、感謝いたします。では、娘との婚約は――」
「ああ。ミレネア卿」
俺は感涙を流しながら拳を握り締め、前方へと大きく頷いた。
ナディーヌ。そんなことを言われたら、こう返事をするしかないじゃないか。
「婚約は、一生涯維持する。俺はナディーヌが快復するまで、いつまでも待つ!!」
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