第2話

――やっぱり廃村なのかなあ。

しばらく考えていた小暮だが、いったん車まで戻ることにした。

そしてもうすぐ車と言うところで、小暮は見た。

車の手前に四人の人影があった。

その四人は首から下は普通の人間なのだが、首から上がまるで違っていた。

突きだした小さな歯がある口、左右の両端にある大きな目。

質感と言いそれはどこからどう見ても、魚の顔だった。

――うそっ!

そして四人とも手には鎌や鍬といった農作業用の道具を持ち、おまけに小暮を見ると、小暮に向かって歩いてきた。

鎌や鍬を高くかかげながら。

――ひえっ!

小椋は四人に背を向けて走った。

しばらく走るとカーブを曲がった先に、同じく魚の頭を持つ者が五人いた。

その五人が先ほどと同じように、鎌や鍬を高くかかげながら、小暮に向かって歩いてくるのだ。

――えええっ!

小暮は道をそれて山の中に入り、そのまま走った。

幸い体力には自信がある。

小暮は走りながら何か武器になるものはないかと探した。

そして慣れない山の中を走ってさすがに疲れを感じてスピードを落とした時に、偶然見つけた。

それは折れた枝。

太さも長さも野球のバットくらいで、一方が斜めに避けて先が鋭くとがっている。

それはまさに槍のような形状だった。

小暮はそれを拾って歩き出した。

――とにかく車まで戻らないと。

少し歩くと段差があり、そこには小さなくぼみがあった。

くぼみの前には太い木が生えていて、くぼみの中が少なくとも前からは見えないようになっている。

小暮はそのくぼみに体を沈めた。

くぼみはちょうど小暮の体にぴったりの大きさだった。

――で、どうしようか。

小暮は考えた。

考えたが恐怖のためか考えがまとまらない。

あれやこれや浮かんできては消える。

そんな状態の中、一つの考えが浮かんできた。

――魚人は見たところ九人いたな。それ以上いるのかどうかはわからないが、できるだけ多く倒して数を減らし、隙を見て車に戻って逃げよう。

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