サラザールたちの子守りとステッカーの完成
アリゲーターガーのサラザールは泣き出したリズのほおを口で軽くつつき、泣き止むまで待つ。「眠いみたいじゃな」とアオウミガメのフォードが嬉しそうな顔で言い、ローズが毛布をかけるとリズは寝息を立て始めた。
『ロンドン警察署・野菜消費推進課』と書かれた名札を胸元につけたカミツキガメのアントニオが「へっぽこ保育士による園内での事件が多い‼」とブロッコリーとキャベツをかじりながら大声で言い、慌てるフォードに1~5歳までの20人が「へへへ」と笑い声を上げる。
20~40代の父親とその妻たちが、息子や娘の嬉しそうな笑みに驚いた顔でサラザールやローズたちを見ていた。
亮介とエドワードがラジオ局の1階で直美とアレックス、ベラに児童書の読み聞かせをしている。佑樹が「亮介先生は温泉小の体育館で朗読もやってる」とジョニーに言い、本棚から小説を出して水色のソファーに座り、一緒に読み始めた。
―――午後1時。勇樹とペインター5人が完成したステッカーを持ってロンドン警察署に来た。マイクや犬の肉球などの形で、スマホやリュックサックに貼ると『Please Do not leave your children alone‼(子どもを置き去りにしないで‼)』とオスのヨウム・豆腐の声が流れる。
「フレッドとジェイク、パトリックたちの意見も入れました」勇樹が、名刺入れから出したステッカーを机に置く。賢哉と睦月が「ポピーの肉球もある!ありがとう」「ロンドン警察署とカフェ&バーで販売!」と笑みを見せ、ポピーが賢哉の顔をなめた。
「勇樹さん!」人の体についても平気なペンキと色鉛筆12本を出してテムズ川の絵を描いていると、フレッドとジェイクが駆け寄って来た。リュックサックにはオータムの肉球の形のステッカーがついている。
「俺たちも絵を描いていいですか?」と聞くフレッドにペインターたちは満面の笑みを見せ、ペンキまみれになりながら一緒に絵を描き続けた。
「ありがとう!」手を振りながらカフェ&バーに向かう二人を見て「他者を殴り蹴る大人から守ろう」と3歳と0歳の息子を持つ30歳の女性ペインターが小声で言った。
午後4時に勇樹がホテルに戻ると、亮介と美月が「佑樹。アマンダさんから」と言って緑色の便箋を渡してきた。便箋には『島原勇樹さん ステッカー、エリックと一緒に買いました。スマートフォンに貼って、ソフィーや他の子を置き去りにしないよう気をつけながら過ごしています。 アマンダより』とボールペンで書かれていた。
「ソフィーと過ごす時間が増え、ジェームズさんのバンダナ店で手袋やベストを販売してるって」美月が見せてきた写真には水色の手袋を着け、寿司店でマグロの握りを食べるソフィーとアマンダが映っていた。
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