第4話アオ

「アオ……あの、アオさ~ん……」

「………………」

聞こえていないのか返事をしたくないのか黙々と掃除、洗濯の任務をこなしている。

一人前扱いされるのは嬉しいのだが、俺のおもりを任されて心中複雑のご様子、

とにかくアオは今日もご機嫌ななめだ。

俺はというとリハビリ継続中、杖なしで歩ける様にはなったがまだまだ岩場を自由自在にとはいかず、ばあさんの許可はおりていない。

お留守番三人組以外は相変わらず食料を求めて出ずっぱりだ。ここにいると冷蔵庫と

いう物はスゴイ発明品なのだとあらためて感じてしまう。冷蔵庫だけではなく家電、

そもそもの所の電気を利用する発想が、俺ごとき凡人脳では意味不明すぎる。

以前、人類最大発明の筆頭と言われる電気の歴史について調べたことがあったのだが

肝心な所が抜けている感じがしてもどかしく思ったことがある。

そんな理由で電気技術の発明は宇宙人関与説に一票です。


 ある日、俺とアオはばあさんに呼び出された。アオに何か話しかけいたが、一通り話した後、俺のほうに向いて話しかけてきた。

「これから二人に仕事を頼みたい、決して無理はするなよ腹が減ったら戻ってこい」

「オォ!!家の外に出ていいのか?」

「お前さんも太陽の光が恋しいじゃろう」

「外に……地下洞窟から出られるのか?」

「行けばわかるが四方を崖に囲まれた谷底じゃ、地上は地上じゃが外の人間が足を

 踏み入れられる様な場所ではないな、それとリーダーはアオじゃ」

それでも嬉しい。光が射し込んできたとはまさにこの事。

アオを見ると意外や意外、リーダー任命が効いているのか使命感に燃えている。

アオがこちらを向いて少し恥ずかしそうにつぶやいた……

「MASSA……TA……KA?」

「!?」

一瞬で体中の血が逆流する、全身に鳥肌が立つのが分かる。初めて名前を呼んでくれた……クワァァ~なんだこれ!?可愛いすぎる、もう一生ついて行くぜリーダー♡

経験はないが子供を育てるということはこんな感じなのかな。


「で? 何? これ……」

腰のあたりに身長程の長さがある竹竿をくくりつけられる。例えるなら某うどん店のイメージキャラクター状態、いやサーカスの綱渡り?

「落下対策じゃよ、底抜け回避には一番じゃ」

ああ、犬の糞対策ね……でもこれがあることで別の危険が増える気がするのだが……

「臨機応変、杖の代わりにしてもよい、大体探検に棒はつきもんじゃろうが」

正論のような暴論のような……要は上手く使えということね……

「アオ、○×△□※」

コクリと頷き歩き出すアオ、凸凹コンビ初任務開始である。


 わずかな光をたよりにアオが先導してくれる。小さい体ながらも足取りはしっかりしていて頼もしい、時々後ろを振り返りながら俺のペースに合わせてくれている。

アオは基本、よく気が利くいい子なのだ。最初の  が悔やまれる……

時々、小休憩をはさみながら黙々と歩き続けると前方にボヤ~と光るものが見えた。

外? というわけではなさそうで近づいてみると光るキノコ、どうやらこれを目印にしていたらしい。光るキノコと言えば、あの怪しく光る壁のナゾが解明した。

あの壁の正体はヒカリゴケの一種、どうやら光量を増す効果が期待できる栄養剤?の

様なものを発見したらしい。あの怪しい光を浴び続けて大丈夫なのか疑問は残るが

この話はここまで……

 どれ位歩いたのだろう…… 小さい頃はともかくここ数年はインドア人間半引きこもり状態だった訳で、地下に来てからのリハビリ期間を加えるともう小さい子供に

心配されてしまう程のポンコツぶりである。

「MASSA……」

突然アオが前方を指さしながら声をかけてくれる。

光だ! 明らかに光量が違う。地上の、太陽の光だ!!

