印刷屋のゴールデンレトリーバーと、ダウンコートの肉球
午後2時。茶摘との読書を終えた亮介が印刷屋の前を通ると、ゴールデンレトリーバーの兄妹がしっぽを回しながら茶色いダウンコートの上に乗ってきた。淡い金色の毛をなでていると、2匹の母犬が白と青色のリードをくわえて亮介に渡し、店の前の机に置かれたチラシを通行人に渡し始めた。
2匹と通りを散歩していると、青色のリードを着けたオスが亮介のダウンコートの中に入って寝始める。広場の中に入ると、フレッドとジェイクが「亮介さーん」「こんにちは」と言い駆け寄ってきた。
「どうしたんだ?」「今日、美容院でジェイクと一緒にアジさんに髪を切ってもらった後に『ほおにペンキでインコの羽を描いた18歳から66歳までの男5人が、学校の近くにも黒いテントを置いているらしいよ。気をつけて』と言われました」
「ワカケホンセイインコのホンちゃんが『黒テントが増えてるので、近づかないで
くださいね』と呼びかけてたな」
印刷屋で買った新聞を見ながら言うと、フレッドが「ホンちゃんとカケさんに会うと、噴き出しちゃうんです」とミネストローネを食べながら嬉しそうに答えた。
広場で2匹に向かって青色のボールを投げ、散歩を終えて印刷屋の玄関前でリードを外し、手を振る。
学校から帰宅した16歳の男子高校生が2匹をなで、「亮介さん!散歩が楽しかったみたいです‼」と亮介に向かって大声で言った。
―――午後3時。美月と直美が待つホテルに戻ると、「亮介、ダウンコートに子犬の足跡がついてる」と美月が言った。青いリードのオスが肉球で地面の土を踏んで、ダウンコートの中に入った時についたらしい。
「写真撮って、賢や明人たちにライブハウスで見せる」美月はスマートフォンでダウンコートについた肉球の写真を撮り、濡れたティッシュで拭き取ってハンガーにかけた。
「印刷屋の次男と玄関前で会った。『俺が散歩に行くと、歩かないんです』って
言ってたな。
ジョニーやノーマンたちが通う学校の近くにも、黒いテントが置かれているらしい」「勇樹も惇と一緒に、印刷屋や映画館でチラシの似顔絵を描きながら情報収集してくれてる」美月が言った時、通りや広場の電気が消え始めた。
「亮介、美月、直美!ロンドンの街が真っ暗になった!1階に来てくれ‼」勇樹が
廊下から大声で呼んでいる。
勇樹と一緒に1階に向かうと、猛雄とリーナたち20人が集まっていた。リーナの顔は真っ青になり、サラが肩をポンとたたいて落ち着かせている。
「惇と一緒にチラシを配り終えた後、広場の電気が消え始めたんだ」と勇樹。
ラジオから『young flowersです。ロンドンで停電が起き、印刷機やスマホも使えません。
飲料水や毛布などを、街の人に渡してください‼』とプラムの声が聞こえてきた。
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