第11話 関係者のその後~リゼットの両親・マクシム&ルネSide~ 俯瞰視点

 テリエール子爵家の当主マクシムと、夫人のルネ。2人は贅沢を好み、高級レストランテや宝石店などでその姿をよく目撃されていました。

 ですが2人の目撃情報は、半年前――。テリエール家で大きな出来事が発生した5日後を境に、ピタリと途絶えていました。


「聞きましたか? あのお話」

「ええ。リゼット様が、お家を出られたそうですわね」


 娘が家を去る。しかもその人が隣国で養女となり、侯爵家に嫁いだ。

 その噂はあっという間に広まり、


「これは……」

「そう、ですわね。当主ご夫妻に、相当な問題があったようですね」


 縁を切ったあとのリゼットの待遇により、『マクシムとルネに原因がある』が貴族界での常識となっていました。

 そのためあっという間に2人は白い目を向けられるようになり、やがては会話をしてくれる人もいなくなってしまいました。それによってマクシムとルネは公の場などに出たくても出られなくなり、


「……ぁぁぁぁぁ……!!」

「……ぁぁぁぁぁぁ……!!」


 今日もお屋敷の中で、頭を抱えて呻いていたのでした。


「あの時、あんなことをしなければ……。リゼットを利用しなければ……。こんなことには、なっていなかったのに……!」

「また、あの日々を過ごしたい……。あの頃に、戻りたい……。やり直したい……!」


 すっかり痩せ、一回り老けたように感じるマクシムとルネ。公務以外では外出できなくなってしまった、マクシムとルネ。

 2人はすっかり常套句となってしまったものを零しますが、


 もう、どうにもなりません。


 彼らは娘を道具のように扱っていた代償として、生涯暗い人生が続いてしまうのでした――。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る