一歩一歩、歩みを進めるとともに明るさが増していくのがわかるし心なしか空気にも

温かみが感じられる。 それはそこにあって当然であり、その存在自体

まともに考えた事など一度もなかった。

「外だぁ~~」

明らかに明るさも空気の質感も違う。その場にヘナヘナと座り込みひたすら深呼吸。

アオは眩しそうに目をパチパチさせながら周りを見回している。

「アオ !!」

どこからかアオを呼ぶ声が聞こえる、アオの姉、ギンだった。ギンは岩場など気にもせず軽快に近づいてくる。ギンは誇らしげに胸を張りニコニコしているアオをギュッと抱きしめイイコイイコしてあげていた。どうやらここが今日の目的地でありギンが来ているのを知っていたらしい。太陽の光の下で見る二人はまるで陶磁器のお人形さんの様に透き通る白い肌をしていた。ギンは可愛いいから綺麗へと進化している真っ最中、この姉妹を眺めているだけで心が癒やされる。ギンはしばらくアオと話していたが、ボロゾーキン状態の俺のことは完全無視してどこかに行ってしまった。

 アオがとてとてと近づいてきて俺が携帯していた竹製水筒を指さす……貸せということかな?水筒を渡すとアオは走り出しどこかに行ってしまった。

一人取り残された俺はその場で大の字に寝転び改めて外に出たことを再確認する。

確かに外に出てきた……太陽の光がそそぐ地上にだ……。ばあさんに行けば分かると言われたがまさにその通り。谷と言うより岩場の亀裂と言うべき光景、現在地はその亀裂の底、崖上数十メートル上部にはこんもりと木が生い茂っている。川の流れによる浸食ではなく、地殻変動などで地盤そのものが動いて出来た物ではないだろうか。

ごく最近崩れたと思われる崖崩れ後があちこちにありここを登るのは考えたくない。

洞窟内を家とするとここは中庭と呼ぶことにしようか……そんなしょ~もないことを考えているとアオが戻ってきて水筒をつきだしてくる。水を汲んで来てくれたのだ。

「ン……」

「ありがとう」

途中で水を飲みきっていたので唯々有難い。お姉ちゃんに褒められてご機嫌なアオは

リーダーとしての努めも立派に果たしてくれている。二人並んでおやつタイム(謎ダンゴ)、会話こそないがここまで穏やかな雰囲気は初めてかもしれない。

 長めの休憩を取り身支度を済ませるとアオがある方向を指さした。ギンが消えた 方角、どうやら姉達と合流するつもりらしい。水分補給に謎ダンゴ、長めの休憩効果だろうか、若干HP回復している。

 移動途中でアオが立ち止まり近くの茂みを指さした。

「ん? なに?」

只の茂み、何かあるのか訳も分からず無駄にキョロキョロしている俺に業を煮やしたのかわざわざ俺の横まで戻ってきて指さしてくれた。

「ん~~~~あっ!なんだあれ !?」

巧妙にカモフラージュされているが人為的な物が存在していた。昔、サバイバル系の

動画で観たことがある。正確な名称は分からないが確かあれは……ワイヤートラップ

くくり罠というやつだ。古い電線に植物のツルを巻き付け巧妙に設置してある。

あの謎肉はこれで捕っているのか?俺は手錠を掛けられたポーズで少しもがくような

リアクションを取ってみる。

「プッ……」

それを見たアオは プッ と吹き出しケラケラと笑い出したではないか。

どうやらウチのリーダーはリアクション芸がお好みらしい。

 さらに先に進むとギン組が荷作りをしていた。今回の収穫はツル植物である。

このツル植物はなかなか優秀で葉は食用(旨くはない)ツルは加工してロープに、

根はイモの様なふくらみがありこれも食べられる。後で教えてもらったのだが

あの謎ダンゴはこの根っこで作られているとのこと。ほのかな甘みが大変美味しい。

 ギン組はさらに収穫を続け、我らアオ組はこの収穫物を家に持ち帰る事になった。

かさばるが比較的軽いツル部分、そして根っこ部分の荷物は二つ。

アオは迷わず重い方を俺にさしだす。

「いや、俺が根っこ持つよ!!」

ここで漢という生き物のムダプライドが炸裂する。客観的にみればアオの判断が正しい。それでもアオに重い方を持たせるわけにはいかない。

たとえ帰り道がどれ程厳しい道程になろうとも…………

 太陽の光に別れを告げ帰り道につく。案の定、その時はすぐにおとずれた。HP0

電池切れ、カッコ悪すぎである。重さはもちろんだが両手がふさがるとここまで歩きにくくなってしまうとは…………

「ごめんな、アオ……」

シュンとしながら休憩しているオレを見ていたアオがゴソゴソと何かし始めた。

「おおぉ~~~これは…………」

ばあさんが持たせてくれた竹竿にイモをくくりつけてくれた。某配送メーカーのトラックの絵、いや江戸時代の飛脚が担いでいるやつだ。(名称わからん)

「これいいな、いいよアオ!!」

片手があくだけでこれほどかわるとは、バランスの取りやすさが全然違う。

アオもホッとしている、これでやっと帰れるみたいな…………


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