第3話 わたくしは、知っている ナディーヌ・ミレネア視点

 それは今から、およそ1年前――。セヴラン様がわたくしのもとに、婚約を解消したと報告しにいらっしゃられた時の出来事。

 その際にセヴラン様から、と~っても愉快なお話を伺いましたの。



「婚約解消を切り出した時のエリザベットの顔は、傑作だった。ものすごい勢いで青ざめて、即座に泣き付いてきたのさ」


「あの恋の始まりはオレからだったが、アイツはすぐオレ以上に相手を愛するようになった。『私にお声をかけてくださりありがとうございます』『セヴラン様のお隣に居ることができて幸せです』、などなど。いつもこんな調子で、俺に依存しきっていたんだ」


「だから、あの有様。顔を涙まみれにして縋って、必死に『考え直してください!』『なんでもいたしますからぁぁぁぁっ!』と懇願していたよ」


「だがオレにはもう、ナディーヌがいるからな。無様に掻きついてくるエリザベットを払いのけ、その汚い面に慰謝料すべてを思い切り投げつけて、ここに来たのさ」



 これがその日、ニーエイル伯爵家邸で起きたこと。


 好意がなかった?

 あっさりと別れた?


 じゃあこれらは、なんなんですの?

 あらあらぁ? おかしいですわねぇ?


((あれ? これは、どういうことなのかしら……? え~と、え~とぉ。ああっ、そうですわっ))


 好きじゃないよ。悔しくないよ。

 それらは、この事実によってあっさり崩壊する。


 そういうことになる、ですわね。


((負けを認めたくないからと、ここまで必死に捏造するだなんて。……そんなにも懸命なお姿を見ていたら、徹底的にやりたくなってきましたわぁ))


 だ・か・ら。これから更にドンドンと追及していって、ドンドンと否定して差し上げますわ。


((エリザベット。追い詰められて、やがて認めるしかなくなって、バレてしまって悔しさ全開で怒りだす姿。それらをしっかりと、楽しませてくださいまし))

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