ジョニーとジョブズ、アジさんとラジオ
ジョニーは授業後、ローズガーデンに来ていた。母アンの墓にピンク色のバラを置き、「睦月さんのカフェ&バーや校内で、直美やレオナルドさんとたくさん話してるよ」と小声で言ってから黒コショウとチーズ、トマト入りのサンドウィッチを食べ終えた。
午後2時。ローズガーデンから出て帰宅しようと通りに向かうと、雷雨が降り始めた。本屋の前に来たところで石畳に座り込んだジョニーの肩を、青色のダウンコートとベージュのブーツを着たプラムが後ろからポンとたたいて「ジョブズさんから『息子が帰宅していない』って『young flowers』に電話が来て、一緒に探してたの」と言い、一緒にラジオ局前へと向かう。
「ジョニー!」48歳で192センチの父ジョブズが息子を抱きしめ、「ありがとうございます」とプラムに頭を下げた。「本屋の前にある石畳に座り込んでいました。見つけられてほっとしています」と答え、プラムは息を吐いた。
「ごめんなさい」と謝ったジョニーに、ジョブズは「ローズガーデンにいたって聞いた」と静かな声で答えた。
「ありがとう、プラムさん」プラムは「ローズさんやトム局長たちも通りや広場で見回りしてるから、この番号に電話して」と言ってジョニーに『young flowers』の電話番号を書いたメモ用紙と髪や顔を拭く白いタオルを渡し、1階へと入っていった。
「アンが亡くなって2年か。お前に怒鳴り、洗濯機を壊すことが多かった」ジョブズは恥ずかしそうに小声で言い、ジョニーに頭を下げてから妻との出会いを話し始めた。
「俺は母親と交際相手に学費の入った封筒を持っていかれ、学校に行けなかった。通りの清掃や雪下ろし、バスの運転手をしながら22歳で高校に入り、アンと一緒に勉強した。
学校祭ではクッキーやジャム作り、ブレイキンというダンスもやったな。最終日にアンの前でラベンダーの花を渡して付き合い始め、33歳の時に結婚した」ジョブズは息子と抹茶カフェに入り、ハチミツをかけたパンケーキを一緒に食べ笑みを見せた。
―――午後1時。短髪を淡い緑色に染めた日本人男性のアジさんは美容院内で美月の髪を切りながらラジオのニュースを聴いていた。『30代女性『赤ワイン』がバールを持ち不審な黒いテントに入って行ったと、ロンドン警察署の白浜賢哉さんから連絡がありました。テントを見つけても近寄らないでください』
「2日前、『赤ワイン』と30代の男が美容院の前を通り過ぎていったんです。緑色の網や、熱湯の入ったコップを持っていました」とアジさん。
美月は肩までの長さになった髪を見ながら「カフェ&バーで、清一さんたちにもメモを渡しておきます。ありがとうアジさん」と答え、札を渡して亮介と一緒に美容室を出た。
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