第41話 この世界の真実①
――――音などしない。
――――何一つ動いているものもない。
――――しかし、そんな止った時の中を歩く者達がいた。1人は人間。もう一方は……「神」
「…………神の持つ魔法の影響か?」
ダンジョンの奥を歩くアランが、自分よりもっと前にいる謎の死神セルピナへ言った。
…………少女の見た目をしたその死神は、大鎌をまるで杖のようにして歩きながら、答えるのだった。
「…………うむ。神だけの持つ基本魔法。――「日」。その中の宇宙に存在する全ての惑星の動きを少しの間止める魔法だ」
「…………それのせいで、時間が止まっているって事か」
「うむ。…………ただし、これはそこまで長くは持たぬ。それに、この基本魔法は消費する魔力の量が桁違いでな、これを使うとアタシの実体を保つための魔法が切れてしまう…………」
「…………実体? どういう事だ?」
アランが、セルピナに聞くと突然少女の足が止まった。
「…………」
――――?
アランは、立ち止まって黙り込む少女の姿を心配そうに見つめる。
――――――――少しして、彼女は決心したような顔でアランの方を振り返った。
「…………それも含めてゆっくり説明をしたいところだが……すまぬ。もう、アタシがこうやって存在していられるのも、時間がない。だから、主。…………今からお前に全ての真実を伝える」
「…………え? それってどういう……」
アランが、少女に尋ねようとしたその時、彼の頭の上に少女の掌が優しく触れる。
「…………セルピー?」
「……安心せい。すぐに終わる。…………これがこの世界の真実であり、主をこの世界に連れて来た
刹那、アランの脳内に膨大な量の知らない映像が流れ込んでくる…………。
*
無 。――何も見えない透明とも表現してはならないような空間が、永遠に……無限に広がる。そんな無の世界の中で、ただ一つ存在するものがあった。
――それが、喋り声だった。…………しかし、不思議な事に映像の中でその喋っている人物2人の姿が映される事はなかった。
見えない彼らは話を始めた。
「……ここが138億年前なわけだが…………」
「…………ふむ、ビッグバンが起きると聞いていたが、どれだけ待っていても何も起こらぬではないか…………。仕方あるまい。……おい! 例のものを出せ!」
声を発する者達は、何やら慌てた様子で何かを運んでいるようだった。
――――なんだ? 何が起こるんだ……。
「…………持ってきました!」
「…………よしっ! 盛大にブチかませ!」
声だけを発する見えない彼らは、そう言うと突然誰も喋らなくなった。
――――そして、少ししてアランは恐ろしい光景を目の当たりにする。
「3…2、1!」
突如、声を発し出した見えない誰かのカウントが終わるとともに…………。
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凄まじい爆発が起こった。――――――そして、しばらくするとその凄まじい爆発が終わるとともに、さっきまで何もなかったその空間が一気に闇に染まり、そしてその闇の中から無数の塵が誕生した。
その塵は最初こそ、めちゃくちゃにぶつかっては、くっつきを繰り返していたが、段々その塵の塊たちの動きは一定の法則を成したような整った動きをしだした。そして…………気づくと、その闇の空間の中に大きな青い球体が誕生していたのだった。
――その青い球体を、アランは知っていた。
――――地球……か…………?
彼が、心の中でそんな事を思っていると、また何処からか誰かの声が聞こえてくる。
――――そうだ。主よ。
彼は、その声を知っていた。
――――セル……ピナ?
姿は見えないが、あの美少女死神の声がする。…………一体、今自分に何が起こっているのだろうか…………。アランが、そんな事を思っていると再び何処からかセルピナの声が聞こえてきた。
――――今、主が見ているもの……それはアタシが主の脳の中に直接流し込んだ世界の創生、そしてその後の行方についてだ。…………だからつまり、主の意識は今、眠っておる。
――――どうして、こんなものを!? 君は、俺に一体何を知ってもらおうとしてこんな事を……。
――――主よ。アタシは、お前に救って欲しいのだ。
――――救う? それは一体、どういう…………。
しかし、アランがそれを聞こうとしたその瞬間、突然セルピナの声に焦りが生まれる。
――――すまない! 主よ。とうとう時間停止の魔法が切れてしまったみたいだ! …………あのダスティンとかいう奴がこっちへ来る前に、アタシがお前を必ず、ダンジョンの最奥まで運ぶ。だから、主はそれまでその頭の中に流れる映像を見ていてくれ!
――――あっ! おい、セルピナ? …………おい! セルピナ! セルピナァァァ!! どうして返事をしてくれないんだ! セルピナァァァ!!! …………セルピィィィィィィ!!!!
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