夢幻の使者

@hayakawa7

第1話 「夢幻」

 大街道の路肩には大小さまざまな露店がひしめき、売り子の呼び声が飛び交う。

呼ばれるところである娘たちは皆、一張羅の着物を着て髪を結いあげ、露店を冷やかしては甲高い笑い声をあげる。店から店へと身を移す姿は、まるで花をえり好みする蝶である。

 彼女たちが見ているのは、髪飾り、首飾りといった装飾品から口紅などの化粧品、花の香りの匂い袋。どの露店も共通して身を飾る道具を売っている。どこぞの呉服屋が出張店舗と称して反物を売っているが、そこだけはあまり客が入っていないようだ。

呉服屋の出張店舗を除けばどこの露店も大入り満員、この大街道には今、国中の年頃の娘が詰めかけているのではないかと思うほどの賑わい具合だ。

有名な役者が舞台の宣伝のために山車にのってこの大街道をするらしく、彼を一目見ようとした娘たちが詰めかけた結果、このような事態になっている。路肩の露店はみな、役者の前で少しでも美しくありたいと思う娘たちをいいカモにしようと集まってきたのである。

役者が乗った山車が通るために、大街道の真ん中に花道を作って通行止めにしているのもまた、娘たちがぎゅうぎゅうになっている要因だろう。

 浮かれた空気に包まれた大街道の片隅で、黒は本日何度目かのため息をついた。

黒の前には

 

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