第16話:魔族の村・バールバーン 4

「……もしベラギントスさんたちが良ければ、俺をここに置いてくれませんか?」

「よろしいのですか? 私たちは人族との対立を望みません。ですので、リンジさんが人族領に戻りたいと言っても、止めたりはしませんよ?」

「今の話を聞いて、戻りたいって言うと思いますか?」

「私たちが嘘をついているという事もありますが?」

「マグノリアさんが俺を信じてくれたように、俺も二人を信じます。理由を聞かれたら答えに困りますけど、二人が嘘を言っているようには見えなかったんで」


 ガルガンダやフレイヤたちに復讐したいという気持ちはいまだにくすぶっているが、それを今すぐ実行したいのかと問われれば、そうではないと麟児は考えた。


「俺にできる事があれば手伝います。そうそう、洞窟で大量のモンスターを仕入れているんですよ! せっかくですし、皆さんで食べませんか?」

「大量の肉ですか? それは興味がありますね」

「あの量をですか……村人総出でも、食べ切れませんね」

「……そ、そんなにあるのですか?」


 あまり顔には出ないマグノリアが若干引いた表情を浮かべたこともあり、ベラギントスも驚きの目を麟児に向ける。


「あれって、相当な量なんですか?」

「私では一生かかっても倒しきれない量だと思います」

「まさか。マグノリアさんって、俺よりも強いですよね?」


 そこまで話をすると、ベラギントスがハッとしたように声をあげた。


「リンジさん! もしよろしければ、ステータスを見せていただけませんか?」

「村長。それはさすがにどうかと思います。リンジ殿も無理に見せる事はありません」


 どうするべきかと迷った麟児だったが、できるだけ多くの情報を得る方が得策だと考えた結果、二人にステータスを開示することにした。


「リンジ殿……」

「俺も知らない事が多過ぎるし、二人を信用した証だと思って欲しいかな」

「……はぁ。分かりました。絶対に他言しないと誓いましょう」

「もちろん、私も誓いますよ」

「分かっていますよ。それじゃあ――ステータス」


 自らのステータスを開いた麟児は、二人にも見えるよう任意で開示する。

 そして、麟児のステータスを見た二人はストックの時以上の驚きを覚えていた。


「……レベル、281?」

「あれ? また1だけ上がったみたいだな」

「……いやいや! リンジさん、その反応はおかしいですから! この強さ、異常ですよ!」

「そうなんですか? でも、俺は巻き込まれて召喚されただけの人間ですし、強いわけがないですよ?」


 麟児と二人の認識に大きな隔たりがあり、三人とも首を傾げてしまう。

 だが、麟児のステータスが明らかに異常な数字を叩き出している事は間違いないのでベラギントスがゆっくりと、落ち着いた口調で説明を始めた。


「い、いいですか、リンジさん? まずは、レベルが異常です。魔族は寿命が長く、私は350年の長い年月を生きてきました。ですが、レベル100越えですら過去を遡っても一人しか見た事がありません。その方ですら、レベル150でした」

「……いやいや、まさかー。その話が本当だったら、俺のレベル281が異常な数字になってしまうじゃないですか」

「「だから言っているんですよ! 異常だと!」」


 笑いながら軽い口調で言ってのけた麟児だったが、二人からは目を見開きながら冗談ではないという気迫がひしひしと伝わって来た。


「あの、リンジ殿。念のために私のステータスも見せておきたいと思います」

「いいんですか?」

「はい。……その、リンジ殿の後に見せるのは、とても恥ずかしいのですが……」


 とても疲れた表情を浮かべながらマグノリアがステータスを開示してくれる。

 その数字を目にした麟児は何度も瞬きを繰り返しながらまじまじと見ていく。


「それと、これは補足ですが……私はバールバーンでも一番の戦士です」

「……え?」

「まあ、リンジ殿と比べればそのような反応にもなるでしょう。何せ私は――レベル45なのですから」

「……これで、一番の戦士?」


 麟児の呟きはマグノリアに対して失礼な発言ではあったが、思わず口から出てしまった。

 ずっと自分は弱いと思っていた麟児からするとあり得ない数字であり、これが一番だと聞かされてもすぐには信じられなかったのだ。


■名前:マグノリア ■年齢:100歳 ■性別:女性

■世界線:アルター ■種族:魔族

■ギフト1:魔法剣召喚【地獄の炎を纏った魔法剣ヴォルズガングを召喚できる】

■ギフト2:魔眼・魅了【目があった相手を魅了にかける】

■ギフト3:使役【モンスターを使役することができる】

■レベル45 ■HP5400/5400 ■MP3150/3150

■攻撃:3150 ■防御:2250 ■体力:3150

■速さ:3600 ■賢さ:2250 ■幸運:20

■スキル:上級剣術、上級火魔法、中級風魔法、下級水魔法、気配察知、状態異常半減


 麟児と比べて能力値は各数値で2000近く離れており、賢さに至っては6000もの差が出てしまっている。

 レベルも200以上の差があり、二人が驚くのも無理はないと納得してしまった。

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