紅茶店『feel relax』と茶摘との再会


 亮介たちは『feel relax』とベージュのペンキで描かれた緑の屋根の紅茶店に入る。明るく広々とした店内には40種類の茶葉が置かれた机やベージュのカーテン、筆や絵の具、スケッチブックなどが置かれている。窓からは小雨が降っているのが見えた。

 「絵を描く人が多く来るようになり、新設したらしい」亮介が言うと、勇樹が店内で人の体についても無害なペンキや筆を使って絵を描いていた子どもたちに手を振った。


 「茶摘さん」亮介と勇樹がイチゴのスコーンを乗せた皿とフォークを女性客の机に置き終えた40代の日本人男性、茶摘静雄の肩をたたく。

 「亮介、勇樹。元気だったか?」茶摘は二人に満面の笑みを見せ、輪切りのレモンを入れた湯気の立つ紅茶のカップを美月と直美にも渡す。


 「美月さん、直美、はじめまして。『feel relax』店主の茶摘静雄です。『紫いもタルト』のドラマーでしたが25歳でロンドンに移り住み、イギリス各地から茶葉を集めて紅茶店を開いたんです」

 片足に傷があるメンフクロウのライムが、亮介の前に飛んで来た。「小町通りの古本屋にいるムートの弟だ」と茶摘が亮介に言うと、くちばしを開けてあくびをした。 


 店内に置かれたスケッチブックと筆、黄色と緑のペンキを使い、緑色の短髪に青い目のイギリス人男性がバラを描いている。亮介に気づいた男性は「美術教師のブライト・グリーンです」と言って名刺を渡してきた。

 「田原亮介です。バラはよく描くんですか?」「ジョニーたちと一緒に、ローズガーデンで」ブライトは描き終えた黄色いバラを亮介たちに見せる。

 直美が「うわあ」と驚いた時、「紺ちゃん!5歳と3歳の男の子が車内にいるで‼」とルリコンゴウインコのクロエの大声が響き、彼女を肩に乗せたライスが通りへと走って行くのが見えた。



 ライスは通りに停められている紫色の車のドアを開け、気温2度の車内にいた茶髪で青い目の男の子、ボブと金髪で緑の目のパトリックに「おにぎり食えるか?」と日本語で聞き、両手に持った湯気の立つサケ入りのおにぎりを渡す。ボブとパトリックはおにぎりを平らげ、「ありがとう」と言ってライスに笑みを見せた。

 戻ってきた40代の父親に、クロエが「幼い子どもから目ぇ離したらいか―――ん‼」と激怒する声が亮介たちのいる『feel relax』の店内に響いた。


 「ボブとパトリックの父親は銀行で働いており、家にはいない。二人はペンキを使い、フクロウやインコを描く」茶摘が勇樹に湯気の立つレモネードのカップを渡して言うと、「ボブはライムの羽を描くのが好きみたいです」とブライトが小声で答えた。


 

 勇樹は男性ペインター二人と通りで会い、レモネードや寿司など40枚の絵をスケッチブックに描き続けた。



 


 



 


 

 

 

       


 

 

 

 






 

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