閑話:四人の勇者たち

 麟児の姿が消えた城の一室では、これからの事が話し合われていた。


「さて、それでは勇者諸君。先ほども伝えた通り、まずは人族領であったジパングを取り返してもらいたい」

「その前に、我々は強くならなければならない。そうだろう?」


 宰相の言葉に続いて声を発したのは、またしてもフレイヤだった。


「……その通りでございます、フレイヤ様」

「レベル1ですからね。元の世界線での実力がこちらでも発揮できるか分かりませんし」

「僕は楽しければどちらでも構わないのにゃ!」

「……」

「あなたは何も言わないのね、フォンさん?」


 フレイヤの言葉にレリーは同意を示し、ジャグナリンダはどちらでも良いと楽しそうに笑ったが、相変わらずフォンだけは口を開かない。

 その態度にレリーが声を掛けたのだが、フォンは僅かに言葉を発しただけだった。


「……簡単に終わる方法を、教えて欲しい」

「そうですけ。では、宰相殿。レベル上げはどこで行えば効率が良いのかしら?」


 あまり面白くなかったのか、レリーはあっさりとフォンから視線を外して宰相を見る。


「でしたら、ここから南にある森の中などどうでしょうか。腕試しにはもってこいのモンスターが多く生息しております」

「強いのかしら?」

「いえいえ。あくまでも腕試しのモンスターです。そこで問題がなければ、ジパングに向けて進みながらレベル上げをしても良いかと思います」

「ようは、ジパング奪還のついでにレベル上げをしろと言っているんだな?」


 結局はジパングに向けて進むのかと問いただしたフレイヤだったが、宰相は笑みを浮かべながら大きく頷いた。


「えぇ、その通りです。拝見しましたところ、勇者様方は時間を有意義に使いたいと見ました。であれば、目的地に向かいながらのレベル上げが最良かと」

「……面白い。いいだろう、その案に乗ってやる」

「ありがとうございます。つきましては、荷物持ちをこちらから手配いたしましょう」

「荷物持ちだと?」


 宰相は間髪入れずにそのような提案を口にした。


「見たところ、空間収納のスキルを持っている者がいないようです。レベルが上がれば習得できるかもしれませぬが、ひとまずの荷物持ちは必要かと」

「それが良いですわね。私はか弱いですから」

「僕は荷物なんて必要ないけどにゃ!」

「……」


 その後、フレイヤたちは宰相が選抜した荷物持ちと面会を行い、同行者を決めた。

 そして、話し合いの通りに南の森へと足を進めたのだった。

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