第5話 ………… ドニ視点(1)

「ラファエル様っ。どうしてこちらに……?」

「約束をした時間になってもいらっしゃらず、不審に思い動いてみると中から大声が響いていました。ですので無礼と承知で、このように行動させていただいたのですよ」


 ラファエル様はシルヴィに対し柔らかく目を細め、こちらに視線が向くと――っっ! 目付きに、静かな鋭さが含まれるようになった……。


「同様に無礼と重々承知ではありますが、状況を鑑みて聞き耳を立てておりました。ですのである程度の状況は、把握しております。レディへの妨害、大声は、紳士の風上にも置けませんよ?」

「ぶ、部外者の介入こそ、風上に置けないと思いますよ? こちらの問題は、我々の問題でございますので。お引き取り願います」

「それは、出来かねますね。シルヴィ様に会話継続の御意思はないようですので、ここから先はこの僕が、お相手をさせていただきましょう」


 ラファエル様はシルヴィを一瞥し、くっ。「室外に護衛がおりますので、彼らと共にお待ちください」とシルヴィを外に出し、二人きりの状況を作られてしまった。


「……これで、貴方様にのみ聞こえるように喋れますね。早速ですが、ドニ様。先の言葉を否定させていただきましょう」



『ということはっ、ラファエル様はシルヴィの好意に気付いているはずだ!! にもかかわらず、『待つ』。それはあり得ない! なぜなら俺ほどにシルヴィへの好意があるのであれば、気付いた時に想いを告げるのだから!』


『俺以上に愛を持っていない者が、俺以上に愛せるはずがない!! 俺以上に愛せない男が、俺以上に幸せにできるワケがない!! だから俺の言い分は全てが事実で、あんな男よりも遥かに多い幸福を与えられる』



 ヤツは、これらを否定すると言い出した。


「これらは……敬意を著しく欠いてはおりましたが、事実だと確信しております。否定などできないと思いますが……?」

「いえ、それができてしまうのですよ。なぜなら――貴方は、自分のことしか考えていらっしゃらない。シルヴィ様のことを、思い想いを、何一つ考えていないのですからね」


 ……は? 俺が、シルヴィのことを考えていないだと? この幼馴染の俺が、最愛の人を考えていないだと?

 バカ言え! そんなはずがな――

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