ローズの奮闘とヒュージの激高


 ヒュージはロンドン警察の白浜賢哉、救急隊員の室根陽太と一緒に30代で背中までの茶髪をピンで留めている女性と11歳の息子グリント、9歳の娘カトリーナがいる2階建ての家の門の前に来た。

 茶髪で片腕にビンの刺青を入れ、紫のコートに灰色のズボンを着た40代の男が「母親とは別れない!」と兄妹に怒鳴り号泣させている。

 

 胸元から足まで覆う銀色のドレスを着たローズが、広場での劇でも使う小道具の短剣を男の喉に当て「私は、他者を害する男を憎む」とボイスドラマでも演じている女暗殺者のセリフを暗唱する。

 太い腕でグリントとカトリーナの首を絞めようとする男に向かって「あら。この短剣には、子どもを殴り蹴る人の血がついているのよ?」と小声で笑い始めるローズ。

  腕を振り上げて絶叫しながら金属の板を振り下ろしてきた男の腰を太い流木で強打し、「グリントとカトリーナを避難させて‼」と陽太たちに呼びかける。直後、男が持っていたバールがローズの肩に当たり腫れ上がった。

 

 「ローズ‼」フランクが座り込んだ妻に駆け寄り、肩に包帯を巻く。ヒュージが男の腰と両腕を太い尾でつかみながら絞め上げ、「この家に戻ってくるな‼」と怒鳴って石畳にたたきつける。

 グリントとカトリーナに謝ることなく走って逃げ始めた男を、通りにある太いバラの木に落ちた雷が捕えて感電させた。

 


 暗殺者の衣装から青色のコートに着替えたローズは二人に「We were worried about you(あなたたちのこと、心配していたの)」と言って抱きしめる。

 「There is nothing to be afraid(怖がらなくていい)」と湯気の立つ抹茶をカップに入れて飲み終えたヒュージが言うと、賢哉や陽太もうなずく。二人の母親は失神し地面に倒れている。


 陽太はグリントとカトリーナの肩と足に包帯を巻く。「お母さんに『あの男と別れてよ』って言っても一緒に住み続けてたんです!」と激怒するグリント。賢哉の愛犬ポピーが二人の前に来て、しっぽを回しながら顔をなめた。

 亮介と美月も兄妹に駆け寄り、タオルを渡す。「美月さん。この子たちに、広場で1曲歌って」とローズが小声で言った。


 広場に来た美月は明子から渡されたマイクを持ち、世界にファンがいる某和風アニメの曲を熱唱し始めた。不安そうな顔だったグリントとカトリーナは驚いて美月を見つめている。

 段ボール箱にペンキと筆で絵を描いていた勇樹と、美術教師の男性ブライト・グリーンたちも集まって来た。

 

 美月が歌い終えると大きな拍手が起き、グリントが満面の笑みを浮かべて銀色の三日月が描かれた白いバンダナを渡した。

 「お兄ちゃんが縫ったんです!」とカトリーナ。「ありがとう」美月はバンダナを首に着け、兄妹を抱きしめた。

 


 

 

       


 


   


   


 


 


 



 

 

 

 

 

 






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