第5話 ………… ドニ視点(3)

「ドニ・リートアル様。敢えてもう一度、言わせていただきましょう。貴方のソレは、シルヴィ様に『自分』を押し付けているだけなのですよ」


 何も言い返せなくなり、歯がみをしていたら……。またっ、まただ……‼

 俺の血圧を跳ね上げるような言葉が飛んできた。


「ですので僕は先ほど、否定すると口にした。そんな貴方では誰よりも幸せになどできないと、言わせていただいたのですよ」

「そっ、それは! 違うっ、違います!!」


 誰よりも幸せにできないだって? まさか!! 冗談じゃない!!

 シルヴィの『1番』は、ここにいる俺! ドニ・リートアルと決まっているんだ!!


「お言葉ですがっ!! ええ、認めましょう!! そちらに関しては、抜け落ちてしまっていたと認めましょう!! ですが問題点はそこだけっ、その部分だけがそうだっただけです!! 俺にはしっかりと、大きく太く強い、真の愛があって――」

「『決めつけ』、『強引』。これらが僅かでも含まれてしまった時点で、全ては独りよがりへと姿を変えてしまいます。そんなものは、真の愛とは呼べませんよ」


 な……。

 呆れ。ただただその感情だけを宿した瞳が、注がれた。


「相手の感情を無視して進む道に、大きな幸せが待っているはずがありません。その先にあるのは、人生の崩壊と破滅。自身だけではなく強引に引っ張った相手までもを巻き込み、多くのものを失ってしまうのですよ」

「ちっ、違うっ! だから違う!! 幼馴染の俺は正しい道を知っている!! シルヴィは分かっていないからっ、手を取って導こうとしているだけなんだ!! ラファエル様っ!! シルヴィを想うならっ、手を引き俺に任せていただきた――」

「想っているからこそ、引けません。シルヴィ様自身が拒否をされている、理不尽な貴方様になど任せられませんよ」


 その言葉を、切っ掛けとにして……。目の色が、完全に変わった。

 さっきまでたっぷりとあった呆れは全てが消え去り、瞳には大きな怒りだけが宿るようになって――

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