ダニエルのチョコケーキ作り


 ―――水曜日、昼12時。ダニエルはメイと一緒にチョコを溶かしてケーキを作っていた。ダニエルの愛猫で茶色い毛に黒い目のオスのヤヌアーと、白い毛に茶色い目のノウレッジは足を伸ばしてあくびをしている。


 出来上がったチョコレートケーキには、ホワイトチョコで2匹の肉球が描かれていた。「ニャニャニャニャ」と言うノウレッジの背中を、満面の笑みでなでるメイ。アリシアが店内に入って来て、スマホでケーキの写真を撮って抹茶色のソファー席に座った。

 「試食してみてください!」アリシアはダニエルから渡されたケーキを食べ、「ブルーベリーを乗せてみるといいかな?」とヤヌアーの首をなでながら二人に笑みを見せる。



 ブルーベリーを乗せたケーキを店内のショーケースに並べていると「ダニエル、メイ、アリシアさん!『長電話』の交際相手が、チェリーの首にナイフを当てて立てこもってる!」と映画館内の清掃を終えたドーンの大声が聞こえた。

 通りに出ると、寿司店の窓から18歳の男がマグロの握りを食べ終えたチェリーを失神させていた。カフェ内で買った抹茶クッキー2袋をフレッドに渡した亮介が、ビルの2階から出てきた男に近づいてハンマーでナイフを折る音が広場に響いた。

 

 ウィンザー城の衛兵で31歳の男性に取り押さえられて地面に座り込んだ男のジーンズにポアロとベイリーが乗り、顔をなめる。2匹の耳をなでる男の目から、涙があふれ出した。

 衛兵の男性がタオルで顔の涙をぬぐう男の肩に手を置き、「広場で謝罪してこい」と静かな声で言った。


 広場に入り、チェリーに「ごめんなさい‼」と深く頭を下げた男にフレッドが「2歳だったジェイクの足を腫れ上がらせた時、階段から転落させようと思ってた!」と怒鳴り、こらえていた涙を紺色のタオルで拭く。

 「フレッド、ジェイク。ごめん」と二人にも謝り、広場を出ていく男。チェリー

がフレッドの肩に手を置き、抹茶クッキーを渡して一緒に食べ始めた。

 



 謝罪を終え、『長電話』との交際と同居を解消した男は水色の自転車に乗り、イギリス各地の街に行く旅に出た。

 ケルト音楽奏者の娘とハープを一緒に弾き、広場で演奏していると書かれた手紙

を10歳の息子と一緒に読み終えた衛兵の男性は「この女性と相思相愛になるぞ」とダウンコートの上に乗ってきたポアロとベイリーの肉球をなでながら笑みを見せた。


 ―――夕方5時。ダニエルのケーキ屋ではブルーベリーを乗せたチョコケーキが

売れ続けていた。残り5個になったところでフレッドとジェイク、チェリーが店内に入って来て、「かわいい!」と嬉しそうな笑みを見せ札と硬貨をダニエルとメイに渡し帰って行った。

 「ありがとう」ショーケースに残った2個は皿に乗せ、フォークで切って食べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  


 


 


 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




  



 



 


 

 

 

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