ラジオ局での賢、明人、タルトたちとの通話
ボア・コンストリクターという無毒のヘビで救急隊員のヒュージと警察官のジョリーはジルと一緒に手袋を広場で熱唱する小中学生と高校生たちに渡し終え、緑色のコートを着て紺の冬用ズボンと黒いブーツを履いた3歳男児アレックスの短髪をなでる。
父親の交際相手で30代女性の『赤ワイン』に蹴られて折れたほおの骨をくっつける手術後、外で雪だるまを作り遊ぶことが多くなった。
「おもちゃ店の店長、エンジョイ・メイキングトイにもらった木製のミニ飛行機で家でも遊んでる」とジョリーが言い、歓声を聞きながら破顔した。
美月とジル、ローズが広場で待っていた亮介やジュードたちと一緒に睦月のカフェ&バーに入ると「冷えてきたねえ」と湯気の立つカブのスープとアナゴ寿司を渡された。亮介と美月は店内で待っていた直美に笑みを見せ、寿司を食べ終える。
「おいしかったです」「ありがとう」睦月は満面の笑みで答え、鍋に入ったミネストローネを温めてアレックスと夏に渡した。
「賢哉さん。『赤ワイン』が自宅から姿を消したと、見回り中の燈子さんから連絡が入りました」
弟のオータムより大柄で濃い茶色の体毛を持つチェコスロバキアン・ウルフドッグのウィリアムを連れた22歳の男性警官が、黒いダウンコートを着た賢哉の肩を後ろからたたいて言った。
「ウィリアムやポピーと一緒に、アレックスや他の子たちを彼女から守ろう」賢哉は小声で言い、サンドウィッチを食べ終えて通りの見回りへと向かった。
―――午後6時。「お―――い、チェリーちゃん」ライスとクロエは2年前の11月から行方不明になっている10歳のチェリーを美容院前で見つけ、彼女の前に座り込んで「俺は日本人大学生のライス。ルリコンゴウインコのクロエからは『紺ちゃん』と呼ばれてる」と肩に手を置いて小声で言う。
泣きながら「ママのところに帰りたくない」と言うチェリーに『ローズガーデンでの写生会』と書かれたチラシを渡すと破顔し、ブライトに参加の電話をかけた。
「亮介さん、美月さん。鎌倉のライブハウスにいる賢さんや明人さんたちと2階で話せます!」名札を胸元につけたプラムが亮介と美月、直美と猛雄を『young flowers』の2階に案内した。
『亮介、美月、直美。鎌倉でも全域で停電が起き、鷹野先生たちが飲料水やクッキーなどを小中学生や高校生たちに渡している』と賢が言うと、紺と水色のセキセイインコ・タルトがパソコンの画面に映り「『紫いもタルト』のライブハウスや『子ども食堂 キンモクセイ』の電気もつかない!」と大声で言った。
『タルトはライブハウスで踊ってる』明人がスマートフォンで撮ったタルトの動画を見せて来る。洗面器の中で白い尾羽を振り踊るタルトに、亮介は噴き出した。
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