アマンダの激高とソフィーの号泣


 「ママ!勇樹さん‼」駆け寄ってきた直美に、二人は「ヘビのヒュージさんに救助されたよ」と笑みを見せる。

 息を吐き出した直美は階段の上に座っているジョニーに気づき、肩をたたいて「こんにちは。私、直美」と声をかける。

 「ジョニー・ピュア。読書と絵を描くことが好き」ジョニーは恥ずかしそうに言いゆで卵とチーズ、ハム入りのサンドウィッチを直美に渡す。

 

 「おいしい」「室根陽太さんが作ってるんだ」ジョニーが言った時、短髪を濃い黄色と明るい緑色に染め首に薄紫のマフラーをかけた30歳の室根陽太がチーズやレタス、ブラックペッパー入りのサンドウィッチ30個を売り始めた。

 「チーズとレタスは売り切れることが多いよ」ジョニーは陽太に札と割引券を渡してサーモンとペッパーのサンドウィッチを買い、階段の上に座ってかじる。

 

 「1日何冊読むの?」「10冊。学校の図書室で読むよ」「私は30冊」「すごいね」直美と好きな本について話しながら笑い声を上げるジョニーを見て、茶髪で30歳の女優ローズとラジオ局『young flowers』の局長で29歳のトムが驚いていた。

 

 


―――午後2時。「Mom.I do not want to live with you anymore‼」(ママ。もう一緒に暮らしたくない‼)

 背中まである金髪に茶色の両目で、黒いダウンコートを着て白のブーツを履いた12歳のソフィーが、号泣しながら通りへと走って行った。

 母アマンダは激高し「Wait‼(待ちなさい!)」と娘に向かって呼びかけたが、彼女の姿はなかった。


「帰ってこないかもしれねえぞ」ベージュのエプロンをつけたカクテル店の男性店主天原睦月が言うと、八ツ橋タカユキも「ソフィーちゃんはストリートダンスで優勝できへんかった時に、ご飯食べさせてもらえなかったから」と通りを見る。



 2週間が経ち、亮介は狼犬のオータムと一緒にソフィーを探すことになった。飼い主のドーンが「俺は勇樹さんと子どもたちが描いたチラシを配り、ロンドン警察の

賢哉さんにも聞いてみます」と言ってレインコートを渡す。亮介とドーンは大通りに入り、ソフィーの捜索を始めた。


 ―――2時間後。オータムがジュース店の階段の下でツユクサの花が描かれた水色の手袋を見つけ、亮介はビニール手袋を着けて拾う。『ソフィー』とペンで名前が書かれていた。

 広場に戻ってソフィーの父エリックに見せると、「娘が学校にいる時、身に着けているものです!」と絶叫し泣き出した。

 ドーンがエリックの肩に手を置き、湯気の立つミネストローネを渡す。亮介がオータムの茶色い短毛をなでると、しっぽを回してひざに前足を乗せた。


 「亮介さん。俺も一緒に、ソフィーちゃんを探します」通りに立っていたのは武蔵野佑樹だった。


 

 




 


           


 


 



 

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