朝 こけこっこ 起きないとつんつん
昨日は夜勤で、巡回中に色んな事があった。
僕たち
だから夜の巡回では酔っ払いにひったくり、
夕べも路上で寝込んだ酔っ払いをなだめすかして住所を訊いてなんとか家まで送り届け、ケンカの仲裁をしたついでに怪我の手当てもして、スリの被害に遭った人の調書を取って……ふと気がつけば、コーヒー一杯飲む間もなく夜が明けていた。
相棒のエサドと一緒に報告を済ませて日誌を書いて、服も替えないままベッドに倒れ込むようにして眠ったのが六時ごろ。
ついさっき目覚めた時に時計台の鐘が八回鳴っていたから、今すぐ食堂に行けば何とか朝ごはんが残っているかも。
顔を洗おうと井戸まで行くとアギーミツが飛びついて来た。彼は黒と黄金色のふわっふわの羽毛におおわれた大きな雄鶏だ。ひょんなことから巡回中の僕についてきてしまって、そのまま連隊本部に居ついている。
しばらく首の付け根あたりを撫でてやっていると、朝の訓練を終えた従騎士のエドンとドレインがやって来た。師匠のエサドはまだ眠っているそうだ。
疲れきっている師匠を起こすのは忍びないのだけれども、このままでは朝食を食べそびれてしまう。
心配気に表情を曇らせる二人に「任せておいて」と安請け合いしてエサドの私室に向かった。アギーミツは当たり前のような顔? をして僕の頭の上に乗っている。
「アギーミツ、最近ちょっと食べすぎじゃないか? 重くて首が痛くなりそうだよ」
「こっこっこっ」
「いたたたた、悪かったよ。謝るからつつくなよ」
頭の上の重さについぼやくと、抗議するように短く鳴きながら脳天をつついてくる。
寮に戻ってエサドの私室をノックするが、案の定全く反応がない。よほどぐっすり眠っているのだろう。
何とも平和なことだが、このままでは朝ごはんを食べそびれてしまう。
さて、どうしたものか。
コケコッコー!!!
思案する僕の頭の上で、突然アギーミツが
「声大きすぎるよ、耳痛くなっちゃった……」
小さな身体に似合わぬ大音量で、耳も頭も痛くなってしまった。
涙目で上を見ようとすると、彼は何食わぬ顔でばさばさばさ……と僕の頭から飛び立って、エサドの部屋の扉に体当たりした。
「いたたたた、うわ、どうしたんだこれ」
そしてあっさり開いた扉から中へと飛び込んだかと思うと、半分くらい寝ぼけたようなエサドの声がする。
恐る恐るのぞいてみると、エサドの頭に乗ったアギーミツがせっせとその黒い髪をついばんでいるところだった。
「アギーミツ、エサドの頭はミミズじゃないよ。朝ごはんあげるからそのくらいにして」
なんだか毛がだいぶ抜けているような気がしてきたので慌てて止めると、アギーミツは得意満面で僕の頭にまた乗って来た。
「コケコッコー!!」
とても偉そうな声で鳴いているのは勝ち誇っているつもりなんだろうか……
「こら、こんの野良ニワトリ! いい加減にしないと羽根をむしって焼き鳥にするぞ!!」
「コッコッコッ、コケーッ!!」
おそらく口論しているのであろうエサドとアギーミツ。どうでもいいけどすさまじくうるさい。
「二人とも、いい加減にしないと朝ごはん抜きになるよ? あと、近所迷惑だから静かにしようね」
ひくひくと口許が引きつってる気がするけど、何とか笑顔を作って言うと、何故か二人? ともおとなしくなった。
結局、大慌てで食堂に行くとまだ少しだけ残っていた
「それじゃ、今日は非番だからちょっとテルマエでひと風呂浴びて来る。起こしてくれてありがとな」
「お礼ならアギーミツに。結局僕は何もしてないから」
「コッコッコッ」
食堂を出たところでテルマエに行くと言うエサドと別れることにした。
起こしたお礼を言われたのだけど、実際に起こしたのはアギーミツだと思う。
「さて、僕たちも散歩に行こうか」
「コケーッ」
「もしかしてずっと頭に乗っていく気?」
「コッコッコッ」
頭上のぬくいふわふわはどうやらそこから降りるつもりはないらしい。
仕方がないのであさの光に照らされて白く輝く街に向かって僕も足を踏み出した。
※うちのショタ(末っ子)が「あさ こけこっこ おきないとつんつん!!」と兄をつついて起こす顔が以前ヨギリさん(https://twitter.com/tane_hanashi_No)からいただいたFAそっくりだな~ という思い付きから書いたSSです。
こちらにはとっくの昔に掲載したつもりが、なぜかpixivにしか載せていませんでした(平謝り)
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