第3話
そう思いつくと、小暮の頭の中にはそれしか残らなかった。
身体能力は成人男性でも上の方だ。
格闘技も子供の頃からたしなんでいる。
そして手には見るからに武器として使えそうな先のとがった枝がある。
ここから生きて帰るにはそれしかないんだ。
小暮は心に強くそう思った。
――だとすると、その前に……。
小暮は戦いに備えて少し休むことにした。
山の中を結構な距離、走っている。
体力を回復しておかないと、いざという時危ない。
小暮はそのままくぼみの中にいた。
目を閉じて、耳を研ぎ澄まして。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
小一時間ぐらいはくぼみの中にいたと小暮が感じ始めた時、何か音がした。
それは足音だった。
それも複数。
誰かが近くを歩いているのだ。
――やつらか。
小暮は息を殺し、五感を集中させた。
すると小暮のいるくぼみの前を、三人の魚人が通り過ぎた。
三人とも小暮には気づいていないようだ。
三人はそのまま歩いていたが、少し先で止まった。
木の陰から小暮が見ていると、三人はなにかを話しているようだ。
声は全く聞くことはできなかったが。
小暮が見ていると、一人がその場に残り、二人は先に向かって歩いて行った。
残った一人がこちらに向かって歩いてくる。
――気づかれたか?
しかしそいつは少し歩いたところで小暮に背を向けて何かをし始めた。
――小便?
それはどう見ても立ち小便をしているように見えた。
小暮はゆっくりと足音を消して歩いた。
それは山の中ではたやすいことではなかったが、前に格闘技の師匠から足音を立てない歩き方を教わって練習していたことがあったので、それを実践してみた。
全く無音というわけにはいかなかったが、小暮は目の前の魚人に気づかれることなく後ろに立つことができた。
――!
小椋は手にした枝を思いっきり魚人の背中に突き立てた。
固く鋭い先は、魚人の胸から飛び出した。
枝を抜くと、魚人は何も言わずにその場に倒れこんだ。
見れば大量の血を流している。
しばらく見ていたが、ピクリとも動かない。
どうやら死んだようだ。
――一人やった。とりあえずあと二人。
小暮は小走りで二人が歩いて行った方へ向かった。
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