第22話:洞窟攻略 5
■名前:マグノリア ■年齢:100歳 ■性別:女性
■世界線:アルター ■種族:魔族
■ギフト1:魔法剣召喚【地獄の炎を纏った魔法剣ヴォルズガングを召喚できる】
■ギフト2:魔眼・魅了【目があった相手を魅了にかける】
■ギフト3:使役【モンスターを使役することができる】
■レベル56 ■HP6720/6720 ■MP3920/3920
■攻撃:3920 ■防御:2800 ■体力:3920
■速さ:4480 ■賢さ:2800 ■幸運:20
■スキル:上級剣術、上級火魔法、中級風魔法、中級水魔法、気配察知、状態異常半減
数字だけではなくスキルにも目を向けて、マグノリアは大きく目を見開いた。
「……水魔法が、下級から中級に上がっている!」
「おぉっ! おめでとう!」
「これもリンジのおかげです、ありがとうございます!」
「俺はただ肉を喰らっただけだよ。それよりも、そんなに嬉しい事なのか?」
レベルが上がり、スキルも下級から中級に上がった。
それは分かったのだが、それがどれだけ凄い事なのかが麟児にはまだ分からなかった。
「下級と中級の間には効果に大きな差が存在します。下級の最上位魔法でも、中級の最下位魔法とでも同じ事です。それに、水魔法は飲料水としても使用できるのですが、等級が上がると水の質にも関わってくるので、旅をする者にとっては大変ありがたいのですよ」
「へぇ、そうなんだな。生活魔法みたいなものか?」
「生活、魔法?」
「日常生活に使える魔法、みたいなものかな」
「なるほど、生活魔法ですか。……確かにそうかもしれませんね」
微笑みながらそう口にしたマグノリアは、生活魔法という響きをいたく気に入っていた。
「それじゃあ、悪食を使える状況であればドンドン喰らっていくよ」
「分かりました。でしたら、私もできる限り一人でモンスターを倒し、その経験値とリンジが喰らうモンスターの経験値とで強くなりましょう」
決意を言葉にしたマグノリアと共に、麟児はさらに深い階層へと進んでいく。
◆◇◆◇
――二人が十一階層でステータス確認を行っている頃、最下層では。
『グルオオオオォォッ!』
『ビギュルララアアアアァァッ!』
『ブジュルシュルルウウウウゥゥッ!』
麟児がいた時とは様相が一変していた。
モンスター同士で喰らい合うのは変わらないが、その規模が桁違いに大きくなっている。
大型のモンスターだけではなく中型のモンスターまでが大規模な喰らい合いに参加していた。
大量の血が沼を作り、池を作る。そこに積み上がるのは同胞の死体だ。
本来ならば死体となった同胞は喰われるだけなのだが、今回の目的は喰らう事ではない。
この洞窟に巣食うモンスターの主になる、それが目的だった。
『グルオオオオォォッ!』
そして、モンスターの群れの中で一際異彩を放っているモンスターが咆哮をあげると、そちら目掛けて大量のモンスターがなだれ込んでいく。だが――
――ブオンッ!
体を捻り振り抜かれた尻尾による横薙ぎが、地面を削り取りながらモンスターを薙ぎ払っていく。
それだけで絶命するモンスターが大半だったが、中には生き残る個体や尻尾の攻撃を回避した個体もいる。
それらは再び一匹のモンスターに群がっていくが、やはり――
――ゴウッ!
大きく開かれた顎から放たれた灼熱の炎により、一瞬にして炭化してしまった。
モンスターが動いた時の風圧で炭化した体が粉々に砕け散る。
血の池は炎に触れるだけで蒸発して完全に乾き、再びいつもの地面を取り戻していた。
『……グルルルルゥゥ』
低い唸り声を漏らしながら、一匹のモンスターは太い四肢を動かして進んでいく。
向かう先は、麟児が転移させられた行き止まり――ではなく、最下層の最奥部。
洞窟の新たな主になった一匹のモンスターは、まだ若かった。
これから数十年、数百年と洞窟の主であり続けるだろう。それほどに若い主は強かった。
もしも、この若い主が主であり続けられない事が起きるとするならば、それは誰にも予想ができないような存在が現れた時くらいだろう。
『グルララララッ! グルルララアアアアッ!』
もちろん、若い主もそんな存在は現れないと思っていた。
こうして最奥で高笑いの咆哮をあげている今だけは。
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