第14話 待ち遠しかった時間は セヴラン視点
「ああ、ナディーヌ……っ。早く、君に会いたいよ……!」
午後1時51分。自室の壁にてそう示す時計を眺め、最愛の人の姿を思い浮かべていた。
ナディーヌ・ミレネア。彼女に出会って、俺は真の愛に目覚めた。
((……まさか……。こんなにも俺を、正しく理解している人が居ただなんて……!))
俺はこれまで『金しかない無能』、そう陰口を叩かれていた。実際は違うのにだ! 多くの才と優秀な頭脳を所持しているのにだ!
だが、ナディーヌは違った。彼女は類まれなる容姿を持つ上に、
「こんなにも素敵な方がいらっしゃっただなんて……っ。今日ほど自身の無知を痛感した夜はございません」
などなど。俺の持つ数多の長所を即座に見抜き、絶賛を繰り返す。本心で俺という人間に心酔し、男であり人として尊敬できる方、と感嘆の吐息をもらしたのだ。
――だから、そうなるのは必然的だった――。
((彼女以上の理解者はいない……!! 彼女以上に、共に居て心地よい者はいない……!! 俺達の相性は、完璧。真に愛するべきは、ナディーヌ・ミレネアだったんだ……!!))
その夜俺は『真実』に気付き、偽者――勘違いによって最高の相手と思い込んでいたエリザベットとの縁を、金を使って即座に切った。
そしてその翌日から本格的にナディーヌとの交際が始まり、最高の理解者なのだから、そうなるのもまた必然。時間に比例して俺は更にこの人に惹かれてゆき、今ではすっかり――
彼女なしの人生なんてあり得ない。
――そう感じるほどに、必要不可欠な存在になっていたのだ。
なので今日も窓からナディーヌの到着を待ち、おおっ! 2時――約束の時間丁度に、ミレネア家の馬車が到着した。
そこで俺はすぐさま階段を駆け下りて飛び出し、満面の笑みで出迎え――
「ぇ……?」
――出迎えようとして、固まる。
なぜなら……。馬車から出てきたのは、ひげもじゃの男――。ミレネア家当主、ジャンだったのだから……。
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