第10話「サマーフィルムにのって」

 女子高生が仲間とひと夏に映画を作る。はつらつとした若さのエネルギー、ハダシ、ビート板、ブルーハワイと呼び合う三人の固い絆、、チームワーク、恋愛、悩み、絶望を乗り越えて映画を完成させる覚悟がしっかりと伝わってきた映画であった。

 監督のハダシは、時代劇に一途な愛情を抱いている。ハダシと親友達との隠れ家には、いたるところに時代劇のポスターが貼られ映像類もごまんとあり、まさに時代劇に埋没されている。可愛らしいハダシと勝新太郎のポスターのギャップが、ハダシの魅力を倍増している。新作を撮りたいのだが、主人公のキャスティングにこだわり、ようやく意中の男子、凛太郎を見つけ口説き落とす。

 映画は、荒唐無稽に展開する。録音・照明のスタッフが、〝あいつだな〟と思った通りに決まり撮影はスタートする。ハダシは、脚本に何回も手を入れ細かい演出にこだわりながらも撮影は順調に進む。そしてある日唐突に凛太郎は未来から来たと言う。また未来には、映画がないと言う。愛してやまない映画がなくなる、ハダシは、映画を撮れなくなる。

 ハダシは、映画を作る喜びと映画を守ることに意を決して撮りあげる。同じ映画部の大嫌いな女子監督が作る、キラキラ映画の撮影に協力したり、二人とも深夜まで編集する姿を見てジャンルは違えどもお互いの映画愛に共鳴していくシーンは、爽やかですがすがしい。

 文化祭、映画はついに上映される。いよいよクライマックスという所で、ハダシは、フィルムを止める。時代劇らしからぬ決着をつけないエンディングであったが、ハダシは、その場でラストシーンを変更する。もうフィルムは回さない。体育館でハダシと凛太郎の殺陣が始まる。この決着、殺陣のシーンは、「未来に映画を存続させる」というハダシの強い映画愛の覚悟から、未来と決着をつけるラストシーンなのだ。ラストシーンの映像は、迫力があり、ハダシの殺陣は美しかった。ハダシが一途に時代劇愛、映画愛を貫く想いは、未来を必ずや変えたと信じたい。

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