ヒロインなあたしと前世のあたし

※イジメや流血表現が出てきます。苦手な方はご自衛ください。

※上の子の同級生の言動を元に作ったキャラなので嗜好や流行が少し古いですがそこは死んでから転生するまでのタイムラグという事で。

※どこぞのスピ指導者みたいな話がちらっと出てきますが、きっと酷似した別人28号です。


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 マイヒャとコノシェンツァを早くもう一度攻略しなくっちゃ。

 気持ちは焦るのだけど、こいつらなかなか一人きりにならない。

 特にここ数日はどちらもヴィゴーレの奴とべったりで、あたしが近寄る余地すらない。やっぱりあいつが悪役令嬢というか、偽聖女になったんだと思う。


 あたしの知ってるストーリーはもう壊れてしまって、別のゲームがはじまってる

ような感じがする。

 だとすると、攻略情報とか全然わからない。これから一体どうすればいいんだろう?


「女神様に相談してみたら?この世界に君を連れてきたんだから、責任を取ってもらわないと」


 ふとヴィゴーレの言葉が頭をよぎる。

 そうだ、女神様に相談しなくっちゃ。でも、どうやって?


「神殿で祈ってみるとか。色々試してみたら?」


 奴の言う事を聞くなんてムカつく。でも他に方法が思いつかない。

 あたしが女神様に直接会ったのって、この世界に転生してくる前のことだった。


 前世であたしが死んだのは十一歳の時。まだ小学生だった。


 あたしはクラスみんなの憧れの的だった。

 エンスタは男も女もたくさんの人がフォローしてくれて、毎日たくさんのいいねをもらった。

 ラッキーちゃんやさちこちゃんみたいにいつもキラキラ愛され女子でいたい。だからエンスタライブでもようつべでも、子宮理論はしっかり勉強していつだって自分らしさを発信してた。


 先生たちだって頼りにしてて、あたしのおかげでクラスのイジメゼロ! 勉強なんかしなくても成績トップ!! 運動会のクラス対抗もうちのクラスだけぶっちぎり!!

 全部ぜんぶぜ~んぶ、リーダーのあたしのおかげっ!!

 そんな日々がずっと続くはずだったのに、終わりは唐突に訪れた。

 エンスタやフェイスノートのコメ欄には目を覆いたくなるような悪口が並ぶ。


 『ロリビッチ』『キモイ』『いくらで俺とヤッてくれますか』『人殺し』


 あたしは何も悪くないのに。学校に行っても誰も話しかけてこない。あたしをほめてくれる人はもういない。

 まるでゴキブリでも出たみたいに嫌な顔をしてコソコソ悪口ばっかり、やだなことばっか。どこにも居場所なんてない。


 だから学校にも行かなくなった。もちろん家の中にも居場所なんてない。

 仕方がないのでひたすらゲームをしていた。もはやスマホでやるゲームだけがあたしの心のよりどころ。


 乙女ゲームの中では素敵なイケメンがあたしだけを愛してるって甘い言葉をささやいてくれる。だからあたしはゲームにのめりこんだ。

 その中でも『素顔のままの君に星を願う』というゲームはヒロインをイジメる悪役令嬢を追い詰めていく過程がすごくスリリングで、うまく詰めれば詰めるほど悪役令嬢が悲惨な結末を迎えることでどんどんのめりこんだ。


 他の乙女ゲームには競い合い認め合う「ライバル」はいても断罪される「悪役令嬢」はいないことが多いけど、このゲームは徹底して「邪魔者」はヒロインにミジメにやっつけられる「悪役」だ。

 だからこそ甘ったるいお友達ごっこがダルい他のゲームと違って何回やっても面白い。


 そうやってゲームにのめり込んでいるうちにも月日は流れていき、三月も終わりの終業式の日が来た。


「あんた学校に迷惑だから終業式終わった後でいいから荷物だけ取りに行って」


「なんでそんなダルいことしなきゃなんないのよ」


 苛立たし気に言うお母さんに文句を言うと、ため息ついて呆れられた。


「春休み中ずっと置いておくわけにいかないでしょ。それとも全部処分してもらうの?」


 そう言えばいきなり学校行かなくなったから、机やロッカーの中の荷物がそのままだった。お気に入りの文具セットやノート、コームとか全部置きっぱなし。限定品のマスコットとかもあったよね。

 けっこうこだわって集めたものばかりだから捨てちゃうのはちょっと惜しい。


 仕方がないので午後誰もいなくなってから取りに行くことにした。

 マンションの玄関を出たあたりで幽霊みたいなジジイが立っていた。ボサボサの脂ぎった髪に落ちくぼんだ目、不健康にどす黒い顔色。

 そいつはあたしを見るやいなや、鬼みたいな顔で迫ってくる。

 怖いと思った時にはそいつはあたしに勢いよくぶつかってきて......

 あたしはお腹のあたりがすごく重くて痛くなって、ぐいっとひねられて、何かが抜けたかとおもったらまた別のところが重い感じがして……

 そこからものすごく熱くなって手足が重く冷たくなって......


「ぎゃはははは、ざまあみろ!!おまえのせいで俺は終わりだ!!お前も終わりだ!!」


 狂ったように笑う男の声。そういえばこいつのつけてるタイピン、あたしと一緒に買ったやつだ。ただのセフレのくせに彼氏気取りで面倒くさいオッサン。

 黙って貢いでいればイイ思いさせてやったのに、なんでこんな……


 あたしの意識はここでいったん途切れている。

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