兄妹の捜索とインコ夫婦の呼びかけ

 

 亮介と美月が行方不明の子どもたちの情報を集めようとロンドン警察署に行くと、賢哉が「大通りの家に住む7歳の男の子が、佑樹と一緒に持って来たんだ」と言って手書きのチラシ1枚を机の上に置いた。

 佑樹と一緒に鉛筆で書いた漢字で『亮介さん、歌姫、こんにちは。一緒に暮らしている5歳の弟と1歳の妹が、2022年の11月1日から行方不明になっています。

 一緒に探してください トーマス・サニー、7歳』と書かれていた。

 

 「当日、トーマスが学校の校門に入ろうとしたところで弟と妹がテムズ川のほうに走っていくのを見たらしい」と睦月。チラシの下には『5歳の男の子クルーク、明るい緑のダウンコートに灰色のブーツ』。『1歳の女の子ルーナ、白いダウンコートに手袋、水色のレインブーツ』という文と二人の似顔絵が書かれていた。

 チラシを持ってロンドン警察署を出ると、黒とオレンジ色の丸い目で明るい緑と青の羽を持つワカケホンセイインコのメス、ホンちゃんと夫のカケさんが「クルーク・サニーくんとルーナちゃんの情報がありましたら、ロンドン警察署に電話してください」と呼びかけていた。

 

 

 亮介と美月は大通りに入り、チラシを見ながら兄妹を探す。文房具店の階段の前に明るい緑のダウンコートに灰色のブーツ姿の男の子が白いダウンコートと手袋、水色のレインブーツ姿の女の子と一緒に座っているのが見えた。

 「クルーク、ルーナ」亮介は二人の前に座ると、「こんにちは。田原亮介だ」と笑みを見せる。美月は「ロンドン警察署に、トーマスとお父さんが来てるって」と二人に言い、賢哉と睦月に「文房具店の階段前で、クルークとルーナを発見しました」と電話を入れた。


 40歳の父親と一緒に椅子に座り、湯気の立つ抹茶を飲んでいたトーマスは弟と妹に駆け寄って「校門前で父さんと一緒にチラシ配って、毎日探してた」と言いながら抱きしめ、亮介と美月に向かって「ありがとうございます」と頭を下げた。

 「見つかったんだな」睦月に肩をポンとたたかれ、泣き出すトーマス。「お兄ちゃん、お父さん。ごめんなさい」父親は次男の肩をポンとたたき、「亮介さんと歌姫が、お前とルーナの捜索に参加してくれていた」と言った。

 「ありがとうございます」亮介と美月はクルークに笑みを見せ、ルーナの金髪を

なでた。


 ―――夕方。宿泊しているホテルの1階にあるレストランで魚のフライやチーズと黒コショウを入れて焼いたジャガイモなどを食べていると、勇樹が「印刷店のゴールデンレトリーバーが、亮介と遊びたいらしい」と言った。

 直美が「肉球がかわいいんだよね」とヨーグルトを食べながら笑みを見せ、美月も「丸椅子の前に座って、新聞を買いに来る人になでられてる」と答えて魚のフライを

かじった。

 

 

 

 


 

 

 



 

 

 


 



 

 

 

 

 


 


 

 

 


 

 

 

       


 

 

 

 

 

        

 






 

 

 

 




 

 





 

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