第7話:魔族領ジパング 4

■名前:食野麟児 ■年齢:19歳 ■性別:男性

■世界線:日本 ■種族:人族

■ギフト1:悪食【全ての食材を美味しく食べられる】

■ギフト2:ストック【喰らい尽くした相手のギフトを一度だけ使用可能にする】

■レベル132 ■HP13200/13200 ■MP1320/1320

■攻撃:2640 ■防御:2640 ■体力:2640

■速さ:2640 ■賢さ:3960 ■幸運:100

■スキル:経験値共有、状態異常無効化、上級鑑定、無限収納

■ストック:ラスト・オブ・アース×1、剛腕の一撃×1


「……レベル、132? ……それに、はてなだったギフトも出ているし、スキルも……って、それ以上に能力がおかしなことになっているから!!」


 どこから指摘していいのか分からなくなってしまった麟児は頭を抱えてしまう。

 まず、何故レベルが上がったのかが理解できなかった。


「なんで? 城にいた時は確かにレベル1だったし、こっちに来てからまだ化け物を倒してないし、やった事といえば……まさか、食事か?」


 そう考えた後、俺はスキルの項目に目を向ける。


「経験値共有は最初からあったけど、これの効果か?」


 何気なくスキル名を見ながら呟いていると、最初のウインドウと重なるようにして別のウインドウが浮かび上がった。


「うわっ! ……あれ? これって、スキルの説明か?」


 スキルの説明について知る事ができるなど聞いていなかった麟児は、驚きつつも内容に目を通していく。

 だが、経験値共有は求めていた答えとは違うものだった。


「うーん、これじゃないな。仲間と経験値を分け合えるってだけで、食事で経験値が入るわけじゃないみたい。そうなると、やっぱり悪食の方かな」


 経験値共有の説明が出たように悪食を見つめる。すると、予想通りに説明のウインドウが浮かび上がって来た。


「よし! どれどれ……なるほど……うんうん……やっぱり、これが原因だな」


 ギフト名の下に書かれている説明とは違う効果がそこには記されていた。


「喰らい尽くした相手の経験値を獲得できるが、倒すより半分に減少する。それと、食糧と認識した時点で飢餓感に襲われる。また、一度喰らった相手を完食するまでは飢餓感から逃れられない。……これは恐ろしいのか無駄なのか、とりあえず面倒なギフトだな」


 喰らうだけで経験値を獲得でいるのはありがたいのだが、それに伴う制約が面倒だと麟児は思った。

 何故なら、戦闘の最中に食糧を目にしてしまうとそちらに意識を持っていかれるのではないかと考えたからだ。


「戦いに集中できなくなる可能性があるなら、そこは気をつけないといけないな」


 自分のギフトについて考えを深めたところで、視線を別のところへと向ける。


「スキルが増えているんだよな。状態異常無効化、上級鑑定、無限収納ねぇ。……これ、めっちゃ使えるんじゃないか?」


 説明を見るために一つずつ見つめてみると、それは麟児の予想通りの効果を持っていた。


■状態異常無効化:全ての状態異常を無効化してくれる。

■上級鑑定:神の遺物アーティファクト以外の全てを鑑定することができる。

■無限収納:異空間に生物以外を収納する事が可能。空間内の時間の流れは停止している。


 毒や麻痺といった状態異常は危険だと麟児も理解しており、その脅威を払しょくできるスキルはありがたい。

 そして、上級鑑定と無限収納はアルターという知らない世界で生きていくには非常に便利なスキルといえるだろう。


「……とはいえ、戦闘用スキルはないんだよなぁ。あるとすれば、ギフト2のストックか」


 ギフト名の下の説明を見るに、化け物を喰らい尽くした事でちゃんとしたギフトとして表示されたのだと推測した麟児は、別の説明を確認するために見つめる。


「出たな。えっと……なるほど……だから、この書き方なのか」


 書かれていた内容は――ストックしたギフトは一度のみ使用可能だが、複数喰らい尽くせばその分ストックを増やすことができる――というものだった。


「つまり、大量に化け物を喰らえば、その分ストックも増えていくって事か。戦闘用スキルがない分、ストックで補えって事かね」


 だが、戦えないこともないと麟児は考えた。

 すぐにストックされている二つのギフトに目を向けると、そこには戦闘に適した説明が書かれていたからだ。


■ラスト・オブ・アース×1:大地を砕き地獄に滅する。

■剛腕の一撃×1:【攻撃×溜めた秒数】の一撃を放つ。


「……ラ、ラスト・オブ・アースは恐ろしい効果だが、剛腕の一撃は使えそうだな」


 ラスト・オブ・アースの説明にゾッとしながらも、剛腕の一撃が使えそうで安堵する。

 そして、最後まで目を背けていた項目――レベルと各能力値へ視線を向けた。


「レベル132って、絶対におかしいよな。それとも、アルターでは普通なのか?」


 喰らい尽くすだけで経験値は入るが、それでも半分に減少してしまうので得られる経験値が多いわけではない。

 そう考えると、今のレベルがアルターでの普通なのだろうと思う事にした。


「そうなると、他の勇者たちは俺よりもっと強くなっているんだろうなぁ」


 四人の勇者たちは自らの手で化け物を倒してレベル上げをするだろう。そうなれば自分よりも多くの経験値を獲得して一気にレベルが上がるはず。

 そう考えると、今の能力で先ほどの化け物と戦うのは危険だと判断した。


「脱出が目的だけど、あんな化け物がうろうろしてたらそうもいかないな。しばらくは食べ残しを喰らってレベル上げをするしかないか」


 安全を第一に考えての決断だった。

 その場から立ち上がった麟児は隠れる場所を探そうとしたのだが、すぐに理想的な場所がある事を思い出した。


「……下に戻るか」


 階段を上ってすぐに遭遇したものの、それまでは死体を見つけただけでそれ以外の化け物とは遭遇しなかった。

 幸いにも階段はすぐ後ろにある。絶対ではないと分かっていても、この階層よりは安全だろうと判断したのだ。

 だが、麟児は後に知る事となる。この決断が無意味だったことに。

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