結
第40話 真実へ……
「…………セルピナが、あの時の死神」
アランは、驚いた。
――――まさか、ここに来て出会うとは思っていなかった。
彼は、ボーっと自分の足元を眺めて、これまであった様々な事を思いだしていた。
――――初めてこの世界に来た時は、驚きと喜びで満ちていた。なのに……なのに…………。俺は…………いや、俺がここへ来る事になったのも……こんな所でまた、嫌な思いをする羽目になったのも…………全部…………。
すると、ボーっとしていたアランの元に銃弾が2つ発せられる……!!
「…………危ない! 主よ!」
瞬間、セルピナが少女とは思えない位の物凄いスピードでアランの元へ走って来て、その大鎌で2発の弾丸を真っ二つに切り裂いた。
「!?」
アランが気づいた時には、もう既に弾丸などなく、そこにはふぅ……っと少し疲れ気味にしているセルピナの姿だけがあった。
「…………しっかりしろ! 主よ! お前は、狙われているのだぞ!」
少女が、そんな事を言ってくる。――しかし、アランの心の中には申し訳なさなんていうものはなく、ただそこには少女に対するどうしようもなく抑えられない怒りだけが存在するのだった。
「…………狙われて……いる?」
「…………主?」
「……こうなったのも、こんな所へ連れて来たのも…………全て、全てお前のせいじゃないか!」
「……!?」
「…………君が、俺をこんな意味の分からない世界に連れてきて、そのせいで俺は、ずっと……ずぅぅぅぅぅっと! 騙されて! 嘲笑われ! 見下され! 異世界での夢も何もかも全部叶えられなかった! やっと自分のやりたい事ができて、充実感を覚えて……嬉しかったのに…………アンタのせいだ。アンタが……アンタが、こんなゴミみたいな世界に連れてくるからこうなるんだァ! いきなり出てきて、ふざけんじゃねぇよ!」
アランは、肩で息をしながらセルピナへ自分の怒りをぶつけた。――セルピナは、彼のそんな恐ろしい顔を見て驚いていた。
「…………ある…じ?」
2人が、お互いに悲しそうな顔で見つめあっていると、その時……。
「…………2人とも危ない!」
セリノ声が響くと同時に、2人の方向へ3発の弾丸が襲い掛かる。
「…………!!」
――――しまった……!!
「……間に合わぬ…………!!」
・
・
・
・
「…………イデンティゴ・マグネイト・コレイクティー!!」
――――刹那、セリノの手から魔力の球体が飛び出してきて、その球体から物凄い強さの磁力の波動が発せられる。
――――すると、弾丸だけがセルピナやアランのいる方から急カーブしてセリノの右の掌へ向かって飛んでいく。
「…………チッ」
ダスティンは、その様子を見て納得のいかない表情を浮かべながらセリノの事を睨んだ。
「…………アタシにだって、固有魔法――”コレイクティー”がある事を忘れない事ね」
セリノは、強気な顔でダスティンの事を見つめる。――彼女は、魔法を解除して引き付けられた銃弾を地面に落とし、アランの元へ駆け寄った。
「アラン。…………大丈夫?」
「…………」
「…………気持ちは分かるよ。でも、それが現実だって事も受け入れないと……」
「…………」
アランは、しばらく喋らなかった。
――セリノの言う事は、もっともだ。けど……。
「…………」
アランは、自分の歯を強く噛みしめながら悔しそうに下を向いていた。――それを見たダスティンは、更にいやらしい笑いを浮かべて彼へ言うのだった。
「…………ヘへへっ! 仲間割れかぁ? そりゃそうだよなぁ? せっかく異世界に転生できたと思ったら、こんなに散々な目にあうんだからよぉ~。…………あぁ~そういえばよぉ、アラン。お前にもう1つ言っておく事があったんだった」
――――ダスティンの顔が更にドス黒く染まっていく。
「…………お前が俺と出会ってから数日後、実はクリスから連絡があってな。奴の研究室にあるこの辺一帯の魔力を検出している探知機から今まで見た事のない謎の魔力が検出されたらしいんだよ」
「……!?」
――――セルピナが、物凄い勢いでダスティンの顔を鋭く、焦っている表情で見つめる。
「…………最初は、クリスもなんの魔法だったのか分からなくてな。すぐにその場所まで調査に向かったらしいんだが、何処か分かるか……」
「…………!」
――――何かを察したアランも焦りの混じった表情でダスティンを見つめる。
「…………そう。ここさ。…………ここの最奥で、今まで見た事のない魔力が検出されたのさ」
その瞬間、アランの脳内に”何もない暗い空間”の姿が映し出される。
――――まさか……それって、まさか…………。
「…………調査の結果、クリスはある事を俺に言った。この魔法は、人の成しえる技じゃない」
――やめろ。今そんなの聞きたくない…………。
「…………そう、つまりどういう事か分かるよな? これは、つまり……」
――――え? …………。
アランは、自分の目を疑った。今目の前に見えるその光景を、彼は何が起きているのか全く理解する事ができなかった。
――――どうして、音がないんだ? どうして、ダスティンは続きを言わないんだ? どうして…………。
彼が、この状況を理解したのはそれから少し経ってからの事だった。
「…………まさか、俺以外の時が止まっているのか!?」
「…………その通り。まぁ、正確にはアタシ達以外の……というわけだが」
彼の後ろから少女の声が聞こえてくる。
「…………セル……ピー?」
「…………本当は、この手は使いたくなかったが、もう時間がない。仕方あるまい。…………着いて来てくれ主よ」
セルピナは、そう言うとアランの手を引っ張ってダンジョンの最奥へと連れて行こうとする。
――しかし、アランは足にグッと力を込めて止まった。
「…………どうして、俺を奥に連れて行こうとする?」
――セルピナは、彼の方を振り返らずに言った。
「…………この世界の真実を知ってもらうためだ」
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