ロンドンの停電と、飲料水や毛布運び
受付係の女性から渡された段ボール箱から飲料水のペットボトルを出していると、「亮介先生、美月先生」と温泉小の女性カウンセラー、ジル・ブライト・ミールと弟のジュード・フォレスト・ミールに呼ばれた。
「飲料水や毛布を届けに行かせてください」と言うジルとジュードに、「わかった。ジュードは俺と猛雄、レオナルドとフットサル部の男子凛、強一と一緒に広場で飲料水や毛布などを配ってくれるか?」と亮介、「ジル先生は私とリーナ、サラ、ローズさんと学校の前で手袋やパーカーなどを渡して」と美月が言い、ホテルを出て通りへと向かった。
亮介と猛雄が広場のベンチに座っていたアマンダとエリック、ソフィーに飲料水のペットボトル2本と毛布を渡し終えると「亮介さん、猛雄さん!」と印刷屋の次男、ベンが手を振っているのが見えた。
「印刷機が使えないんで、手書きです」亮介と猛雄は『水と毛布配布中』と書かれたチラシとジョニーたちが通う学校の門前に貼り、ブライトと一緒に飲料水のペットボトル4本と毛布4枚を校内の給食室に運んだ。
レオナルドと凛は缶ジュース4本とイチゴとブルーベリー、シャインマスカットのフルーツサンド20個を大通りにいた5歳から12歳までの子どもたちに渡し終えた。
「ありがとう」と言ってフルーツサンドを食べ始めた6歳の男の子の肩をポンとたたいて笑みを見せるレオナルドに「子どもたちと親しいですね」と凛が言うと、「午後6時だ。亮介さんたちのところへ戻るぞ」と答えて広場へと向かった。
「亮介さん。フルーツサンドと缶ジュースを子どもたちに届け終えました」と言って、カップに入った湯気の立つレモネードをを飲むレオナルド。
「ありがとう。ホテルのロビーで、ミネストローネとサンドウィッチが出されてるぞ」と答え、亮介は階段の前で足踏みをしながら美月やジルが戻ってくるのを待つ。
ロビーに入ってソファーに座ると、「凛。俺は1歳から父親の同居相手で当時20代の女性に腕や背中を蹴られ、食事も出されなかった」とレオナルドが言い、時計を着けているほうの腕を凛に見せた。
「5歳の時、女性に蹴られて茶色く変色した」凛は絶句し、未開封の缶ジュースをロビーの床に落とした。
「7歳になってから、授業後に睦月さんのカフェ兼バーで一緒に食事を作りながら過ごすようになった。
トマトとブラックペッパー、チューナ(ツナ)入りのサンドウィッチは俺の好物で、さっき会った子たちにも校内や広場で作ってるんだ」レオナルドはイチゴが4個入ったフルーツサンドをかじり、満面の笑みを見せた。
オータムと2匹のゴールデンレトリーバー、ポアロ(オス)とベイリー(メス)が階段の前で本を読む亮介の足や腹にあごや肉球を乗せ、温めていた。
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