亮介の熱唱とファンの歓喜、女性や子どもの行方不明事件


 黒いダウンコートと茶色いズボンに青い冬用ブーツ姿の亮介は広場の階段前に立ち、足踏みをしてからマイクの前に立ち電源を入れる。賢や明人、勇樹たちもいない一人でのライブだ。


 亮介の歌声が通りに響き、ファンが集まって来た。一人一人の顔を見ながら「ライブに参加したい人は?」と聞くと佑樹とレオナルドが手を挙げ、一緒にドラムをたたき熱唱し、英語が多い歌詞を暗記している二人に驚かされた。

 音楽と熱唱の場面が圧巻のアニメの歌を入れた4曲を歌い終え、「ありがとう」とファンに向かって一礼すると、大きな拍手と「フォー!!!」という歓声が上がった。

 佑樹が嬉しそうに笑い、タルトを肩に乗せた亮介を12色の色鉛筆で描いた色紙を渡す。「ありがとう」亮介は色紙をリュックサックにしまい、広場内で缶ジュースを買ってベンチに座り飲んだ。


 


 ―――2時間後。亮介と美月、直美が睦月のバー兼カフェでバターを塗り焼いたジャガイモとトマト、ブロッコリーとキュウリのサラダを食べていると、「広場に黒いテントが置かれているらしい」と睦月が小声で言い、店内でトマトスープを飲んでいた黒い短髪で25歳の日本人男性の肩をポンとたたいた。

 「亮介さん、美月さん。ロンドン警察署の鮎原清一です」二人にアユが描かれた名刺を渡した後、清一は「黒いテントには密猟者が出入りし、広場や校門の周り、大通りをうろついています」と小声で言う。

 「亮介のライブ後、ほおに刺青を入れた40歳くらいの女性に肩をたたかれて冷や汗が出ました」美月が答えると、「密猟者のリーダーだ。女性や子どもを連れ去り、日本人を蹴り倒して重傷を負わせてる」と睦月が言い、清一の深皿にトマトスープを入れながらため息をついた。

 

 

 

 ―――午後3時。ジーニアスとトム、ブライトは広場前で黒いテントを見つけていた。「行方不明になっている女性と子どもたちは、この中にいますね」ジーニアスが小声で言い、トムがテントを開けると目隠しをつけられた7歳から19歳までの女性10人がいた。チェリーの幼なじみで12歳のルーシーや、ドーンの恋人サラの姿もある。

 燈子がテントから出てきた密猟者の男性二人の腰をブーツで強打し、金髪で40代の男性警察官がルーシーとサラ、9歳の女の子を『Police』と描かれた緑色のバンダナを着けた白い馬に乗せロンドン警察署へと向かった。


 「チェリー」「ルーシー⁉」ルーシーは赤いソファーに座り、チェリーに笑みを見せる。「広場前にあった密猟者のテントで、目隠しをつけられていたのよ」通りでの見回りを終えた燈子が、缶ジュースを開けて言った。

 チェリーは「ありがとうございます」と頭を下げてから、ルーシーと一緒にイチゴとミカン入りのフルーツサンドを食べた。


 

 


 

 

 

 

       




       


 

 


 



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