バンダナ店のジェームズとライフジャケット
亮介と美月、直美が『バンダナ店』と書かれた紺色の屋根の店に入ると、オレンジ色の触覚と茶色い目を持つオオスズメバチがあごを鳴らす音が響いた。
「ブルーム、リックマン、ミネルバ。毒針で刺すな」肩までの茶髪に新緑色の目で
182センチのイギリス人男性がオオスズメバチたちに向かって言い、亮介に『バンダナ店店主 ジェームズ』と書かれた緑色の名刺を渡す。
店内にはライフジャケットやビッグベンが黒い糸で描かれたバンダナ、手袋などがハンガーにかけられ、木製の机にはミシンが置かれていた。ジェームズの肩に止まっているオオスズメバチはオスのブルームとリックマン。大柄で毒針も太いメスのミネルバはライフジャケットや手袋が持ち去られないよう、商品棚の中から来店客を見ているらしい。
「川に流される子どもが増え、ライフジャケットが売れている」とジェームズが言い、白いハンガーにかかっている大人用の1着を美月に渡す。ダウンコートを脱ぎ、「持ってて」と亮介に渡してから青いベストの上に着た。
「着やすい」美月が小声で言うと、ジェームズが嬉しそうな笑みを見せ「ジョニーの母、アンが着用し『美月さんがこの店に来たら、譲ってほしいんです』と言われていた」と答えて紙袋に入れ渡した。
3人がバンダナ店を出ると、2台の車が近づいて来ている横断歩道を4歳の男の子が渡ろうとしているのが見えた。
美月は男の子に向かって「止まって」と呼びかけ、点字ブロックの後ろまで下がらせる。紺色のダウンコートを着た11歳の男の子が弟に駆け寄り、「ジェイク!ありがとうございます」と美月に頭を下げた後「え!歌姫⁉」と驚く。
「田原美月です。ジェイクのお兄ちゃん?」「はい!フレッドです‼」フレッドは満面の笑みを浮かべて答え、ジェイクの手を握りながら37歳の母親『長電話』のところへ戻って行った。
―――夕方。「『長電話』の交際相手は18歳で無職の男子大学生で、ジェイクとフレッドの腕や背中を踏み号泣させている」広場内でヒュージが亮介と美月に小声で言い、ジョリーも「ジェイクとフレッドはラジオ局『young flowers』の1階に避難し、クロエやポピーたちに気持ちを聞いてもらいながら過ごしてる。
『3歳と7歳から曲を聴いている美月さんに会えて、嬉しかったです‼』って言ってた」と答えた。
夜10時。弥生と4人の男性警官が「ロンドン警察です。あなたは自宅でフレッドとジェイクが交際相手の男子大学生に背中や腕を踏まれるのを見ていたのに、止めませんでしたね?」と居間にいた『長電話』に言い、手錠をかける。
「あの人と別れるのは嫌だ!」「娘を持つ母として、あなたの行動は見過ごせません!」弥生が怒鳴ると、『長電話』は静かになった。
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