歌好きな熱唱明子と、20人の内面変化


 肩まである髪を水色に染めた日本人女性の熱唱明子が、広場にある階段の上で熱唱している。

「Hey! Long hair woman. Come on‼(ちょっと!長い髪のお姉さん。来てくださーい‼)」明子が手を振りながら呼びかけたのは美月だ。驚きながら階段を上がると、肩まである黒髪と緑の目を持つストリートダンサーのサラが笑みを見せた。

 トムが『young flowers』の2階に置いてあったギターを弾き、彼の出身地の音楽『pencarrow』を6人の男性と演奏する。

 


 美月がサラと石畳の上で靴を鳴らしながら二回転すると、トムが2曲目『Come to Good』を演奏し始めた。

 「歌姫のストリートダンス!」「サラー‼」と満面の笑みを浮かべる観客たち。二人が踊り終えると、大きな拍手と歓声が起こった。

 

 汗だくになった美月に、亮介が紙コップに入れたイチゴジュースを渡す。「ありがとう」と言ってジュースを飲み、髪から滴る汗を水色のタオルで拭く。


 

 「私は熱唱明子。よろしく」明子は睦月のカフェ&バーに入って二人に犬の肉球が描かれた名刺を渡し、「広場や大通りの周りに、不審な黒いテントが20個置かれているのよ。親や交際相手が息子や娘に重傷を負わせる事件も多い」とヨーグルトを飲み言う。

 広場から「タバコばかり吸うお母さんとその交際相手なんて、大嫌い‼」「俺は4歳から、父親と交際相手の女性に蹴られ続けてた‼」と12歳から18歳までの男女の絶叫と、白波猛雄が「親といるより、ラジオ局でオータムや大福たちと過ごしたりフットサル部で汗を流したほうが楽しいだろ」と一人一人に言う声が聞こえてきた。

 

 佑樹が「俺は鎌倉での『ビーヘイバー』で、黒柴のようかんとキャスィー先生の愛猫ツユちゃんに気持ちを聞いてもらって前向きになれたんだ。

 小6から再試や追試が増えて父さんに怒鳴られ続け、家にも帰らせてもらえなくて勉強が嫌になってた。

 鎌倉での『ビーヘイバー』後に『追試と再試が続いて、つらい気持ちになってたんです。また参加してもいいですか?』って聞いたら満面の笑みで「うん。40問作っておくね」って言ってた。


 「親や先生に言えなくても、動物に話すとほっとできるかもしれない」20人に笑みを見せた佑樹の肩を猛雄がポンとたたき「広場に、ひざの上に乗るのが好きなメスの黒猫が来るらしい。行ってみるか?」と聞く。「はい」

 「僕たちも行っていいですか?」「うん」佑樹は猛雄たちと一緒に広場に入り、

ベンチの上にいるメスの黒猫を見つけた。

 下から指を出し、においをかいでもらってから頭をなでると佑樹のひざの上に乗ってきた。「俺の好物は黒糖なんだ。『黒糖』って呼んでいい?」黒い足をなでて聞くと、「ニャー」と小声で答えた。


 


 


 

 

 

 

 



 

       


 

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