第8話 7か月の間に起きていたこと 俯瞰視点(1)
「ドニ・リートアルが嘘を吐いている、ですか?」
「はい。驚いていて、気付けなかったのですが……。思い返してみるとあの時は、2回瞬きを――彼が嘘を吐く際にする癖が、出ていました。ですので恐らくは、強引な方法で関係を絶ったのだと思います」
「なるほど……。あの男なら、やり兼ねませんね」
「……わたしのせいで、リゼット様が傷ついてしまった……。わたしは、酷いことをしてしまいました……」
「そちらは、シルヴィ様の責任ではありませんよ。ですが、放っておけない問題ではありますね。何かしらのフォローが出来ればよいのですが……」
切っ掛けは控え室を去ったあとの、そんなやり取りでした。それによって2人は『リゼットに出来ること』を考え始め、ですがシルヴィとラファエルは権威あるコンテストで最高賞を受賞したばかり。取材などがあってすぐには動けず、そんな時でした。
「兄さん。俺が様子を見てきて、何かできることはないか調べてくるよ」
獅子のような頼もしい顔と雰囲気を持つ、2歳年下の弟リアム。彼が、協力を名乗り出たのでした。
「それは助かるのだけれど……。わざわざ隣国に、構わないのかい?」
「弟からの、受賞と婚約祝いさ。それにちょうど数日間暇で、どこかに旅行でもって思ってたんだ」
ラファエルとリアムは仲の良い兄弟であり、リアムはそんな兄の婚約を喜んでいました。そのため気を遣わせないよう理由を作り、兄と義姉の不安を取り除くべく翌々日ルーフェ侯爵邸を発ちました。
そうして隣国『サッズ』に着いたリアムはテリエール子爵邸へと直行し、事情を説明してリゼットに接触。邸内にある応接室にて対話を行い、そうして本人の口から真実を――義姉シルヴィの予想通り、同意や応援は真っ赤な嘘だと把握したのでした。
((ドニという男には、まだ評価が下がる余地があったなんてな。困ったヤツだ))
本人に説明すらしない婚約の解消。金での解決。興味がなくなった途端に吐かれた暴言。
それらに呆れ、その身勝手を認めた当主夫妻――リゼットの両親にも呆れ。それによってリアムは個人的にも――兄や義姉を安心させるためではなく、自分の意思でも何かをしたいと思うようになりました。
そして――気持ちの変化は、もう一つありました。
『なんとかしたい』
そのためリアムはリゼットと更に会話を行い、そうしているうちに、更なる感情が芽生えることになるのでした。
ソレの名前は、好意。成長すれば、『恋』という名の花を咲かせる芽で――
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