第4話 そんなことを仰られていたのですね エリザベット視点
「…………そうでしたか。フィレーダ様は、そのようなことを仰られていたのですね」
『婚約解消を切り出した時のエリザベットの顔は、傑作だった。ものすごい勢いで青ざめて、即座に泣き付いてきたのさ』
『あの恋の始まりはオレからだったが、アイツはすぐオレ以上に相手を愛するようになった。「私にお声をかけてくださりありがとうございます」「セヴラン様のお隣に居ることができて幸せです」、などなど。いつもこんな調子で、俺に依存しきっていたんだ』
この方が、好意なしを否定した理由。そちらをお聞きした私は、またもや呆れによる脱力感に見舞われていました。
関係者がその場にいなければ、なんでも言えてしまいます。反論されないからという理由で、捏造のオンパレードとなっていたようですね。
「……思い返せば。フィレーダ様は、そういった方でしたね」
『オレは大きな力を有し、圧倒的な覇気を纏っているからだろうな。あの大公閣下ですら、オレの姿を見たら背筋を正すんだぞ』
『この男が本気を出したら、きっとワシであってもあっさり敗れるだろう――。お話を伺っていると、ある時そう漏らしたんだよ。さすがは閣下。よく分かってらっしゃる』
などなど、婚約時も似たようなことが何度もありました。
あの方は自分を上げるために、しばしばあり得ないようなお話を堂々と出す。俗にいう、虚言癖があったのです。
……1年以上交際をされていたのですから、そういった面を御存じなはずですが……。まさか信じてしまう方がいらっしゃるとは、驚きを禁じ得ません。
「あらあら、まあまあ。その苦い顔。『真実を知られていた!』と、お焦りなのでしょうか?」
「いえ、そうではございません。フィレーダ様の発言全てを信用されていらしたので、こういった表情に――」
「それこそが、『そうではございません』ですわ。そちらが正解、なのですわよね? エリザベット様、正直にお答えくださいまし」
……困りました。この様子ですと、いくら私が否定をしても認められないでしょう。
((途中になっている移動を始めたいので、そろそろ諦めて頂きたいものです。……こちらが折れて、話を合わせるわけにはいきませんし……。こういった方にそうしていただくには、明確な証拠が必要ですね……))
何かしら、納得していだけるものはなかったでしょうか?
急いでそちらを探し始め………………よかった、ありました。ですので私はそちらを、お伝えすることに致しました。
「ミレネア様、そちらはフィレーダ様の捏造でございます。理由は――」
「あらあら、上手い言い訳が見つかったのでしょうか? 一応、お聞きしますわ。そちらは、どのようなものなのでしょうか?」
「私が捏造だと断言する理由。そちらは、フィレーダ様が婚約を解消された時、私はその場に居なかったからですよ」
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